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キスする距離でメイクをしたら

友人にメイクをすることになった志賀。
え、友人の性別?もちろん男性ですが。
ジェンダーレス男子とかそういう言葉の話は置いておき、放置するとして、珍しいメイク会が始まりました。

※はーい、先に言っておきます。ここから多少風変わりで普通なら恥ずかしがる内容・言葉が綴られていきます。

カラオケの一室。そこそこ狭い部屋で、ソファに横並びで座り、志賀はバックから大きく膨らんだ四つのポーチを取り出す。そこには山ほどのコスメ。リップ、アイライナー、アイシャドウ、コンシーラー、ファンデーション、グリッター、チークなどなど。

【志賀と友人さんの会話】
※記憶に頼っているので、多少の違いはあるかも。これを読んだ友人さん、間違ってたらごめんね。でも、ニュアンスは間違ってない気がする。

「他人にメイクするのって、舞台(志賀は演劇部なので、舞台時にメイクをする)以外では初めてです」
「あー、そうなんだ!」
「他人にメイクってなかなかないですからね。タッチアップしてもらうとかなら、まああるかもしれませんけど」
「タッチアップ?」

タッチアップとはデパートとかの化粧品売り場で販売員さんにお試しでメイクをしてもらえる対応のこと。

「ああ、分かった!やってもらったことある!」
「あ、あります?」
「あれ、すごくえっちじゃない?笑 キスするしかないだろっていう距離感でメイクしてもらうもんね」

最上級の音量で、但し心の中で突っ込んだ。
その距離で、キスするしかないだろっていう距離間で、今から私があなたにメイクするんだが!?
キスなんかしないけどな!?(無論である。当たり前。友人さんは恋人持ちなのだ。恋人さんのことを話す顔はいつもよりちょっとにやけていて、微笑ましくて、結構分かりやすい。多分自覚はないと思う。ああ、この人、本当に彼女のこと好きだなあと思いながら、志賀は心の中でにやにやしている。)

そんな馬鹿なツッコミを頭の中で叫びつつ、からの本番。
ちょっと緊張しながらアイラインを引き、シャドウを重ねていく。
普段自分のために使っているパレットから、薄い色、濃い色、明度を意識して何色かを塗り重ねていく。筆で瞼に乗せて、時には手でなじませる。ラメはやや控えめに。でも、出来るだけ綺麗に見えるように。緊張しながら、意識しながら、メイクをしていく。
近くで見ると本当に顔が整っているのがわかる。まつげが長い。うらやましい。鼻筋もすっと通っているし、言わずもがなの二重だし。常々イケメンだな、この人。
なんかむかついてきた。志賀に顔面偏差値寄こせ、マジ。

アイシャドウを塗り終わり、瞳を開けてもらう。二人で鏡を見て確認し、最後にマスカラ。
マスカラの色は赤。正確にいうとマジョリカマジョルカのカシスバーガンディー。志賀のお気に入りコスメで、常用コスメでもある。
優秀なそれは華やかな彼の目元にも違和感なく、きちんと映える。
リップは友人さんの希望で少し強めの色を塗ってみたけれど、どうにもなじまなくて、結局色付きのリップクリームで控えめに。ちょっとへこむ。能力不足を感じたから、次メイクさせてもらう時には友人さんが選んだリップを迷いなくつけてもらえるようにしたい。

とはいえ、自画自賛だけれども、彼の完成形は完璧だった。いや、志賀のメイクももちろんいいし、元がいいから強い。似合う。目元が煌めいて(物理的にも)魅力倍増!!って感じだ。マジで顔面偏差値を全振りして志賀に献上してほしい。イケメン。本当に顔が良い。

画質がいい友人さんのスマホを借りて、何枚も彼の写真を撮っていく。写真映りもいい。何、本当に強者じゃない?前世でどれだけ善行積んだんだよ…。
かっこいいなあとしみじみ思う。でも、今日はそのかっこよさの一部を自分が作ったのだ。そう思ったら、なんだかどうにも誇り高い。滅茶苦茶好きだなって思う。いや、本当に顔がいい。

「キスするしかないだろ」っていう言葉に同意するつもりはないし、「しませんが?」としかいうつもりもないが。でも、キスするくらい近い距離で顔を見ていて気付いたことはあった。
それは、私の友人さんの顔がいいってことで、魅力があちこちにあるってことだ。メイクをすることで元々の良さがさらに際立っているなと思う。甘くておいしいパンケーキにアイスとかフルーツとかいろんなものを山盛りにして、そんな豪華なおやつを食べちゃうのと似ている。贅沢だ。これは正に贅沢。贅沢な時間を過ごさせてもらって感謝しかない。もしまた機会があって、出来るならその贅沢さをたっぷり楽しんでいたいなと思う。

キスするしかないだろって距離でメイクをしたら、友人さんの魅力が今以上に分かった件について。
これにて今回のnoteはおしまい。

メイクを楽しむ世界中の人々に、最高にかっこよくて、かわいい世界中の人々に祝福あれ。

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