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小さな物語。

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掌編・短編集。
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2016年5月の記事一覧

溺れていたい

溺れていたい

溺れていたい、と直樹君は言った。京子さんと一緒なら、溺死しても構わないとも。

 何寝ぼけたこと言ってんだか。わたしは呆れながらそう返した。けれども、内心まんざらでもなかった。

 直樹君とは一日おきに会っている。平日の昼間にベーグルの美味しいカフェで軽く食事をして、安いホテルで抱き合う。直樹君の若い身体は存分に水を含んでいて、瓜の匂いがする。触り飽きることがない。会う度に直樹君の身体は成長してい

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衝動

衝動

とてつもない衝動だった。
あなたの頬を叩いたわたしの右手には、いつまでも熱が残っていた。
叩かれた後のあなたの瞳の動きをよく覚えている。
暫く敷き詰められたタイルの床に視線を落として、そしてゆっくりとそれを上げた。わたしの方にと。あなたの瞳には弁解の色も何も残っていなかった。ただ、わたしを哀れむかのようにじっと見つめていた。

窓の外は暮れて、深い青色に染まっていた。わたしはあなたの視線に耐えられ

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