視覚障害者向けキックボクシング体験会を開催しました
2023年8月24日に、視覚障害者向けキックボクシング体験会を開催しました。
運動機会が少ない視覚障害者
視覚障害者は運動する機会が少ないとよく聞きます。
通常は1人で走るランニングも、視覚障害者の場合「伴走者」が必要です。
短いロープを2人で持ち、伴走者と一緒に走ります。
視覚障害者が一般ランナーならまだよいのですが、早いランナーになると、同じペースで走れる伴走者がなかなかいないそうです。
身体を動かすってほんと大事なので、わくい犬は「なにか視覚障害スタッフができる運動はないかしら」とずっと考えていました。
視覚障害者にキックボクシングは可能か?
キックボクシングは、普通に考えたら難しいです。
動きが激しく、片足でバランスをとらなければいけないことも多いです。
通常のレッスンでは、秒で移動してワークアウトをこなしていくため、インストラクターも参加者も、他人をアテンドをする余裕がありません。
でも、サンドバッグやボクシンググローブは、なかなか日常生活にあるものではないし、イライラしたときにサンドバッグをボカスカできる爽快感はなかなか他では得がたい。
そこで「視覚障害者向けのキックボクシング体験会」ができないか、フィットネス&キックボクシングジムK2Rオーナーの山中幸二郎さんに聞いてみました。元バンタム級チャンピオンで、理学療法士の資格をお持ちのかたです。
すると「やりましょう!」と即答いただきました。
イベントを持ちかけたとき、「障害者対応に自信がない」という理由でお断りされることがあるのですが、とても心強かったです。ありがとうございます!
参加者は6名、どれくらいサポートが必要なのか分からなかったので、まずは対応できそうな人数としました。
わくい犬のお友だち2名がボランティアで参加、ジムからは山中さんとハヤトさんというインストラクター2名が対応してくださいました。
できるだけ配慮を考えた体験会の内容
当日は、ジム内を歩き回ることを想定して、まずは室内の大きさを確認してもらうことから始めました。
全員で壁を伝って歩き、どこに何があるのかを実際に触ってもらいました。
ジムの全体像を確認したら、レッスンスタートです。
レッスンの内容は、プロ中のプロである山中さんが構成してくださいました。
まずはストレッチでケガを予防。
そしてシャドウボクシングでパンチやキックのやりかたを教わりました。
ポージングはすべて口頭で教えてくれるうえ、やっている最中もめちゃくちゃ褒めてくれます。
その後は3チームに分かれて、エアロバイクを漕ぐチーム、サンドバッグを打つチーム、TRXという器具を使った筋トレのチームに分かれてワークアウト。
最後は、全員で音楽に合わせてボクササイズをしました。
パンチを打つ動作をしたり、キックをしたり、ノリのいいビートに合わせて身体を動かすワークです。
山中さんが振りをつけたもので、難しい動作のない、誰にでもできるバージョンだとか。
それから最後に、山中さんに懇願して、実際にサンドバッグを打ったり叩いたり、チャンピオンの技を見せてもらいました。
格闘技はやっぱり、ナマで見るとその迫力に圧倒されるんですよね。しかもチャンピオンですよ?
見えない方々にどう説明したらいいのか、ずっと悩んでいたのですが、もうとにかく風を感じてくれ! と開き直ることに。
でも実際自分でサンドバッグを触ったあとなので、迫力は充分伝わったのではないかと思います。
ちなみに山中さんのサンドバッグを効果音だけでいうと、
ドガシャン、ドカン、パパパン、という感じ。
サンドバッグを吊しているチェーンまでチャリチャリ鳴ります。これは60kgあるサンドバッグが跳ね上がるほどのパワーだということです。
わくい犬が精一杯蹴っても「パン」くらいの音しか出ません。
相手の胸のあたりを狙うミドルキックを素振りしてもらったのですが、バヒュって音がしました。
足を振り上げて風の音がするとか、人間業じゃないですね!
1時間の体験を終え、みんなケガもなく着替えて帰っていって、ようやく一安心です。
わくい犬はとにかくずっとプレッシャーでテンパってまして、撮ろうと思っていた動画もすっかり忘れてました。痛恨。
参加者の感想
障害者対応のイベントは双方にとって貴重な体験
イベントのコラボをどこかの団体や企業に持ちかけたとき、「障害者対応がわからないからやらない」といわれることがあります。
とても残念です。
でもほんとに多い。
「わからないからやらない」では、いつまで経ってもできるようになりません。
100%の対応なんか最初からできるわけがないんです。
今回も、終わってみればさまざまな反省点があります。
でも当事者のかたたちの多くは、一般人全員に知識があるわけではないことをよくわかっていると思います。
視覚障害者をアテンドする方法も、意外と知られていません。
何が必要な情報で、どうしたら伝わるのか、意外と伝えることはミニマムでOKです。
アテンドの方法は、ユニバーサルマナー検定や伴走者の講習などで習うことができます。
だけどなんのきっかけもないうちからこのような講座を受講する人はかなり稀でしょう。
バリアフリーだったりインクルーシブだったりするイベントを通して、「知る」きっかけを作れたらと思っています。
日本は、健常者と障害者を分けて考える風潮がありますが、障害はゼロか100かでは分けられません。
いくら今健康でも、明日障害を得るかもしれません。
誰もが暮らしやすい社会を作ることは、自分のためでもあります。
また社会的な経験値は、職業選択の自由度に直結します。
私たちはこれからも、より多くのひとが、より多くの選択肢を持てるよう、さまざまな活動を行っていきます。
ご協力いただいたK2Rのみなさま、ヘルプに来てくれたわくい犬のお友だち、本当にありがとうございました!
『伴走者』は、ブラインドライターズが当事者監修を行いました。
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