【ボクシング】考える間を与えずにリズミカルに攻め落とす。栗原慶太が2回TKOで王座奪還
☆3月4日/東京・後楽園ホール
OPBF東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦
○栗原 慶太(一力)6位
●千葉 開(横浜光)チャンピオン
TKO2回2分7秒
開始ゴング前、逸る千葉がリング中央に出てきているのを染谷路朗レフェリーは2度制した。しかし、いざ試合が始まると、ススっと距離を詰めてスムーズなワンツーで攻めていったのは栗原だった。
立ち上がりこそ足に緊張感が若干見えたものの、上体のリラックスぶりが目を瞠る。千葉はこの右に左フックを引っかけようとしたものの、栗原はしっかりと右腕でカバー。そしてこれもまた滑らかに左ボディブローを突き刺した。
栗原の攻撃は実にシンプルである。左ジャブから右ストレートのワンツー。これがしっかりとベースにある。そしてワンとツーの合間に若干の“ため”を作るもの、ジャブをダブルで突いてからの右、ツーステップを入れると同時に左を突いての右と、ベースを少しずつバラしていく。さらにあくまでも“見せるための”右アッパーを織り交ぜるのだから、すっかり立ち遅れてしまった千葉は、初回にして完全に混乱状態だったろう。
栗原は、まるでミット打ちでもするかのようにリズミカルに手を出していく。対照的に迷いが微塵もなく、基本のワンツーを力感なく打ってからの強度を増した左ボディブローを叩き込む。すると千葉はこのボディが早々に効いてしまい、伸びるパンチを打ち返せなくなってしまった。
2ラウンド、千葉が警戒心を持ちながら、恐る恐る放ったであろう中途半端な左に、栗原は右をクロスさせる。そして初回にツーステップと目のフェイントを入れて顔面に打ち込んだ右とは別パターンも披露した。ツーステップからの右ボディフック。顔面もボディも意識させられ、がんじがらめになった千葉が、やはり迷いながら出した左フックに、迷いなき栗原の左フックが合わさる。どちらが優るかは、言うまでもなかった。
アゴを射抜かれた千葉は、ガックリと腰を落としかける。栗原の追撃が飛ぶ。千葉はロープ際にしゃがみ込む。立ち上がったものの、足元はふらついている。
ここでようやく“リミッター”が外された。かつて暴れまくってきた倒し屋・栗原が登場する。千葉はガードを上げて固まるのみ。連打の中でふたたび左フックがヒットして千葉がガクリとなったところで、染谷レフェリーが試合を止めた。千葉に反撃機を与え、それがないと冷静に判断した末のナイスタイミングだった。
「速攻」という表現は、あらかた的を射ているが完全ではない。栗原自身には、早い回で攻め落とそうという意識はなかったのではないか。ダウンを奪うまでの姿勢がその証拠。とてもリラックスしており、決して力づくでなく、流れるようだった。千葉がもし別の手立てでしのいだとしても、この後もスムーズに攻め続けていたことだろう。
自らの最大の武器である「攻撃力」を、よりシンプルに考えて放流する。そして、それで千葉に手を出させない。千葉に考える“間”を与えない。
すべての歯車がガチっと噛み合って回転した。ここにきて、また「ボクシングの奥深さ、おもしろさ」を味わったかのような、栗原の見事な圧勝劇だった。
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