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【ボクシング】返り討ちV1の黒木優子だが、鈴木菜々江の巻き込みに苦闘

☆3月30日/東京・後楽園ホール
WBO女子世界アトム級タイトルマッチ10回戦
〇黒木 優子(YuKOフィットネス)チャンピオン
●鈴木菜々江(シュウ)6位
判定3-0(96対94、96対94、97対93)

 前回以上のパフォーマンスで初防衛。それを期して臨んだ黒木だったが、判定結果が出るまでに冷や冷やするほどの苦闘を強いられた。本人の手応えとしても、自分のボクシングを壊されたという思いが強かったのだろう。

 サウスポースタイルから左へステップを切って左ストレート。鈴木から王座を奪った前戦ではそれが冴えまくった。強引に入って右フックを狙いにいった鈴木の入り際にハードヒットさせ、それでも入り込んでくる鈴木の右を右へのステップの切り返し、ターンでかわす。攻撃的なヒット&アウェイでの完勝を遂げたのだが、そのボクシングがハッキリとできたのは初回だけだった。

 鈴木の猛進は相変わらずだったが、左へ回っていく黒木に対し、右で追いかけることを封印。黒木の右サイドにピタリとくっつきながら、逃げていく黒木を左フックで追いかけたのだった。

 これが浅くだが、黒木の顔面を捉える。ヒットしないときは、左腕で黒木の首を巻く。巻いたと同時に右でちょこちょことボディーを叩く。黒木はこのホールディング、引き回しに集中力を削がれた。激しい揉み合いの中で束ねていた髪の毛がほどけ、邪魔になるというアクシデントも再三だった。

 しかし、レフェリーは鈴木の行為をスルーし続ける。黒木の髪の毛についても中断して束ね直させることもしない。この試合をしっかりと裁く意識の薄さを強く感じた。おそらくジャッジ三者は自発的に心の中で鈴木に減点を課していたのだろう。

 低く入ってくる鈴木に対し、黒木は左ストレートだけでなく、アッパーカットで迎え打った。カウンター気味に捉えることもあったが、鈴木の前進力に威力を削がれてしまう。鈴木の反則行為をレフェリー同様にスルーしたとすれば、彼女の左フック、入ってからコツコツと積み重ねるボディーブローを評価したとしても不思議ではない。

 黒木は左にのみこだわりすぎた。右はパンチらしいパンチを出せなかった。鈴木の入り込みがそれをさせなかったという面もあるのだろうが、止めようと伸ばした右に左フックを被された。また、左を打つ際の右グローブの位置も甘かった。

 ボクシングの上手さでは断然黒木が上。そのボクシングを自分の戦力でいかに潰すか。壊すか。それを考えた末の、反則も織り交ぜた鈴木のハチャメチャ・スタイル。だが、そればかりではなかった。左と右の戦いに敗れた前回の反省も踏まえ、攻略法を考えて左フックを用意していた鈴木。ボクシングを壊すという部分は決して褒められないが、創意工夫の跡は窺えた。

 ホールディング、髪の毛の乱れ、さらには頭突きと、黒木は心理面を壊されかけたものの、なんとか盛り返した。しかし、どんな相手であっても、自分のボクシングを貫き通すのが、強いチャンピオンだ。この日の鈴木に明白に勝つにはどうしたらよいか。それを考え、励むことがまた進化につながる。

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