「ふーん」
書きかけの日記を開いた私は、今ジュースが一杯500円もするカフェにいる。
一杯500円のジュースはアルバイトのお姉さんの手の中のパックジュースからコップへうつされただけのようだ。
少しだけ、ほんの少しだけ憂鬱だったり、
少しだけ、ほんの少しだけ悲しかったり、
少しだけ、ほんの少しだけ自分が嫌になる瞬間にこの日記を開く癖がある。
この日記を書いたとき、わたしは心底落ち込んでいて、本当に心が真っ暗だった。
それから時間が経つと、この旅もダイジェスト版でしか心に映し出せなくなっている。
日記の中の、【旅をしなければ、得られないもの】も、今はなんなのかいまいちピンとこない。
それよりも横の席でくちゃくちゃと音を立ててパスタを食べているメガネの小太り男の方が気になってしまっている。
人間の人生は、高速道路みたいだなと思う。
大抵は、平坦で長くて長くてゴールが見えない。
そして、退屈で眠たくなる。
眠気で事故を起こしたり、富士山がふと見えたり、虹が見えたり、たまーに凄く大きい出来事が起こる。これの繰り返し。良いこともあれば悪いこともある。これの繰り返し。
ここで忘れちゃいけないのがパーキングエリアの存在。走り疲れたり、トイレに行きたくなったら立ち寄れる天国のような場所。温泉があるところもあれば、絶景が見れるところだってあるし、眠れるところだってある。数は多いに越したことは無いけど、数には限度があるし、間隔もまばらだ。パーキングエリアのない高速道路はそれこそ地獄なのかもって思う。だって居眠り運転し放題、トイレも我慢しなきゃダメ。悪いことしか起きてくれない。
隣の席の小太り男がいつの間にかいなくなって、いただきますを律儀に言ったものの、パンケーキにかける蜂蜜がぶちゃいくな音を出した金待ちのマダムに変わっている。
私は休息を取りつつ、こういう今を生きてます。
あなたはどんな今を生きてますか。