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『クシュラの奇跡』 ① 〜140冊の絵本との日々〜

1,446字


この本を選んだ経緯


 この本の評判というか効果というか威力については何度も耳にしていたのだけれども、なぜかきちんと読んでいなかった。
 この著者の『赤ちゃんの本棚』という本を資料作成のために読み込んでいて、とても信頼できる本と感じていたところ、著者紹介で『クシュラの奇跡』の著者でもあるとのことで、点と点が線でつながったように感じていた。
 『クシュラの奇跡』は仕事関係の先輩がご講演された時にオススメされていた本のうちの一冊で(私は講演記録を拝読したのみで、講演自体は勤務日だったため参加していない)、読もうと思いながら手帳にメモを挟んだままだった。(そして、メモはどんどん増えていく)
 
 『赤ちゃんの本棚』に書いてあったことを読んで、0歳に読み聞かせをする意味を再確認することができた。自分一人の心の中で感じることは簡単だし、とても大切なことだと思うが、人に理解を求める、協力を仰ぐ、仲間を増やすという意味で、きちんと言語化できるまでに自分の中で理解を得る必要に迫られていた。
 
 この本を読んでいく過程で、その深い理解に至り、仕事の一助になるのはもちろんのこと、子育てをしている真っ最中の保護者の方に少しでも参考になることがあれば嬉しい。

第一章 誕生から六か月まで

 クシュラの両親はニュージーランドはオークランド市郊外のデヴォンポートという海にのぞむ町で暮らしている。両親は学生結婚。クシュラの母は、二十歳の頃にクシュラを産んだ。

 妊娠は正常な経過を辿ったが、クシュラには奇形があることが分かった。両手の指が一本多いということで、赤ちゃんのうちに手術をしたそうだ。
 クシュラは重い黄疸にもかかっていた。また、呼吸が不規則で心臓に雑音があるということだった。
 生まれて7日目に、許されて両親はクシュラとともに帰宅した。しかし、呼吸困難とチアノーゼを頻繁に起こし、眠らず、視覚と聴覚にも障害があるようだった。

 生後6週目、両親は、クシュラに顔を思いっきり近づけ、クシュラの目の焦点が合うまで待っていてあげると、笑顔で反応することに気づいた。
 両親は、クシュラの目の前に明るい色のものを持っていけばクシュラが反応することを発見した。
 
 クシュラの体重は増えず、耳と喉の感染症もひどかった。喘息、呼吸障害、湿疹があり、腕も自由に動かせなかった。首はすわらず、目の焦点も合わせられない。背中と脚はふにゃふにゃしていた。夜は眠らず、泣いていた。

 両親は、可能な限りクシュラを抱っこしていることに決めた。
生後4か月、本を見せたところ反応した。クシュラの目の焦点が合うところまで本を近づけて見せてやると、クシュラは絵をじっくりと見たがった。

 読んでやると、全身を耳にして聞いた。クシュラの母親は、本に助けを求めるように、本を見せ、読んでやった。

 両親は深い愛情を持ってクシュラを観察し、クシュラの喜ぶこと、クシュラの反応を引き出した。親も一人の人間であり、絶望することもあるだろう。クシュラの両親も絶望を感じたこともあるかもしれないが、丁寧にクシュラと向き合い、一筋の光を見出した。

 言葉にすると簡単なように聞こえるが、これが並大抵の忍耐力と愛情深さでないことは、うかがい知れる。

 よく考えたら大したことではないことでくよくよ思い悩むことは私にもよくあるが、クシュラの両親のように、対象のヒトをよく観察し、対象のヒトの苦しみや喜びに焦点を宛てて思考したり行動したりすることを忘れないようにしたい、と感じた。

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