コラム2 『10ヶ月ぐらい座席を譲ってもらったっていいじゃないか』

 外出が増えると、電車やバスを利用するシーンが多くなった。妻が妊娠するまでは、少し乗るだけなら立ったままでいいかと思うことが多かったのだが、例え5分程度であっても座席に座れることがありがたいと思うようになった。正確には妻を座らせたいと思うようになった。
ただ、なかなか難しいのが車内で空いている座席を探すこと。ガラガラならまだしも、少し離れたところに一席だけ空いているなんていう時には大変もどかしい。
そんな時に救われたのが空いている座席を教えてもらったり、譲ってもらえたことだ。これまでは申し訳ないという気持ちの方が大きかったが、素直にありがたいと思うようになった。
 その日も我々が混雑したバスに乗っていると、一人の子供が座席を譲ってくれた。一瞬考えた後、座らせてもらうことにした。
その頃には妻のお腹も少し大きくなり、見た目にもそれがわかるようになっていたからかもしれない。一緒にいる僕ですらとてもありがたかったのだ。きっと妻も同じように感じていたと思う。
後に妻と二人で考えた。10ヶ月ぐらい毎回座席を譲ってもらったっていいじゃないかと。
長い人生、ありがたく素直に甘える時期があってもいい。月並みな言葉だが感謝を忘れなければ。
その分他に自分たちにできることを考えるのもいい。そうしたことが自分の中で本当に腑に落ちた出来事だった。
 妻とセットで僕まで座席を譲ってもらうのは相変わらず申し訳ない気はするが、これまでたまたま同じ電車やバスに乗り合わせて出会った皆さんへ、改めてここで感謝を伝えたい。

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