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ふじこ
2019年3月31日 11:19
その少女はさくら、といった。「ほんとうは名前なんかないけど、つけるならそれね」 淡く、儚げに、ふふと笑うと春の風が吹き、さくらの長い髪を持ち上げた。さくらの頭の上から桜の花びらがいくつも散った。春馬はそれを、目の奥に留めた。 桜の樹にすみついて、四十年だという。 本当は、天国に帰るはずだったのだが、何かの手違いで桜の樹を守る精になってしまった。春になると、この土地の人がビニールシートや酒