超短編-「お祭り。」

昨日の夕方、公民館のそばを歩いていたら、祭り太鼓の練習をしている音が、漏れ聞こえてきました。

太鼓を叩けたら気持ち良いだろうなと考え、ゲームセンターのあれを、達人少年達に見守られながらプレーする勇気は、オレにはないなと苦笑い。

一昔前の夏祭の夜に、見た景色をアップいたします。


お祭り    作・よーかん


誘うとかそういう字だったと思う

誘虫灯とかそんな名前だったはずだ

「ライトセイバーみたいやな」

なんとかレンジャーのお面をかぶった少年が
パチパチとはじける青いアレを見上げている

「それを言うならビームサーベルだろ」

タバコに火を灯しながらそう言った男は
短パンにサンダル履いてT−シャツを着ている

サラリーマンだとわかるのはなぜだろう

「ライトセイバー、ライトセイバー。
 スターウォーズのあれやてケイニイちゃん。」

短パンのサラリーマンはケイ兄ちゃんというらしい。

ケイスケ。ケイジ。
ケイタロウ。ケイゴ。

どれもなんだかあわない気がする。

「そうか、スターウォーズか。」

関西からきた甥っ子とかだろう

ケイニイちゃんはまだ結婚していない

ケイニイちゃんと呼びなさいと
少年は母親にきっと言われたんだ

ケイオジサンとケイニイちゃん、

ケイスケケイゴケイタロウ

ケイニイちゃんがフーと煙をはく

煙は青い光をなでて
パチパチと焼ける虫と共にどこかに消えてった

「そろそろいくぞ」

短パンをはいたサラリーマンのケイニイちゃんが
タバコをサンダルでもみ消した

ケイニイちゃんが
ボクの視線に気づいて咳払いをする

少年はまだライトセイバーが気になるようだ

パチパチと虫が焼かれる
パチパチと白く光っている

遠くで祭り囃子の音色がヒラヒラと舞う

あの少年のお面はたぶん
今やっているなんとかレンジャーの
その前のなんとかレンジャーのお面だ

たぶんだけれど

きっとそうだ



自由詩 お祭り Copyright よーかん 2006-08-05 20:28:56 2009-05-03 加筆

ありがとうございます