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小さな物語。

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掌編・短編集。
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2019年11月の記事一覧

冬の死

冬の死

 冬が巡ってくると、君を思い出す。君はたしか、冬の最中に生まれたくせに、冬のことを嫌っていた。理由は「なんとなく」で、「なんとなく……」といったあとに、「死の気配がするから」と真実味を持った声でいったのだった。なんとなく、といったのは、その本音を少し濁したかったのだろうと思う。

 たしかに君は、冬が近づくと、とたんにわたしと会う頻度がぐんと下がった。君のことを嫌ったとかそんなんじゃないんだ、とい

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