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茨城論壇 02 「畑と気象被害に思う事」

こちらは2021年6月26日の茨城新聞『茨城論壇』に掲載して頂いた1500字
ほどのコラムです。掲載時のものに若干の修正を加えています。

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 筑波山麓でワイン用ブドウの栽培を始めて早くも七年目となります。まだまだ駆け出し農家の私ですが、それでも畑をやっていれば毎年何らかの気象被害を受けています。

 大規模に苗植えを行った初年度の2015年は梅雨明けが早く、梅雨明け後の7月中旬からお盆前までほとんど降雨がありませんでした。気温は連日33〜34度。まだ浅くしか根の張っていないブドウ苗は今にも枯れてしまいそう。軽トラに積んだタンクに水を汲み、畑へ何往復もして、終日水やりをする日々が続きました。やっとの夕立でまとまった雨が降った時には心底ほっとしたのを覚えています。

 そして苗もそこそこ育って来た三年目。開花期の好天のおかげで結実も良く、今年は一トン位は収穫できそうだ!と思っていた矢先の2017年6月。一雨来そうだなと思って見上げた曇天の空から突如ばらばらと、1〜2㌢サイズの雹が次々と降って来ました。スマホで見た雨雲レーダーはまさにゲリラ豪雨の様相で、降雹自体はたった五分間ではありましたが、葉や実へのダメージに血の気が引きました。SNSでの私の報告を見て翌日から集まってくれた数名の手伝いの方々と畑に入り、雹にやられ茶色く変色したブドウの粒をハサミで除去する作業を延々と続けました。ちょうどブドウの傘がけをしようと思っていた時期だったので大変気落ちしたのですが、手伝ってくださった皆さんのお陰で多少の減収にはなったものの、秋には健全なブドウの収穫に至る事が出来ました。

 その更に二年後の2019年は台風の当たり年。千葉県各地に被害をもたらした台風15号は収穫直前の畑に結構な爪痕を残して行きました。ビーズニーズのブドウは棚栽培ではなく、欧州方式の垣根栽培を行っているのですが、台風の去った翌朝に畑を見回ると、本来は180㌢ほどの高さのブドウの垣根が二畝、地上から70㌢の高さで見事直角に折れ曲がっていました。その際の瞬間最大風速は29.6㍍。太平洋を北上する台風が茨城県の横を抜けていく際に北から南へと吹いた強風によって、北側に風除けのない畑の北側二列が見事に倒されてしまった、と推察できました。自然の猛威をまざまざと見せつけられた一方で、倒れた畝のブドウは枝が折れるような事も無く、収穫前のブドウをたわわに実らせたまま。ブドウはツル性の植物なので枝がしなやかで折れにくい特性はありますが、その生命力には舌を巻きました。倒れかけの畝からも何とか無事に収穫を終え、冬場に垣根のワイヤーを取り外して支柱の差し直しを行いました。余計な出費と手間がかかりましたが、その被害を受けたブドウ樹は何事もなかったかのように今もブドウを実らせています。

 そして2021年。関東は梅雨入り宣言前の 5月中旬以降からずっと、梅雨入りしたかのような雨天が続いています。去年も長梅雨で7月はほぼ毎日降雨という大変悩ましい天候でした。雨に濡れるとブドウの房に病気が出やすくなるので、防除を頑張っても収穫量は減ってしまいます。(2022年追記:2021年は梅雨明け後からの熱波でブドウの生育障害である「高温障害」により黒ブドウの着色不良が見られました。特にメルローが大きく影響を受けて、メルローの収穫は8割減、カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーはなんとか収穫出来ました)

 ここまで書いて来た気象による被害は、実はほぼ全てが昨今の温暖化の影響によるものと考えられます。猛暑と乾燥、発達した積乱雲による豪雨や雹・竜巻の発生、台風の大型化、梅雨の長期化など。気象の変化をこれほどまでに如実に感じ取れるようになって来た今、地球温暖化対策に真摯に取り組まねばならない最後のチャンスのようにも感じてしまいます。自然環境を守り、今まで受け継がれて来た農業や林業を守る事も重要なのですが、やはり豪雨や暴風による災害で大切な個々の生命が脅かされるのはやりきれません。

 節電、節水、エコドライブなどの省エネは、個人で出来る温暖化対策として大変有効です。レジ袋有料は不便ではあるけれど、エコバッグへの切り替えも温暖化対策のひとつ。
 少しずつでもコツコツと、出来る対策を心がけていきたいと思います。


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