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教育社会学 note① 0716

 今日から教育社会学を学んでいく。
この授業は通信教育の単位の一つで、最終的には指定のテーマでリポートを作成することがゴールになる。

〈テーマ〉
学歴社会とは何かを明らかにし、高学歴化が進行するとどのように変化するのかについて、学力の視点から述べよ。 


0 今日の学習課題

学歴はその人のもつ能力のうち何を表すのか、また何を表さないのか説明しよう。


1 学歴社会とは


 社会における社会的・職業的地位などの配分の基準として、学歴が重きを占める社会であると考えられる

江戸時代以降は、親の職業が子どもの職業を決定していた。(武士の子は武士に、農民の子は農民に…)
出世という概念がなかったわけではないが、身分間の移動を表すわけではなかった。…身分社会

近代学校教育制度は、親の職業に関わらず、その能力=業績に応じて、社会的・職業的地位の配分がなされるシステムへの移行を促すものであると考えられる。(明治政府はそのような認識で積極的に利用していた。)

〈学歴社会=能力(業績)社会〉!?

2 身分社会→学歴社会 へ転換するための3つの条件 

 ① 教育の機会均等化
  →国民諸階層の多くの子女が学校教育に参加することが重要!

 ②社会全体の「能力(業績)主義化」
  →学歴というものを社会全体が十分に評価していなければならない。
   学歴は、その人の能力=業績を表す指標となる。

 ③社会の「高学歴化」
  →〈学歴社会=能力(業績)社会〉がもとの身分社会よりも優れた発展  
   的な社会である必要があり、その結果ますます高水準の知識・技能を 
   持つ人材が必要とされることになると考えられる。

3 学歴の何が評価されるのか

 社会学・教育社会学の立場からは、人々が学歴を評価する場合には3つの要素があると考えられる。

① 漠然とした社会的評価の一つ
 →世間一般で言われる、受験偏差値や大企業就職率などのものさしに基づいて漠然と存在している学歴の格付け…「学校歴」としての考え

② 学校の文化的価値あるいは象徴的価値に基づくブランドとしての評価
 →学歴が職業的な技能・知識に限らず、その人の文化的背景を表現する者として、出身階層や教養・知的水準を表現するものとして捉えられることがある。…「学校歴」としての考え 

③ 学歴の機能的価値に基づく評価
 →より高度な学歴をもつということはある種の高度な能力をもっていることを示すという考え方。…学歴の実質的な側面

4 制度的な担保と動機付け

 学歴が上記の3要素を含んで<学歴社会>の中で評価されていく際、その評価が意図的につくられる場合がある。

例)
「ある特例の学歴をもつ者にだけ特権を認める場合」

→社会的地位が非常に高いされる職業に就くための「特急券」が用意されている場合。

 制度的な担保が必要であるばかりでなく、同時に個々の構成員をその制度に向かわせる動機付けが必要。

明治時代の日本…「立身出世」
〈誰でもがんばれば偉くなれる〉などの掛詞により、国民は学歴取得競争へ…

一般に業績主義とは<IQ+努力>とされているが、日本の場合は努力の重要性が強調される傾向にある。

5 学歴の多様性

「学歴社会とは何か?」と問われたときにどう答えることができる?

〇社会学的な側面から
→人がその学歴によって社会からどのように、何を評価されるのかという側面についての議論

〇心理学的な側面から
→「一体あなたは何なのか、どういう人間なのか」という問いに対して、
「○○の生まれで、父親はだれで、母親は誰で、どこで育って…」という説明の中で、”学歴” というものがどの程度のウエイトを占めることになるのか。…その人の学歴主義、学歴社会に対する認識を密接にかかわってくる。<学歴へのアイデンティティ>ともいえる。

日本の近代化との関連においては、学歴主義・学歴社会の最も重要な点が、人材の選抜と配分であったことは間違いない。

6 日本はどのように<学歴社会=能力(業績)社会>へと転換したのか

≪転換のスピードを知る手立て 3つ≫

 1つ目→就学率がどのように変化したのか
    …初等・中等・高等教育のすべてにおいて就学率が急速に上昇している

 2つ目→学歴と出身階層の関係がどのように変化したのか
…菊池城司によれば、戦後40年間については、社会階層の格差を維持しながら全体の高学歴化が達成されてきたが、それはむしろ、進学に不利とされる社会階層が産業構造の変動に伴い縮小して、他方、進学に有利とされる社会階層が拡大した結果、高学歴化が達成されてきた。

 3つ目→高学歴者のエリートの地位へのアクセスがどのように変化したのか・・・「能力(業績)主義化」の度合いを検討する。

3つの指標を検討してわかることは…
・就学率だけは急速に上昇
・学歴獲得に対する社会階層間の格差は残った
・エリートの地位において高学歴者が多数を占めるにもかなりの時間を要した。

☞<学歴社会=能力(業績)社会>が存立の善とする条件が十分に満たされるにはかなりの時間が必要

7 職業的を学歴に応じて配分する具体的な過程について

 学歴がその人のいかなる能力=業績を表現する者として読み取られるのか→3つの考え方

① 人的資本論

より高度な学歴はその人がより高度は知識・技能を身に付けていることを示す…「学習歴」としての学歴

△医学部・歯学部・教育学部など、職業に直結した教育を行う学部では適用可能な理論
▼文系諸学部などのように、職業との連関が緩やかにしかない学部にはあまり適用できない

②スクリーニング仮説

 学歴を、その人の一般的な基礎能力、つまち潜在能力=訓練可能性を表すものとして見る→学歴という教育的指標を経済的指標に読み替える
そしてこの場合、企業は学校を、入学試験や定期試験を通じて、スクリーニング機能を果たす装置として活用できる。

教育的指標を経済的指標への信頼度は100%ではない
→一流大学卒業だけど仕事のできない人材や職場に適応できない人材を採用してしまうリスクを負っている。

③ 統計的差別理論 

 学歴が職業的知識・技術・技能の水準を表す、潜在能力=職練可能性を表すなどと考えず、
過去に採用された人材の仕事ぶりについてのデータが蓄積されており、そのデータによって確率論的に賛否を決定するという理論。

<統計的差別理論とスクリーニング仮説の違い>
 統計的差別理論は、企業の多様性を考慮している。
→企業によって求める人材が異なっており、どこでも同じように一流大学卒業者を必要としているわけではない。


 これらの3つの理論は、学部や職業の領域に応じて適用できる理論が異なり、また、複合的に適用されることも考えられる。

8 まとめ

<学習課題>
学歴はその人のもつ能力のうち何を表すのか、また何を表さないのか説明しよう。

<自分の考え>
 今日読んだ第1章に加えて、上記のwebサイトも参考に、学習課題について考えてみた。

△学歴が表す能力
・今まで身に付けてきた知識・技能(基礎能力)の普遍的な水準

▲学歴が表さないもの
・将来性

 企業や採用再サイドから見た個人の学歴は、採用前と採用後において別々の意味を持つと考えられる。
 まず、最終学歴やそれ以前の学校歴によって、その人がどのような学習歴をたどってきたのかを一定基準で知ることができる。最終学歴が○○大学であれば、きっと高度な知識・技能を学んできているだろうという想定のもと、その人の能力を推測する一つの基準となるだろう。
 そして、もしその人を採用したとして、どのくらいの伸びしろがあるのかという将来性を持っているのかを判断する材料の一つにもなり得るが、採用してみないとわからないというのが実際のところだと考える。なぜなら、一流大学を卒業していても仕事ができなかったり、会社に適応できないといった問題を抱えている人材を採用してしまうリスクを負っているからである。 大学の名前の肩書だけでは、個人の能力(優秀さ)を100%知ることは難しく、採用後の仕事ぶりによる個人の成長の度合いも学歴だけでは推し量ることはできないものだと考える。

 


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