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小さな物語。

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掌編・短編集。
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2019年3月の記事一覧

さくらという少女

さくらという少女

 その少女はさくら、といった。
「ほんとうは名前なんかないけど、つけるならそれね」
 淡く、儚げに、ふふと笑うと春の風が吹き、さくらの長い髪を持ち上げた。さくらの頭の上から桜の花びらがいくつも散った。春馬はそれを、目の奥に留めた。
 桜の樹にすみついて、四十年だという。
 本当は、天国に帰るはずだったのだが、何かの手違いで桜の樹を守る精になってしまった。春になると、この土地の人がビニールシートや酒

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