【ボクシングコラム2023-vol.9】40年前のボクシング漫画体験

 昨日ジェイク・ポール(アメリカ)を観て「海道卓」を思い出したら、脳みその奥に仕舞い込んでいた“いろいろ”が、わさわさと雪崩れ始めて止まらない。あの頃の記憶が一気にフラッシュバックしたのだった。

 1980、81年、昭和55、56年のことだから8歳9歳のこと。それ以前のボクシング漫画といえば不朽の名作『あしたのジョー』があるが、矢吹丈は一世代前の人たちのもので、自分は後追い。なので、本当のリアルタイム体験は『がんばれ元気』なのだった。

 野性溢れるジョー(でも、どんどん成長して優男になったよね)にハマって、「豚に乗って快走してみたいなぁ」と考えていた少年は、ジョーとはまた対照的に“いい子ちゃん”(ちっちゃい頃はやんちゃだったけど)の堀口元気くんにも惹かれた。当時の自分が「聞き分け良い子だった」かどうかはまったく自信ないけれど。

 後追いでジョーのコミックス20巻を集めたという実例が、元気にも波及したのかもしれない。当時『少年サンデー』で連載されていたが、それを読む気持ちは封印し、コミックスが出たら買う、というパターン。これは漫画にかぎらず、連載小説なんかもいまだにそう。「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものである。

 とうちゃん、かあちゃん、じいちゃんばあちゃん、関拳児、芦川先生、三島さん。火山尊、石田ともこちゃん、のぼるくん、ゴステロ、海道、そして露木さん……。
 登場人物それぞれの相関が濃厚で、一つひとつのエピソードを思い出したら、加速してしまいとめどがない。そしていま51になって思い返しても、ずいぶんとマセたガキだったなぁと自分で思う。

 いったい、何回読んだだろう。いわゆる「大人」になってからは読んだ記憶がないのだから、もうかれこれ四半世紀は読んでないと思う。けれど鮮明に憶えてる。特に、石田ともこちゃんが元気の部屋で服を脱ぎだしちゃうところと、関拳児戦前に芦川先生とドライブする場面。あれが性への目覚めだったんだろうなきっと。『元気』読んで同じようになった少年、全国に何人いるんだろう。お~い、みんな元気にやってるか~?

 記憶は湯水のごとく溢れ出してきたのだが、もう、居ても立ってもいられずに、天袋に仕舞い込んであるコミックスをがさごそと漁ってみた。ジョーと元気と『ろくでなしBLUES』は、何べん引っ越そうが、ずーーーっと持ち運んでいるのである。

 色褪せてボロボロになりかけた重たい段ボールを、汗をかきながら慎重に引っ張り出す。ジョーはあった。アニメ版『2』のコミックス全11巻もちゃんと。ん! ジョーカード集めた冊子もある! よし、元気もちゃんと28巻全部ある。特別ムックもあるぞ! いや、でも『ろくでなし』がまさかの20巻までしかない。あとの22冊は何処に? まさか佐賀の家に置いてきたまんまか? いや、そんなはずないんだけどなぁ。

『ろくでなし』は大学んときにハマって、吉祥寺に住んでしまったほど。大人になってからは『バガボンド』。これに『はだしのゲン』と『巨人の星』が入る6作が、私の漫画体験のすべて。『キャプテン』はアニメのみ。アニメといえば『未来少年コナン』だ──って、ボクシングから逸脱しちゃってるけど。

『はじめの一歩』は次々世代の人たちのものかなぁ。『一歩』を読んでボクシングにのめり込んだ人たちの話も聞きたいな。それこそボクサーになってしまったという“正統派”も含めて。いまもまだ続いてるんだもんねぇ。ホント凄すぎる。

『あしたのジョー』はもちろん永遠の名作だけど、いまとは時代が違いすぎるから、ちょっと掴めないかもしれないな。でも『がんばれ元気』はきっと、いまの若い人たちが読んでもスッと入っていけるだろうし、感情移入もできると思う。それに元気って、女性読者も多かったんだよなぁ。石田ともこちゃんとか芦川先生の気持ち、痛いほどわかったんだろうね。

 自分は元気になりたかったけど、当時はのぼるくん、いまは山谷さんがぴったりだなって思う。いまこの年で読んだら惚れるのは三島さんかな。そういや海道の変化していき方って、ジョーと似てるなぁ。陽気なあんちゃんから寡黙な人に、とか。……って、いやぁもう止まんねー。

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