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小さな物語。

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掌編・短編集。
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2020年8月の記事一覧

その手を離さないで【後編】

その手を離さないで【後編】

 雨は明け方まで続いていた。
 その間、下着姿のわたしの背中に、裕樹くんの裸の身体が寄り添っている状態で寝ていた。裕樹くんは、ときどき無意識にわたしの身体にさわるので、そのせいで何度か起こされた。でも、隣で寝ている裕樹くんの顔を見ると、まだあどけないのでいらいらすることさえできない。
 5つ年下、と聞いたときは驚いた。裕樹くんに貫禄がある、ということじゃなく、別れたときのあの子と同い年なのか、とい

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その手を離さないで【前編】

 夜が始まってくると、蝉の声が止み、代わりに雨が窓を叩きつける音で部屋が満たされる。することもなくて、本棚から読みかけの海外小説を抜き、開いて数ページだけ文字を追い、また閉じてベッドに身体を横たわらせる。雨音が頭の芯を震わすのを感じて、それからまた本を開く。そんなことを繰り返して、いつも通り夜を過ごそうと思っていた。
 一瞬、カーテンの裏で光が走り、雷がごおんと音を立てた後、部屋のインターフォンが

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