見出し画像

都会に生きる私達はなりたい自分を諦めない。

バイト終わりの午後四時半。
前日の飲みで(そう、前日も何気に飲んでいる笑)約束していた通りに、待ち合わせて、私達はスタバに向かった。
便利で、美味しいものが確実に食べられる、そのくらいフランクな場所。でも、地元の時は少し縁遠いものだった場所。

目の前に座っているバイトの後輩。
あだなは「イケメン」。名づけは私じゃない。私達の尊敬する店長がそう呼んでいる。そのあだな通り、確かに顔がいい。
美容学校に通う彼は自分の手で髪のセットをしていて、それもすごく似合っている人だ。が、今日は一度したセットが失敗したらしく、結局シャワーを浴びて、セットしないまま来たらしい笑笑
まあ、それでも普通にかっこいいけれど。

前から一緒にお茶でもしようと言っていて。
彼の学校の話、ヘアスタイルの話、いろんな写真を見せてもらいながら、2時間半ほど話し込んでいた。

彼は中学生の時から今勉強しているようなヘアアレンジをするのが好きだったらしい。でも、彼の周りの反応はあまりいいものではなかった。何か「特別」なもののように彼を見ていたという。
彼にとってはそれが「普通」であったのに、それはまるで何か「変」なこととして扱われていた。

「俺が髪をちゃんとセットして出かけてるのを見て周りの人に『色気づいてる』って言われることがあったんです」と彼がそう話してくれた時、「私も!」と思わず共感して大きな声が出た。

私もそうだった。
自分の好きな色の口紅を塗った時、メイクをした時、親に言われた「色気づいて」という言葉を私は絶対に忘れない。
まるでそれが気持ちの悪い、『普通』ではない、美しくないことのように、からかうように笑われたことがすごく悔しくて、苦しかった。

私は自分のためにメイクをしたかったし、好きな服を着たかった。
それだけだったのに。
そうはさせてくれなかった。
させてくれないから、私自身が自分の力でそういうものをなんとか形にしたのに、それなのに、それも笑われた。
それが本当にきつかった。

全く同じじゃないって分かってるけど、彼が同じ経験を持っている事を知って、私は目の前が煌めいた気がした。
何か光が見えた気がした。
1人じゃないと暗闇の中でランタンの明かりで照らされたように感じた。

彼は都会の一等地にある学校に通っている。
その土地を聞けば、もう間違いなく『都会』だと分かる場所。
「都会」を選んで、学校を決めたんです、と彼は語った。
私もそう。なんとしてでも、田舎を、自分の実家を出てやりたくて、進学を決めた。
「都会」の大学。今の学び舎へと。

その結果、私達は確かにここで出会った。
「都会」に惹かれた私達は、その価値を確かに今携えている。
そして、共感出来る、共鳴する相手を、ちゃんと見つけた。

僕等は都会の片隅で、今日も自分のしたい髪をして、好きな服を着て、好きな靴を履いて、ここにいる。
なりたい自分を諦めないで、今日もここに立っている。

どうか、どこにいたとしても、誰もがなりたい自分を諦めなくていい、そんな世界になってほしい。

今日もなりたい自分を諦めない、都会を生きる私達に祝福あれ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?