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試合を「記録」し、チームを支える

チーム一体となって自分も一緒に試合を作り上げているのがたまらない。

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普段は全国を走るトラックドライバーとして活躍する傍ら、ブラウブリッツ秋田の公式記録員を務める小室勇一さん。
小学5年生まではバスケットボーラーだったが、仁井田小学校サッカースポーツ少年団(現仁井田レッドスターズ)が創設された6年生に1期生としてサッカーを始め、社会人では30代までプレーを続けていた。
もともとサッカーは「見る」よりも「する」派。ブラウブリッツ秋田に関しても、記録員になるまではテレビがやっていれば見る程度だった。
元チームメイトで、現在も共に記録員として活動をする友人の鈴木康弘さんに「一緒にブラウブリッツ秋田の記録員として試合運営に関わらないか?」と声をかけられ、3年前から記録員としての活動を始めた。

記録員とはどう試合に関わっているのか。役割や、やりがいに迫ってみた。

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記録員の仕事は多岐にわたる。メンバー表の作成、プレーデータの登録、公式記録の作成。
その中でも小室さんが携わるのは、1人1人の選手が行ったプレーのパソコンでの入力。シュートやファール、セットプレーなど、プレーを一つ一つ入力し、それが、Jリーグの競技データ「J STATS」へと反映される。「自分以外にもインカムで第4審判付きやマッチコミッショナー付き、運営担当とやり取りをして判定を決める人や、ゴールの過程を用紙に筆記する人などがいます。速さと正確さが求められる作業なので、秋田一体じゃないですけど、記録員も4名体制のチームで作業にあたっています」と、ここで「秋田一体」のワードが飛び出した。

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「記録員としての活動は常にプレッシャーを抱えながらの活動ですね」。
小室さんがパソコンで入力したデータはすぐさまJリーグに届き、それが全国のサッカーファンの手にリアルタイムで届く。特にゴールやアシストなどは選手の評価が決まる数字として大きな項目だ。「記録の作業は速さと正確さを求められます。特にゴールはスタジアムが盛り上がる瞬間ですので、絶対にミスは許されないというプレッシャーがあります」。また、笛が鳴ったらプレーは途切れるが、記録を付けるのはあくまでボールを蹴った瞬間。試合中はピッチとモニターの両方から目が離せず、一瞬たりとも気を抜けない状況が続く。

記録員を務めるようになってから、小室さんのサッカーに対する姿勢は大きく変わった。
試合がある日は平日であっても仕事を休んでホームゲームへ。J2の試合は全試合を必ずDAZNで確認し、選手名やポジション、試合中のプレイエリアなどを欠かさずチェックしているという。
「中には名前の読みが難しい選手も多いんですが、知っておくことで当日落ち着いて作業に当たれるんですよ」と、試合までの事前準備も欠かすことはない。
「警告1つとってもそれがラフプレーなのか、反スポーツ的行為なのかを知っていないと判断ができない。さらに既存のルールだけでなく、新しいルールもきちんと理解することがとても重要なんです。今シーズンからは脳震盪による交代がルールに追加されましたが、新たなルールだからとミスはできません。常にルールは把握しています」と、選手やチームだけでなく、ルールを把握することも重要な準備だと語る。

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ただ、プレッシャーだけでなく、楽しみややりがいも多いと笑顔で語る。
「例えば、今シーズンはサッカー好きならたまらない名前が相手チームにいます。名波浩監督とか、遠藤保仁選手とか。試合前にはメンバー表を作りながらワクワクしています」。試合に関しても「京都戦は初めてJ2の試合を生で見ることができて、レベルの高さにすごく衝撃を受けた」と、J2に上がったことで更に記録員としての楽しみが増えているようだ。なかでもブラウブリッツ秋田がゴール奪った時はこの上ない喜びだという。「立場上大きく喜んだりはできないけど、ゴールが決まったときはよっしゃーと小さく喜んでいます。ただ、すぐに得点者などを記録しないといけないので、あまり余韻には浸れないんですがね(笑)」。

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今までで一番印象に残っている試合は、新型コロナウイルス感染症の蔓延でリモートマッチ(無観客試合)となった2020シーズンのホーム開幕戦。今まではスタジアムにお客さんがいて太鼓やチャント、手拍子が聞こえるのが当然だった。記録員としての業務は普段と変わらないながらも、そこに観客席に誰もいない光景はとても衝撃的で、今も強く記憶に残っているという。

記録員は常に人手不足だ。そこで、クラブにぜひやってほしいことがあるという。「前山恭平クラブコミュニケーターに記録員を経験してもらい、体験記を書いてもらいたいんです」。試合の記録をする人がいることは知られていても、誰がやっているのか、どんなことを行っているのかはあまり知られていない。そこを前山CCに体験してもらって興味を持ってくれる人が増えてほしいという。
記録員は、サッカーを観るのが好きなこと、チームでの作業が好きなこと、サッカーのルールを知っていることの3つを満たしていれば、性別や年齢など関係なくなることができる。「公式記録員は表に出るのは記録やデータですが、Jリーグ、試合を支えてる大切な仕事だと思います。共に記録員としてチームの勝利や優勝、昇格などの歓喜の瞬間に立ち合ってみませんか。」
Jリーグの公式記録をとるという重大な役割を、興味があればぜひ一度体験してみてほしい。(文:小林/広報・集客企画部)

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