トランプ再選?

  新年明けて2021年1月20日正午に就任が予定される米国第46代大統領に、民主党公認候補のジョー・バイデンが当選したと大手メディアが一斉に報じた。ルビコン川を渡る決断をバイデン側はしたようである。そして、トランプ側がここで「敗北宣言」などするわけがない。郵便投票の不正集計を言い立てており、各スイングステートは裁判所に訴えを起している。グレタ・トゥーンベリは「落ち着けドナルド!」とTweetしたが、訴えは州上級裁判所から連邦最高裁に持ち込まれるかもしれない。膠着状態は続く、トランプ側はそれを狙っているのだろうか。


 12月8日が一般投票の最終確定期限である。「選挙人」は確定しておらず、どちらの候補も負けを認めない。法廷闘争は決着していない。さらに各州には独立国家のような強い権限がある。州知事または州務長官が選挙人を確定出来ない・しない場合は、連邦議会はその州の選挙人を最終集計に組み入れる事が出来なくなる。そうなれば両候補とも、選挙人総数の過半数である270名を得る道が断たれる可能性がある。


 12月14 日、各州はそれぞれ選挙人集会を開催し、選挙人は正副大統領候補に投票しなくてはならない。裁判の決着がついていない州では選挙人は確定していない。投票は出来ない。12月23日の連邦議会への結果送付は不可能になる。現時点では可能性だが、合州国憲法修正第12条が適用される事態となり、下院による大統領選出プロセスに移行する。実に1824年以来、200年ぶりの下院への選任権の委譲になる。


 ナンシー・ペロシ議長の牙城である下院は民主党が過半数を握っている。しかし修正12条では各州の下院勢力の過半数を占める政党に1票が与えられ投票される、1州1票制になる。旧勢力のシュミレーションでは50 州のうち過半数26を共和党がとると分析されたが、2020年11月11日現在のAP通信の報道では、下院選は民主党がやや苦戦しているようである。不気味なのは、ここでペロシ議長が憲法第5条1項を召喚する場合だ。上院と下院は、それぞれの選挙を判定する権限を持っている。例えば下院選で、過去に民主党候補と共和党候補が接戦を繰り広げた選挙区がいくつかあったとする。そして僅差で共和党が勝利していたが、その選挙結果に今になってから異議を唱え始め、下院での票決にかける。民主党多数により、選挙結果は逆転する。これが成功するなら下院民主党は全米50州の過半を制し、新大統領を選出する権力を手にする。


 アメリカ合衆国(合州国)は、「州」の投票により、大統領を選ぶ。したがって、今回の一般投票は人気投票であり、そこまでコトの趨勢が決まったわけではない。各州の立法部である議会が選挙人を選ぶことも可能である。一般投票に不正ありなら、その投票結果を基にした選挙人団に州知事が署名した「選挙人認定証書」を渡さないこともあり得る。報道ではその可能性を検討しているとの情報も出ている。一般投票でバイデン候補が勝ったとしても、その州の議会が共和党優勢なら充分可能である。そして議会がトランプ候補の選挙人団に選挙人集会を開かせ、選挙人が投票した結果(議事録=選出証書)と認定証書を連邦議会に送る。州議会は市民による投票で選ばれているから合憲である。一般投票で信任されたのは我々だと民主党側も自前の選挙人団に投票させ、その結果を連邦議会に送付する。そうすると各州が1月6日の上下両院合同会議の集計の際に、公認の選挙人団と自称選挙人団の投票結果が乱立することも絵空事ではない。ここでも事態は修正12条の複数の選出証書が送られてきた場合に該当する。この場合は上院議長のマイク・ペンスが全ての証書を開封し集計する権限があると、一応は解釈されている。





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