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【ボクシング】倒し屋マティアス“決闘”制して空位の王座獲得

☆2月25日(日本時間26日)/アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス・アーモリー
IBF世界スーパーライト級王座決定戦12回戦
○スブリエル・マティアス(プエルトリコ)2位
●ヘレミアス・ポンセ(アルゼンチン)1位
TKO5回終了

 出だしからスムーズにロングジャブ、右ストレート、左アッパーカットの連打を叩きつけていったポンセに、マティアスはカバーしながら防戦状態。反撃の様相も示さず、このままフィニッシュまで持ち込まれてしまうのではないか。そんなふうに思った観戦者も多かったのではなかろうか。

 初っ端から頭をくっつけ合った超接近戦。しかし、これがいつものマティアスの戦い方だ。2ラウンドに入ると、マティアスはポンセに押されながらも敢えて無理に押し返さずに、ショートブローをコツコツと返していく。ポンセの強打に晒されながら、決して心を揺るがさず、強打に強打で応じるということをしない。押されれば押され、引けば前に出る。流れに逆らわずゆるやかに。そうしながら、ショートブローの回転を上げていく。体の動きも滑らかになっていく。打撃戦、決闘という見た目は変わらぬものの、3ラウンドに入ると、両者の心の在り様は、完全に逆転していた。4ラウンドには、もっとも得意とする左フックを的確にヒット。すると今度は左フックの強度を上げて、ポンセの顔面を大きくのけ反らせた。

 打てば当たる距離。マティアスのカバーはガッチリとしているものの、連打を叩きつける過程で、ヒットも奪える。ポンセの心は「強く打つ」思いに支配されていた。初回のスムーズさから、徐々に力みの目立つ連打へと変化。打ってもたじろがないマティアスに、気は焦っていた。そこをマティアスは突いた。

 5ラウンド終盤、右アッパーでボディを狙うポンセに、マティアスは左フックをカウンタ―。これで大きくグラついたポンセに、マティアスが連打で襲いかかりダウンを奪う。かろうじて立ち上がったポンセは、左目上も腫れ、ダメージも明らか。ゴングに救われたものの、セコンドは「ノー・マス」とマーク・ネルソン・レフェリーに進言。6ラウンド開始に応じなかった。

 肉を切らせて骨を断つ。大雑把に言えば、マティアスの戦い方はいつもそう。そのうちにそのまま攻略されてしまうのでは、という不安が付きまとう戦い方ではある。だが、蜜のような甘い香りを漂わせながら、相手が吸い寄せられると蟻地獄に転じる。そういう仕掛け、恐ろしさが横たわる。そして、それこそがマティアスの倒し屋たるゆえん、人々を惹きつけるフィニッシュパターンなのだ。

☆2月25日(日本時間26日)/アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス・アーモリー
ウェルター級10回戦
○ジャマル・ジェームス(アメリカ)WBA10位
●アルベルト・パルメッタ(アルゼンチン)
判定3-0(99対91、98対92、98対92)

 長身の元WBA王者ジェームスが手数で圧倒。懐の深さ、距離の遠さを駆使したアウトボクシングを最初から最後まで貫いた。

 しかし、イスマエル・サラス・トレーナーを背後に従えるサウスポーのパルメッタは、無理に距離を詰めずに虎視眈々と右フックのカウンターを狙い、再三ジェームスを脅かした。ジェームスはひたすらに連打を出し続けることで、それを回避し続けた。
 パルメッタは右フックでボディを叩き、これもジェームスを嫌がらせた。パルメッタは左ストレートでボディを叩ければ、もっとジェームスを苦しめることができただろう。が、ジェームスの右強打が邪魔になっていた。左のカバーリングが上手く、ジェームスもなかなかクリーンヒットを奪えなかったが、パルメッタの左腕だけはガードで釘づけにすることができた。

 終盤に入り、パルメッタもギアを上げて何度もジェームスにロープを背負わせたが、ジェームスのボディワークが冴えて、連打も効果を上げなかった。
 最初から連打を打ちまくってきたジェームスは、7ラウンドには明らかに息が上がっていたものの、連打のリズムは急激に失速することはなかった。

☆2月25日(日本時間26日)/アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス・アーモリー
スーパーライト級10回戦
○エルビス・ロドリゲス(プエルトリコ)
●ジョセフ・アドルノ(アメリカ)
判定2-0(94対94、95対93、97対91)

 両者まったく手を出さない初回を終え、サウスポーのロドリゲスがプレス、アドルノがおびき寄せるという展開がかたどられた。

 引きながら右ストレートのボディを決めるアドルノは右へ右へと入りながら、ロドリゲスの右に左フックを合わせる。アドルノのカウンター戦法に、ロドリゲスは戸惑いを見せていた。
 6ラウンドにはアドルノの左フックがカウンターとなって、体を大きく泳がせたロドリゲスは上体をロープの間から突き出してしまう。しかし、ジョン・ショーリー・レフェリーはカウントを数えなかった。

 続く7ラウンド、左ボディアッパー(これはローだった)を見せておいての右フックでアドルノにダメージを与えたロドリゲスは、一気に連打でしゃがませた。が、立ち上がったアドルノは、必死のカウンター狙いでロドリゲスを跳ね返す。

 常に左からの攻撃で攻勢を印象づけていたロドリゲスだが、アドルノの巧さに何となくもやもやを抱えながら戦い続けていたようだった。がしかし最終回、コーナーにアドルノを追い込んで連打。左アッパーはアドルノがグローブでキャッチしたものの、右足を滑らせてダウン。レフェリーはカウントを数えるという、ロドリゲスにとってはラッキー、アドルノにとっては不運が重なった。

 2度のダウンがありながらドローというジャッジがいたということも、この試合を象徴していた。常にアグレッシブさを示したロドリゲスだが、ペースはアドルノが握る。アドルノが自ら仕掛けるボクシングを見せていれば、勝敗は違った形になったかもしれないが、それぞれが自分のボクシングに徹したということなのだろう。

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