ドルと金とビットコイン

 2020年11月30日、ビットコイン(BTC)が過去最高値を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和を継続しており、ドル安への不安は理解できる。通常、インフレヘッジの投資先は安全な金地金だ。しかし金よりも、仮想通貨のビットコインがリスク分散から注目されている。

 ビットコインは「中央銀行や国家に依存しない通貨」として考案された暗号資産だ。2008年のリーマンショックは金融危機を契機に登場したこの暗号資産(仮想通貨)は、あらかじめ半減期と発行上限がシステムとして組み込まれており、「ブロックチェーン」という公開分散手帳でユーザー同士が直接取り引きを行う。国家の中央銀行を必要とせず、人為的な為替操作や政治的な介入を廃した、非中央集権型の国際通貨と言われている。

 コロナ不況に対しFRBは量的緩和を継続して、ドルの供給を増やす。したがってドル安への不安は高まる。金は安全な投資先だがリターンは高くない。投資家がビットコインに資金を投下するのは安全であり、なおかつ充分な利益を見込んでいるからだ。

 しかしドルへの信用不安は、2008年金融危機から断続的に維持される量的緩和(QE)にあるのだろうか。そもそもリーマン・ショックは1985年のプラザ合意から始まる金融緩和策に震源がある。やはりドルへの信用が揺らぎ始めたのは1971年のドル・ショック(ニクソン・ショック)からではないだろうか。金との交換が出来る唯一の基軸通貨ドルが、金兌換停止になったことが淵源である。

 ビットコインには本質的に価値がない。この暗号資産の価値を保証しているのは、ドルとの交換可能性である。つまり、国家に依存しない無国籍の国際通貨を謳う仮想通貨は、実のところ米国の信用で支えられているドルに依存している。デジタル・ゴールドのメッキは、米国の権威に他ならない。それはアメリカ合州国と運命を共にしている。

 国家の信用(経済力と軍事力)を担保とせずに、世界市場を流通する金が正貨であることに変わりはない。


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