変な家 【ネタバレあり読書感想文】家という密室 イエという呪い
★★★★☆
Amazonでレビューしたものです
1.映画化
元々は雨穴という人の動画でした。
そこから、書籍化され、動画部分は本の第1章に当たります。
本では、その後話がさらに発展していきます。
さらに、映画化されたそうです。
映画はまだ見ていないのですが、どんな感じなんでしょうかねえ。
2.他人の家の中を覗く
①ムラの中のイエ
元々石器時代の日本人は、雨風が凌げる洞窟で暮らしていました。
それが、稲作を開始し定住するようになり、家を建てるようになります。
家は、中で親が子を作り産み育て、食し、夜ともに休むという一家団欒、心休まる空間の象徴となっていきました。
それでも皆で暮らすムラ社会では、家族単位で家に住みつつも、村のみんなで生きていく運命共同体であることは変わりなく、近所の人が気軽に訪れ、家は基本的にはすぐに開け放たれて中の様子も村中の共通認識でした。よくも悪くも。
ムラそれぞれのしきたりがあり、さらにその中にイエごとのしきたりが脈々と受け継がれていきました。
ムラの中で生きて死んでいく人生の場合は、そのしきたりに従うことが人生であり、法律の上にムラのルールがありました。
それが明治から戦後となり、土地に住まう人々皆で農業を営む社会から、それぞれ別々の会社に雇われ通勤する社会への変化とともに、核家族化は急速に進んでいきました。
隔離されたムラ社会は急速に全国に開かれ、法律に反するムラのルールは非難され消滅ていきました。
横溝正史の小説は、そういった地域の秘密が暴かれていく、面白い作品だったと思います。
②インターネット時代の密室
そして、現在21世紀の令和日本。
全てのものが録画されて瞬時に世界中に拡散されてしまう現代にあっても、家の中はプライバシーによって保護された空間として隔離されています(たまに自分の生活を実況中継する人はいるようですが)
遠い国の人と会話をし、戦争の状況を見ることができるのに、隣の家の人が家の中でどう過ごし、何をしているのかはわからないのです。
なんというミステリーでしょうか。
以前のムラよりもさらに狭いイエの中でごく限られた人数が自らの家のルールで暮らしています。
痛ましい虐待のニュースになんとかならないのかと思うことも多いですが、それ以上に恐ろしい出来事が今この時も起こっているかもしれないのです。
我々の隣の家の中で。
この本は、昔ながらの日本のイエの怖さと、現代的な家の不気味さを扱った、面白い試みの作品だったと思いました。
3.探偵というよりは
疑問点としては、
まず、販売中の家の間取りとそれについて勝手に推測した内容をネットに載せてしまっていいのかというものです。
どう見ても家が売れそうな内容でない間取りの推測を載せてしまっては、名誉毀損などで訴えられたりしないのでしょうか、違っていたらどうするのでしょう?
また、子供でも小学校高学年ぐらいだと大人とそれほど変わりませんが、それ以前だとものを運ぶ体力がなく、推定案を履行できるかは疑問があります。大人と同じぐらいになると、いうことをきかなくなったり出ていってしまうでしょう。
そして、筆者については、いろいろ動いてはいるものの、つなぎ役確認者、記録者という役割だったのが、少し残念でした。探偵として救って欲しかったなと思います。
最後に彼は逃げることはできなかったのでしょうか?
司法や社会に保護を求めることはできなかったのでしょうか?
家族のために、家族を連れて家から逃げて欲しかったですね。
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