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小さな物語。

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掌編・短編集。
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2022年1月の記事一覧

【短編小説】彼の身の上話【後編】

【短編小説】彼の身の上話【後編】

「ある日、僕が彼女の家に……、勝手に押しかけたときがあったんです。とくに豪華なところでもなく、彼女の家は普通の4階建てマンションの2階でした。何度か彼女のあとをつけたことがあって……、まあこれは置いときましょう。彼女がドアを開けて、僕の顔を認めたとき、一瞬で彼女の顔が凍ったのを覚えています。あのとき、僕はすごく傷つきました。あんなに冗談を言い合って、お互いさらけだしあって、愛し合っていたのに。どう

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【短編小説】彼の身の上話【前編】

【短編小説】彼の身の上話【前編】

 霧のような小雨で街が白くけぶるなか、時計台の前に傘を差さずにたたずむ彼の姿は、さながら映画の主役みたいにさまになっていた。遠目からでもわかる、質のよいグレーのチェスターコートに黒いタートルネック、下は濃紺のパンツを合わせて黒いスニーカーを履いていた。センター分けにした長い前髪から、わたしの姿を認めたとき、彼はどう感じただろう。女として、ではなく、身の上話をする相手として。
「――すぐわかりました

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【短編小説】ダイヤの原石

【短編小説】ダイヤの原石

 クリスマスが来る前に、一度俺の部屋に遊びに来ないか? と大原くんから誘われた。去年授業で編んだ、ボコボコした黒いマフラーでその口を隠しながら、大原くんはわたしの顔をまともに見れず、反応を怖れながらおずおずと提案した。意地悪なわたしは、なんで? と聞き返す。大原くんは、それは、と言い、視線を泳がせためらいながらも、またマフラーを押し上げて口を隠し、堂々とキスがしたいから、と恥ずかしそうに自白した。

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