見出し画像

厳しい女子校を卒業して厳しい親に内緒で髪を染めた小心者で無名のヒロインの話

誰も知らない、
現在の私は立派なアラフォー。

月並みだが、
オシャレすること、ファッションを知ることが小さい頃から大好きで、紆余曲折あったがアパレル関連の仕事を現在はしている。

地方出身者の私は大学進学時に上京。
トウキョウで体験できるカルチャーや音楽、
ファッションを存分に楽しみ、当然の如くヘアカラーも頻繁に行った。

大学の恩師の方には、
「タオルケットさんの髪の毛は常に紅葉しているね」
言われるくらいだった。

そんな私が初めて髪を染めた日。
そしてそれを隠して過ごした秘密の期間がある。

厳格な女子校に通っていた当時高校3年生の私は、
早く卒業したくてたまらなかった。

スカートは膝上にしてはダメ、
肩につく髪はふたつゆいにすること。
真っ黒な髪が、大嫌いだった。

推薦枠を使って早く進学が決まっていたが、当時のセンター試験は受けなければ行けないという謎ルール。

推薦組は受験組の邪魔をしないようにと、
なんとなく空気にならないと行けない雰囲気。

仲良くしていたグループの子に、突然無視を
され続けたが周りは気づいてくれず、
そのグループに属さないといけない、腹立たしく
息の詰まる時間。

厳しい家だった為出席日数に響かない程度に、
学校に行くふりをしてサボりながら卒業までをやり過ごしていた。

そんな期間を耐え抜いたのか、ただただ過ぎ去っただけだったのか。とにかく私は高校卒業をした。

すぐに友達のお姉さんがやっている美容室に駆け込んだ。
当時Zipper やcutieなどが好きだったので
それらの雑誌を参考にしながら、
田舎の小さな美容室で

大学入学式に髪を染めてかわいい髪型にしたい!
でも親が厳しいからバレない様にしてほしい!

と、はきはきと無理なお願いをした。

お姉さんはにこにこしながら
「それじゃあ、ロングのマッシュウルフはどうかな?そしてインナーカラーで2箇所だけ染めたら
バレにくいと思うよ!心配だったら染めた部分だけ黒染めスプレーで誤魔化せばいいし。」
と提案してくれた。  

私の趣味をわかってくれてる大好きなお姉さんに、
すぐさま私は同意した。そして1時間半後には
大嫌いだった真っ黒ロングヘアーが、東京に行っても恥ずかしくない、とってもオシャレな髪型になっていた。

この時の高揚感は、立派なアラフォーになった今でも忘れられない。

この時点で、
無事田舎娘は上京しハッピーエンド、 
になったらよかったけれど、
いらないto be continued..があるのが現実である。

むしろ、ここから上京するまでの期間、厳しい父母にバレない様に過ごす新たなミッションがスタートした。

とにかく怒られたくない私はお姉さんのアドバイス通りドラッグストアで黒染めスプレーを買った。

せっかく染めてもらった髪をすぐさま封印。

ただ当時の黒染めスプレーは吹きつけた部分が
ガチガチに固まって黒光りして、体に悪いであろう成分を無理矢理フローラルでカバーした、独特の匂いがあった。

猫っ毛の細い髪の毛の一部がガチガチに固まって、 大分違和感があったと思う。

洋服や首につかない様にするのも大変だったが、
このスプレーを

朝起きて朝ごはんを食べるまでに行い、
お風呂に入った後にまたスプレーをして
リビングに行かなければならない事が
大分無理があったと思う。

だがこの絶対にやめられない地獄のルーティーンは
1、2週間敢行された。

結論としては、幸い鈍感な父は気付いてなかった様だが、 
母は何も言わなかったものの、違和感ある目つきで私をみていたので恐らく気付いていたんじゃないかと思う。

上京して7年後に他界した母に、気付いていたか正解を聞いてみたかったなと、たまに思う。

この(恐らくバレていた)初めてのヘアカラーと、
それに付随する(恐らくバレていた)シークレットミッションは、変身できた高揚感とそれを隠して生活しなければならない緊張感を味わった期間だった。
マグルの世界に溶け込まないといけないハリーポッターや、普段は冴えない青年のスパイダーマンの様に。

ただ、私は魔法使いでもヒーローでもヒロインでもなかったので、紆余曲折あったが、ただただ無名のアラフォーになった。

それでも、何者かにしてくれるヘアカラーのまほうを信じて、今月もホットペッパーで予約をとるのだ。  

 

#髪を染めた日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?