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Blackmagic Creator's Close Up #3 -  北山 夢人

北山 夢人 「トップカラリストの裏側」

本連載は、映像業界の最先端で活躍するクリエイターの歩んできたストーリーや思考にフォーカスしインタビューをする企画です。

今回は、アカデミー受賞作品「ドライブ・マイ・カー」などの映画作品のカラーグレーディングを数多く手がけるカラリスト 北山夢人氏にお話しを伺いました。

北山 夢人 - Yumeto Kitayama

株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス
映像制作部データイメージンググループ
カラリスト

1984年東京生まれ
東放学園プロモーション映像科卒業後
2005年株式会社IMAGICA入社

2018年度JPPA シルバー賞受賞『破獄』
2022年度JPPA 優秀賞受賞『ドライブ・マイ・カー』

最近の作品

DaVinci Resolveを使用して、北山氏がカラーグレーディングを手がけた作品。映画やCMの色 (見た目) を調整する工程が必ずあり、それを担うのがカラリストです。カラーグレーディングは、ストーリーや作品の印象や深みを演出する大事な作業で、DaVinci Resolveはハリウッド映画をはじめとする、様々な映像作品のカラーグレーディングに使用されています。

「ドライブ・マイ・カー」

「先生、私の隣に座っていただけませんか?」

きゃない MV「バニラ」

映像業界に入ったきっかけ

Blackmagic Design : 東放学園プロモーション映像科卒業ということですが、子供時代から映像に携わる仕事に憧れていらっしゃったんですか?

北山氏:大本は僕音楽が好きで、中学生ぐらいの時期にいわゆるロックバンドとか、そういうのを好きになって、当時はブランキージェットシティとかよく聞いてましたね。その時点で少なくとも自分は楽器や歌とかのプロにはなれないなって思っていて、同時にミュージックビデオっていいなと思ったんですよね。それで、東放学園はプロモーションビデオ学科があったので入学したって感じですね。映画や映像の方もちゃんと学びたいという気持ちもありました。

当時、丹 修一さんが監督されていているミュージックビデオが好きで、将来映像の仕事ついてみてもいいかなと影響を受けました。イマジカ入社後に、アシスタントで丹さんの仕事に就けた時はすごい嬉しかったですね。

Blackmagic Design:学生時代から、カラリストになりたいと思っていたのですか?

北山氏:最初は監督になりたいと思ってたんですが、実際にPVを作ったり、監督をやったり、実際のプロジェクトを経験していく中で自分は監督は向いてないと気づいたんですよね。
後に、学校でイマジカを見学する機会があって、それでカラリストっていう存在について知ってたんですよね。昔から僕本当に機械音痴で、でも当時、編集やMAとかよりは、カラーグレーディングは感覚的にできそうだなと漠然と思った記憶があります。

Blackmagic Design:見学を通じてイマジカさんに入りたいと思ったんですか?

北山氏:当時も稀だったのか分からないですけど、イマジカのカラリスト部門の募集があったんですよね。他の制作会社にも応募してたんですが、イマジカの面接が結構早い時期でパパって受かって、「じゃあ、もうそういうことでいいか」みたいな感じで入りました(笑) なんか今思うと恵まれた話ですよね、自然とカラリストの道に進んでいました。

イマジカ入社から現在に至るまで

Blackmagic Design:イマジカさんへ入社されて18年目ということですが、入社当時はどのようなお仕事をされていたんですか?

北山氏:最初は、*テレシネのアシスタントをやっていてかなり激務でしたね(笑) 今では考えられませんが、夜12時ぐらいに作業の立ち会いが終わり、そこから5時間くらいフィルム収録する日々でした。だから、今の若い人やカラリストを目指している人が、「この色が好きです、この作品好きです。」とか、すごい向上心に溢れてるんですけど、当時の僕はそんな向上心なんて持てる体力がなかったです。その日の作業を終わらせるので、精一杯みたいな。

Blackmagic Design:すごい仕事量ですね。その中で、カラリストとしての知識をつける時間や学ぶ機会はあったんですか?

北山氏:そうですね、仕事について具体的に教えてもらえる機会はあったと思います。でも、今パっと思い出すのは深夜にひたすらフィルムをかけ続けてたことですね(笑) 大変ながらも、入社してから4、5年経った時に、 「あ、この人の画なんかいいな。」みたいなことを漠然と思うようになりましたね。

*テレシネとは、フィルム映像をテレビジョン信号に変換する作業

Blackmagic Design:アシスタントからメインカラリストになったきっかけの作品や、印象的だった出来事はございますか?

北山氏:30歳くらいまではアシスタントの方が多かった気がします。CMをメインで担当をさせていただく時期があって、でも本当に僕売れなかったんですよ。全然仕事がなかったですね。ある時、喫煙所で先輩から、「北山、映画やってみない?」と言われ、映画『体脂肪計タニタの社員食堂』を2013年に担当したのが一つ大きな出来事だったと思います。
その後、2015年に連続ドラマ「海に降る」を担当しました。加藤十大さんが撮影を担当されていて、十大さんと十大さんの師匠 蔦井孝洋さんのお二人に出会ったことが、自分にとって1番大きな出来事だったのかな、という気がします。映像的に良いものかどうかとかっていう基準を自分に作ってくれたのは、このお二方ですね。あとは、一緒に作品を作るっていうこと自体が純粋に楽しかったですね。
他にも、アシスタント時代も含めて、今まで出会ったカラリスト、カメラマン、監督、作品、全ての影響を受けてると思います。

カラリストとしてのやりがい

北山氏:すごいシンプルなのですが、作業が終わって、「ありがとうございました。」っていう瞬間が好きですね。あとは、自分が良いなと思っている事や雰囲気を褒めてもらえるのもやっぱり嬉しいです。もちろん、作品を実際に見ていただけるのも嬉しいです。
あとは、 結構どんなに長くカラリストをしていても、立ち会いが始まる前って不安なんですよ。なんていうだろう、、、前日の夜とか明日行きたくないなって思うくらい(笑)

Blackmagic Design:立ち合いというのは、カラリストさんが実際に作った色を監督やカメラマンに見せるっていう事ですか?

北山氏:そうです。いざ、お見せするっていう前にとても不安に感じますね。でも、開始20分後くらいに「あ、なんかやってけそうだ」なみたいな瞬間があって、その時が1番幸せですね(笑)
あとは、様々なカメラマンや監督など面白い人たちと出会えて、一緒にお仕事ができるのもやりがいですね。

Blackmagic Design:お仕事において大切にしていることは?

北山氏:作品に沿ったことをする事と、その場にいる人がストレスがないような環境を作ることですね。発言がしづらいような空気を作りたくないなというのがあって、コミュニケーションを取ることを大切にしています。

結局、「自分が作品に沿う」ってなんだろうと考えてる時点で、それもまた個性なので十分だと思うのですが、少し自分感みたいなこと0.5%くらい作品に入れれたらいいなと思います。

北山氏:100%間違いないのは、カラリストは他の人の作品も絶対に沢山見た方がいいという事ですね。自分にない発想とかがあったりするはずなので、幅が増やせる気がします。知ってるか知らないか、それって全然大きく違うと思うんです。

今後の展望

北山氏:世界的な映画祭で賞を受賞したドライブ・マイ・カーのような作品に多く携われるようになりたいという気持ちもある一方、自分が面白いな、好きなんだよねっていうような作品をいっぱい作りたいですね。また、お陰様で今仕事を楽しくやらせていただいているので、今後もその気持ちでやり続けられたらなと思います。

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