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【ボクシング】大観衆の熱気を鎮めてしまったオコリーの“石橋叩き”戦法

☆3月25日(日本時間26日)/イギリス・ランカシャー州マンチェスター・AOアリーナ
WBO世界クルーザー級タイトルマッチ12回戦
○ローレンス・オコリー(イギリス)チャンピオン
●デヴィッド・ライト(ニュージーランド)1位
判定3-0(116対112、119対109、117対110)

 おなじみ『スウィート・キャロライン』の大合唱に出迎えられたオコリー。だが、試合が進むごとに、場内に燃え盛っていた熱気はどんどんと鎮火していき、前半から中盤にさしかかるころにはすでにセコンドの声(しかも挑戦者側)だけが虚しく轟くような状態になってしまった。

 試合を支配していたのは、スコアが示すとおり、間違いなくオコリーだった。けれども、ブーイングこそ聞かれなかったものの、満員の観衆を失速させてしまったのもまた王者だった。ブーイングは期待の裏返しと受け取れば、静まり返った場内の状態はかえって残酷だった。

 スタートから圧勝を思わせていたのもマイナス要因だったかもしれない。オーソドックス同士の対戦ながら、右へ右へと立ち位置をずらしていったオコリーは、長いジャブから右のオーバーハンドを決め、さらには右ストレートをボディーに突き刺した。両腕のガードを高く掲げながら立つ挑戦者ライトを攻めるには、極めてスタンダードな攻撃パターンだった。

“グレート・ホワイト”の異名を持つライトは、間合いを詰めて強打を打っていきたい様子。だが、オコリーが伸ばす左腕に邪魔されて、距離を詰めていくタイミングをどうしてもつかめない。これを外していく術を持たないのか、それとも意識のほうが強くなってしまったのか、入り込む意思を感じさせず、偶然に至近距離の戦いになったときだけ、クリンチ際にパンチをねじ込もうとするのみ。この時点で、1位の指名挑戦者とはいえ、力量差ははっきりと表れていた。

 レフェリーに注意を受けようとも、“打つ”でなく“伸ばす”左腕でライトを邪魔し、距離をつかんでいたオコリーだったが、続けて打ってほしい右がなかなか出てこない。打ってもボディーストレートで、これも遠い距離から腰を引いて打つような状態だから、ウェイトは乗らない。中盤からは「右拳を痛めているのでは」と思わざるをえないほど顔面への右を打たず、打ってもフォロースルーの利かないもので、明らかにジャストミートを避けていた。

 静まり返っていた場内がようやく沸いたのは10ラウンド。ライトの左ジャブがオコリーの顔面を捉えると、これが着火させたのか、ワンツーのダブルを打ちこんで、ようやくライトを後退させてコーナーに詰めた。

 どうにも噛み合わない両者に、ボブ・ウィリアムス・レフェリーも業を煮やしていた。7ラウンド、9ラウンドと両者を呼び寄せて注意を与えていたが、こういう展開を作ってしまったのは、オコリーのクリンチ、ホールディングだった。それをわかっていたウィリアムス・レフェリーは11ラウンド、とうとうオコリーに減点1を与えた。すると、この中断明けにオコリーはワンツーを決めてライトにダメージを与えてみせて、2度目の大歓声を得たが、オコリーに倒す気はなかったようで、最終回もフットワークとジャブで流してしまった。

 近年名声を得るシュガーヒル・スチュワード・トレーナーもインターバル毎に檄を飛ばしていたものの、オコリーは最後まで爆発しなかった。新たなプロモーション『BOXXER』との契約初戦だったが、不安だらけの船出となってしまった。

《Sky Sportsライブ視聴》

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