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右肩上がりの時代を知らない子どもたち


娘の気持ちが親に分かるわけがない

相手のことを理解しようと思うなら、相手の立場になって物事を考えなさいと言われることがあります。
しかし、私たちは相手の立場になっているようで、実は自分の目線で相手をジャッジしていることが少なくありません。
もし、24歳の娘の立場になろうと思うなら、自分が今の時代の24歳になってみることからしか、娘の気持ちは理解できないしょう。
私が今の時代24歳なら、これからどんな人生を歩むだろうか?
私は、1969年生まれで、2022年現在は52歳です。
少しだけ自己紹介をさせていただくと、現在の仕事は、一人企業で経営コンサルタント業を生業にしています。
コンサルタントというとできる人のようなイメージを持たれることもありますし、詐欺のような仕事だと思われることもあります。
評価は人に任せるとして、実際のところは企業様から仕事を依頼していただき、ご期待に添えたら報酬が振り込まれるということなので、こんな私でも必要としてくれる企業様があることに感謝しています。日本の平均所得よりも少し多くの収入があるので、会社員で言えば、並の上という感じでしょうか。
離婚をして独り身なので、家族はいません。しかし、結婚していた時期もあり、娘が二人います。二人とも、東京の有名私立大学を卒業しているので、この点も並以上でしょう。
少し違う点があるとすると、長女は高校時代にパニック障害になり、次女は社会人の1年目に適応障害からうつ病になって、入院をしたところでしょう。現在、長女は正社員として仕事をしていますが、次女は退院後、自宅で過ごしています。精神的には安定しているようですが、仕事をしていないので、私としては彼女の将来を少し心配しています。とはいえ、本人がインターネットに公開している日記を読む限り、特に不安があるようでもなく、うつ病ともうまく付き合えているようです。母親と二人の娘は支えあいながら生活をしていという話も聞きます。
私は離婚して、家を出ていますし、残った家族はうまくやっているので、とやかく考える必要はないのかもしれません。しかし、考える必要のないことを考えてしまうのは、親だからでしょう。実は、これが大きなお節介で、私自身は決していい父親ではなかったと思います。
今のところ次女は、平穏な生活を取り戻していますが、数ヶ月前は「死にたい」と言っていました。相当に危険な領域になった時に、ようやくと娘と向き合うことができたように思います。
恥ずかしながら、私は自分のことばかりを考え、娘のことを知ろうとしませんでした。窮地に陥って、ようやくと娘のことを考えるようになりました。


よっかった時代と厳しい時代を経験している50代

まず、考えたのが2022年に24歳であるということです。
大学を卒業して、仕事をしている人なら入社2年目か3年目ということになります。
社会人2年目か3年目といえば、ようやくと仕事に慣れてきつつある頃で、任される仕事が少しあるかどうかというところでしょうか。
社会人の人材育成システムというのは、30年前と大きく変わっていないでしょうから、任される仕事の内容というのは私の頃と違わないと思います。
違うとしたら、社会環境です。
景気が右肩上がりの時代というのは、能力の低い人間でも給料が上がっていました。
実際に私は仕事ができなかったので、20代と30代で何度も転職をしました。キャリアップではなく、嫌になって会社をやめていました。
そんな人間でも、毎年給料は上がっていましたし、転職をしても前職よりも給料が上がっていました。言うまでもなく、実力ではなく時代がよかったのです。
しかし、現在50歳を迎えている私たちはどうでしょうか?
まさにリストラの対象です。先輩たちが仕事をしないでも(という風に見えていました)役職が上がって高い給料をもらっていたのに、自分たちの時代になったら「お引き取りください」と言われると思っていませんでした。
私たちは、中年になって厳しい社会を経験しているわけですが、子どもたちは、そんな私たちを見て成長しているのです。
右肩上がりの時代を知らない。
それが私の娘の年代です。
彼ら、彼女らがどのような人生観、仕事観を持っているのか。
人生、時間を遡ることもできないし、手繰り寄せることも出来ません。2021年に52歳である私は、同じ時期に24歳である人の状況を正確に理解することは不可能です。できるとしたら、24歳の私が今の時代にタイムスリップするしかありませんが、スマホすら知らない若者が現在にタイムスリップしたら、出来ないことも多いでしょう。つまり、人の状況を正確に把握することなど不可能なのです。この事実を知ってからは、「俺の若い頃は」と言わなくなりました。
「俺の若い頃は」という話をしなくなったのは、私の若い頃の話など、今の人の参考にならないと気づいたからです。違う時代を同じ土俵で話すことは不可能です。もし、24歳の私が今の時代にタイムスリップをしたら、スマホも使えない化石的な存在です。そんなおじさんの話を若者にしてしまうのは、一種の害かもしれません。会社員時代の私の部下たち、ごめんなさい。
それ以上に、娘たち、ごめんなさいと思うのです。
おじさんは時代のせいにしないでがんばることで、何かを伝えることができたらいいなと思っています。


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