マガジンのカバー画像

小さな物語。

53
掌編・短編集。
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

鮎の骨

鮎の骨

 女友達と行くショッピングモールには疑ってかかるのに、意中の同性と行く一泊二日の温泉宿には警戒しないのが俺には不思議でならなかった。

「これ、ほんとに鮎か? こんな小さかったっけ?」
 皿に乗っている鮎の塩焼きを、俺がいぶかしげに箸でひっくり返すと、田原は「鮎ですよ」といって、黙々と骨をとる作業に取り組んでいた。指で頭を押さえながら、きれいに骨を取り除く。じっとその作業を眺めていたら、田原が俺を

もっとみる