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ブラック放浪記(5)魑魅魍魎が跋扈する本社部門へ



※部署の業務がわりと特殊だったため、バレない程度に省略してぼかしたら全然仕事してなかったみたいになってしまいましたが、それなりに仕事はしてました。


私はとあるブラックなPR会社に辞表を出した。地道に転職活動をして次を見つける時間と気力がなく、すぐにでも辞めたかったので派遣会社で次を探すことにした。中々決まらない中で比較的好条件の案件が突如降ってきた。前述のとおりブラックである可能性が高かったが、給料も上がるし残業代も出るからいいやという気持ちだった。前の会社は固定給26万円、残業代もボーナスもないという恐ろしい会社だったのである。


職場見学という名の面接で訪れた会社は、東証一部上場の製造業。会ったのは就業する部署の部長とグループリーダー(GL)。本社部門で部長の秘書と部署のアシスタントをするというのが仕事内容だった。様々な業務があるので対応力のある人が良いと言う。次も決まっていないので私はOKした。


前任者はわりときつい性格の人だった。言い方がきつく決めつけてモノを言うので、早く辞めてくれないかなと思いながら引継ぎを受けた。顔合わせした上司2名とは仲が悪いらしく、それが原因で辞めるようであった。


仕事その1:上司と社外コンサルタントの介護

当初部長には全員秘書がついているのかと思ったが、そうではなかった。同じ統括部の中で秘書がいたのはその人とあと1名ぐらい。他の部長はみんな自分で出張も手配するしスケジュール管理もする。しかしその部長(Tさんとする)はそういった庶務的なというか社会人として基本的なことが壊滅的にできなかった。突然出張を決めたりとりやめたり、大きな会議をやると言いだしたり、計画性がなかった。Tさんが急に決めた打ち合わせの調整(スケジュール、会議室の手配)にはかなりの時間を要した。たいていのことは突然決まり、仕事とはそういうものだと悪びれもしない。打ち合わせはともかく大きな会議でも同じノリなのである。突然思いつくため会議室は空いておらず、近所の大きな会議室を有料で借り、しかも日程は何度も変更し、内容は数日前になっても決まってない。当日の進行役もいないまま本番を迎えた。彼女としては「キックオフミーティングやりました」というのを半期の業績にしたかったのかもしれない。だが会社の経費を使い部下を振り回してまでやることだったのか。出席させられた人も大迷惑である。

しかし問題は部長だけではなかった。部署ではコンサルタントと契約していて、彼女がまた社会生活に支障をきたすレベルで基本的なことができなかったのである。彼女は外国人で基本的に国外におり、日本には1か月か2か月に1度来るのだが、そのたびにホテルのコンシェルジュばりに様々なサポートをすることになった。彼女も前もって知らせるということができず、会社持ちで出張してくるのにスケジュールすら連絡せず(コンサルタントなのだから会う予定もないのに来日するのは意味がない)、WiFiルータをホテルに送ってくれ等リクエストだけはしてくるというありさまであった。


仕事その2:部署のサポートという名の介護と…

公式書類の改訂作業などの他に、計上業務があった。その本社部門は金にルーズで支払い管理台帳も使いにくいものしかなく、整備した。また、計上業務も私がすることになった。毎月の支払額の集計も行った。集計はGLからのリクエストで、外貨支払いの分もあるので円でまとめて毎月の予算と比較できるようにしてほしいとのことだった。が、その集計の結果、とんでもないことが起きることになる。

そもそも集計しなくともGLは部署の収支表にアクセスできたのだが、このGLがまた金の計算ができないというか四則計算も怪しいレベルで表が読めなかった。どれが必要な数字か分からないから、自分に理解できるフォーマットに落とすのを私に依頼していたということである。それを知った時の私の無力感、お分かりいただけるだろうか。



そうして仕事というか計画性と社会性のない上司の介護をしている間に色んな問題が見えてきた。

1 金の使い方

2 人がすぐ辞めている

大きく分ければその2点である。2については私の前任者の派遣社員が3か月未満、その前にいた正社員もかなりの短期間で退職している。いやっほうブラックだぜ。

1は私が会社を追い出された要因である。とにかく色んなものを外に頼んでは大金を支払っている部署で、その選定基準といい契約といい誰もが納得するような公正さはなかった。私の後任者が発した名言をここで紹介したい。

「この会社は本当に東証一部上場なんですか?会社としては二流どころか三流ですよ。こんなお金の使い方が許されるなんてありえない」

過不足なく実情を表していたと思う。その会社の名誉のために言うと、会社には製造部門と販売部門もあり、そちらは1円を切りつめるような部門もあった。数字のノルマを持たない本社部門の頭がお花畑すぎたというだけのことである。しかし血のにじむ努力をして節約したお金が一瞬にして本社部門の無駄遣いで吹っ飛んでいることを知ったら、現場の人はどう思うだろうか。本社部門には100万円単位の金額を誤差みたいに思っている人もおり、年間では億単位の予算を使っていた。


あいにく私は本社部門で育った人間ではなかった。ほとんどをメーカーの営業部門で過ごしてきた。なので自分たちでは1円も稼がないのに何千万円、何億円と使う人たちがいることはいまいち理解ができなかったし、そういう人たちがやたらと偉そうなことはもっと不可解であった。

さらに、コンプライアンスにやたら厳しい会社で教育された私は、公正な会計なんざくそくらえみたいな金の使い方が我慢ならなかった。正しくないことはしてはいけない。派遣社員だからこそ間違った命令は断ること。何かあった時に真っ先にクビを切られるのは派遣社員、正しいことかどうかちゃんと考えて仕事は請けるように。確かにその通りだと納得して、私はそれを働く上でのポリシーにしてきた。


当初、説明すれば分かってもらえると考えていた。最初から「こいつは話が通じない」と決めつけないのも私のポリシーである。誰に対しても【トライアル期間】を設けている。一定期間は誰もが正規のお客さまと同じ待遇を受けられるわけだ。私だって人と揉めたり人を憎んだりしたくない。仲良く平和に過ごしたい。しかし、「どうか話が分かる人であってくれ」という願いは粉砕されることになる。

彼女たちはおそらく、火星人か何かだったんだと思う。




続く

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