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小さな物語。

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掌編・短編集。
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#傘

黒い傘

黒い傘

 玄関の傘立てに置き忘れているあれに、私はだいたいの見当をつけていた。
 数週間前、母の客として来ていたあの男のひと。白髪や無数の浅い皺、それらに年齢を感じさせるものの、こちらに向いた時の表情は、子供のそれのように純粋なものだった。母は私に、挨拶しなさい、といって、私はただ頭だけを下げたけれど、男のひとは「どうもすみません。勝手にあがってしまって」といって、席を立とうとまでした。母は少しうろたえて

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