初めてのひなちゃんの離乳食は

 ひなちゃんの離乳食は、僕がいない時に始まっていた。というのもここ最近僕が出張で家を空けることが多く、離乳食開始のタイミングに僕が立ち会えなかったといった方が正しい。
ここからは電話で聞いたことだが、初めての離乳食はおかゆだった。口にして一瞬「ん?」という表情をした後、なんだこの美味しいものは!と言わんばかりにバクバク食べたそうだ。
食べさせるママの手にかぶりつこうとするほど、ひなちゃんにとっておかゆは大好物になった。
その後は野菜やらカボチャやらサカナやら、全てペースト状にしたものを順番に食べさせた。特にカボチャはひなちゃんの中でヒットだったらしく、手にかぶりつくどころかお椀に顔から突っ込んでいく勢いだった。
と、ここまでが電話で聞いていた話。そんなことばかり聞いていたので、帰ってひなちゃんに離乳食を食べさせるのをこの上なく楽しみにしていた。
 今回離乳食の準備はすべてママに頼りっきりになった。ひなちゃんが使う食器から離乳食の調理、保存に至るまで一つ一つ聞くところから始まった。僕が全く知らない作業の工程を聞きながら、この五日ほどの間にひなちゃんはまた一つ大きく成長したんだなと少し寂しい気持ちになった。
しかしひなちゃんの食欲はそんな気持ちを見事に吹き飛ばしてくれた。まず前掛けをした時点でこれから食事が始まることを察知し、「おーおー」と興奮気味に騒ぎ出す。
我々の場合、椅子に座らせたひなちゃんに向かい合わせで食事を与えることは難しいため、膝の上にだっこして自分が食事をするのと同じ向きで与える。
左手でひなちゃんの口元を確認し、そこへ右手で食事を救ったスプーンを近づけていく。そうするとひなちゃんは早く食べたい余りに、僕の左手をまず食べようとする。
「これじゃないよ」
と言いながらスプーンを近づけると、ようやくそちらにかぶりつく。
与える前は、うまくスプーンをひなちゃんの口に入れられるだろうかと思っていたが、食欲旺盛なひなちゃんの口が自ら迎えに来てくれるのでその心配は無用だった。
そしてお椀に顔を突っ込む勢いというのも本当だった。文字通り自分で反動をつけてお椀に顔から突っ込んでくる。勢いがありすぎて、その拍子にスプーンが誤ってひなちゃんの目に入らないかと心配になるぐらいだ。
そんなこんなで僕が与えた初めての離乳食もあっという間に完食した。お椀とスプーンが片づけられると、まだ足りないとばかりにわーわー泣き出した。それぐらい美味しかったのだろう。
 食べるために生きている我々の子供だ。案の定食べることが大好きな子になった。そしてこれから先、たくさんの美味しいものを一緒に食べることがますます楽しみになった。きっとママもそう思っているに違いない。

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