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便秘症にプルーンを 【読書感想文】 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症


★★★★☆
Amazonでレビューしたものです

日本消化管学会編集による『便通異常症診療ガイドライン2023』の「慢性便秘症」編.Mindsの作成マニュアルに準拠し,臨床上の疑問をCQ(clinical question),BQ(background question),FRQ(future research question)に分けて解説.冒頭には診断・治療のためのフローチャートを掲載し,便秘症の定義・分類・診断基準から疫学,病態生理,診断検査,内科的治療について,前版以降の進歩や最新知見を盛り込み,日常診療に必携の一冊となっている.


1.便秘症は危険がいっぱい


普段生活していて、きのう何食べた?とは聞くことがあっても、きのうどんな便でた?とは聞かないですよね、あまり。
聞いてみると、「便秘何それ?」と排便に問題を感じたことがない人から、「週に1回ぐらいが普通」という人、「いっつも便秘で困ってる」という人まで、本当に人それぞれです。

私も結構な便秘症で、酸化マグネシウムを飲んでいたこともあるのですが、仕事中にトイレに行きたくなってしまうので断念し、色々試した結果、現在は毎日バナナ1本とヨーグルト200gと野菜を300g以上とるという作戦でなんとか対応しています。コンビニの野菜のパック3つですね。結構な出費とかさばりですが、背に腹は変えられないという感じですよ。

2.新しい便秘症の診断検査治療

この本は昨年2023年に日本消化管学会というお腹の専門家が、便秘症について論文でのエビデンスを集めて刊行したものです。
(ちなみに日本消化器病学会という学会もあります。紛らわしい)

便秘症にたいしては、以前からあった酸化マグネシウムやセンノシドといった下剤に加えて、アミティーザ、リンゼス、グーフィスといった新しい薬が近年発売されており、専門外来なども認めるようになりました。


というのも、
便秘はQOL(生活の質)を下げることが明らかになっており、さらには、

”慢性便秘症は、心血管疾患の発症・死亡リスクの上昇、パーキンソン病や腎疾患の発症リスクの上昇に関与するため、長期予後に影響を与える可能性がある。”

p.20

ということのようです。
たかが便秘、されど便秘ですね。

色々検査や薬、手術などについて紹介されていますが、

 ”一方、本邦では、病態を分類に必須な検査は普及しておらず、症状から「排便回数減少型」か「排便困難型」に鑑別したうえで、まず投薬治療が行われている。改善がない場合に各種検査による病態分類が行われており、現状では海外と本邦で治療戦略が異なることに留意が必要である。”

p.114

また、

 ”最近のレビューでは、生活習慣の改善(食物繊維摂取、水分摂取、適度な運動)で治療効果が得られない場合、まずは通常下剤(浸透圧性下剤、刺激性下剤)を用いることが提唱されている。”

p.114

やっぱり食事と水分と運動ですか。野菜続けて食べないとダメか。

と思ったら、こんな記載も。

”慢性便秘症患者に対して、キウイフルーツ、プルーン、サイリウム(オオバコ)をそれぞれ摂取した際のRCTでは、どの食材でも同程度の自然排便率、排便回数の増加を認めており、キウイフルーツ、プルーン、サイリウムの慢性便秘症に対する有効性が示されている。”

p.71

キウイにプルーンに、オオバコ!

これはいいことを読みました。
早速プルーン試してみますね。


しっかり治療して、快眠快食快便を目指したいと思います〜。

3.目次


第1章 定義・分類・診断基準
CQ 1-1 便秘はどのように定義されるか? 
    また慢性便秘症はどのように定義されるか?
BQ 1-1 慢性便秘症はどのように分類されるか?
BQ 1-2 慢性便秘症の診断基準は何か?
FRQ 1-1 難治性慢性便秘症はどのように定義されるか?

第2章 疫学
BQ 2-1 慢性便秘症の有病率はどれくらいか?
BQ 2-2 慢性便秘症の発症リスクは何か?
BQ 2-3 慢性便秘症はQOLを低下させるか?
BQ 2-4 慢性便秘症は長期予後に影響を与えるか?

第3章 病態生理
CQ 3-1 慢性便秘症の病態に小腸機能は関与するか?
BQ 3-1 慢性便秘症の病態に結腸機能は関与するか?
BQ 3-2 慢性便秘症の病態に直腸肛門機能は関与するか?
CQ 3-2 慢性便秘症の病態に直腸感覚閾値(便意)は関与するか?
BQ 3-3 慢性便秘症を二次的に起こす基礎疾患はあるか?
BQ 3-4 慢性便秘症に加齢は関与するか?
BQ 3-5 慢性便秘症を起こす薬剤はあるか?
BQ 3-6 慢性便秘症の病態に心理的異常は関与するか?
CQ 3-3 慢性便秘症の病態に腸内細菌は関与するか?
CQ 3-4 慢性便秘症とオーバーラップする機能性消化器疾患は何か?

第4章 診断検査
BQ 4-1 慢性便秘症の診療に有用な問診票は何か?
BQ 4-2 慢性便秘症の診療に有用な身体診察は何か?
BQ 4-3 慢性便秘症の診療で適宜必要な検査は何か?
CQ 4-1 慢性便秘症における警告症状・徴候は何か?
CQ 4-2 慢性便秘症の病態機能評価において、体外式超音波検査は有用か?
CQ 4-3 慢性便秘症の病態機能評価において、放射線不透過マーカー法は有用か?

第5章 内科的治療
BQ 5-1 慢性便秘症治療の目的(目標)は何か?
BQ 5-2 慢性便秘症に生活改善の食事指導・食事療法は有効か?
BQ 5-3 慢性便秘症にプロバイオティクスは有効か?
BQ 5-4 慢性便秘症に膨張性下剤は有効か?
CQ 5-1 慢性便秘症に浸透圧性下剤は有効か?
BQ 5-5 慢性便秘症に刺激性下剤は有効か?
CQ 5-2 慢性便秘症に粘膜上ひ機能変容薬は有効か?
CQ 5-3 慢性便秘症に胆汁酸トランスポーター阻害薬は有効か?
BQ 5-6 慢性便秘症に消化管運動機能改善薬は有効か?
BQ 5-7 慢性便秘症に漢方薬は有効か?
BQ 5-8 慢性便秘症に浣腸、坐薬、摘便、逆行性浣腸薬は有効か?
BQ 5-9 慢性便秘症に心理療法は有効か?
CQ 5-4 オピオイド誘発性便秘症に対する治療法は何か?
FRQ 5-1 ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを用いるべき臨床的特徴は何か?
BQ 5-10 慢性便秘症にバイオフィードバック療法は有効か?
BQ 5-11 慢性便秘症に順行性浣腸法(antegrade continence enema:ACE)は
有効か?
BQ 5-12 保存的治療で改善しない大腸通過遅延型の慢性便秘症に結腸切除術は有効か?
BQ 5-13 保存的治療で改善しない便排出障害型の慢性便秘症に外科的治療は有効か?
CQ 5-5 難治性結腸運動機能障害型便秘に対する手術時、術式選択に考慮すべき検査は何か?
CQ 5-6 慢性便秘症の病態に応じた治療法は有効か?

索引

BQ=すでに結論が明らかなもの
CQ=重要臨床課題
FRQ=十分なエビデンスがなく、今後の研究課題

著者:日本消化管学会 (編集)
出版社 ‏ : ‎ 南江堂 (2023/7/27)
発売日 ‏ : ‎ 2023/7/27
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本 ‏ : ‎ 144ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4524210059
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4524210053
寸法 ‏ : ‎ 18.2 x 1 x 25.7 cm


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