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経過勘定を知っていますか?

今回は経理部門内であまり興味をもたれづらい経過勘定をとりあげたいと思い ます。

1.経過勘定とは

経過勘定とは、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、また提供を行う場合に適正な期間損益計算の観点より、実際の現金の収支時期と損益計上の時期が異なるために計上される勘定です。経過勘定は企業会計原則注解5において、前払費用、前受収益、未払費用、 未収収益の4つ定義されています。

前払費用(資産):いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価

前受収益(負債):いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価

未払費用(負債):既に提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないもの

未収収益(資産):既に提供した役務に対していまだその対価の支払を受けていないもの

似たような科目としては、未収金、未払金、前受金などがありますが、これらは厳密にいうと一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける場合以外の例えば、物品の売買などの取引に利用されます。とはいえ、実際の実務において、未払金と未払費用など厳密に区別せずに使用することも多くあり、会社によっては確定債務は未払金、それ以外は未払費用として使用している会社もあります。

2.決算整理仕訳について

決算整理仕訳とは、年度決算の前に月次決算では実施していなかった仕訳を計上することであり、簿記の本などによれば主な仕訳は次の通りです

・売上原価の確定(期首在庫と期末在庫の振替)

・見越し計上や、繰延計上(経過勘定)

・減価償却費の計上

・有価証券の評価、外貨建資産負債の換算

そのため、簿記の勉強だけをしていると、経過勘定の仕訳は年度末の決算整理仕訳でのみ行うと考えがちです。実際、非上場企業で税務基準、現金主義で記帳している会社では、月次決算を行っていないこともあり、年1回の決算整理仕訳で上記のような仕訳を行うことはよくありますし、一部の中小企業向けの会計システムでは固定資産の減価償却費を月次で計上することができず、年度に一括計上するしかないものがあります。

上場会社では、月次決算を行っており上記のような経過勘定の仕訳や減価償却費も月次で計上しているため、年度決算といっても、ほぼ月次決算に加えて、減損や退職給付債務の計算などの本当に一部の仕訳だけをすることとなります。そのため、会計システムにおける伝票区分においても、あえて「決算整理仕訳」として区分せず、「通常仕訳」のみを利用している会社も多くあり、結果として、「決算整理仕訳って何だっけ」と思っている経理部員も多いのではないでしょうか。

3.経過勘定をどこまで細かく処理すべきでしょうか?

2で述べた通り、上場企業では月次決算で経過勘定の処理をすることになり、また上場企業は会社の規模が大きいため、対象となる取引も多くなるため、結果として、管理すべき経過勘定の量が膨大になりがちです。

私自身が以前事業会社で経理に携わっていた時、1円以上の前払費用はすべて月按分するという方針であったため、当初はExcel管理だったものが、Access 管理と変更になり、最後は前払費用だけで数万個となり結果として、情報システム部門にスクラッチで管理システムを作ってもらうことになりました。当然、作業する人員工数も必要ですし、処理を誤るリスクもあるため修正やダ ブルチェックのための工数、例えば、費用配賦部門が組織変更でなくなったり変わった場合の費用負担部門の調整などかなりの追加工数がかかるというデメリットがありました。

決算の目的の1つはもちろん適切な期間損益の計算であるものの、経営の意思決定のための羅針盤となる目的もあり、その目的に沿って考えた場合に1円単位で経過勘定を細かく処理する必要はあるのでしょうか。

実は会計基準では、企業会計原則において重要性の原則というものがあり、経過勘定についても明記されています。(企業会計原則 注解1)

企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。 (中略)

(2) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。

税務上も、この重要性の原則を踏まえ、一定の要件を満たす前払費用は支払時点で一括で損金計上することが認められています。(短期前払費用の特例)個人的には同じ期間損益計算を目的とする固定資産の減価償却でさえ、一般的には20万円未満は一括費用処理していることを考えると、少なくとも経過勘定についても20万円未満について経過勘定とする必要はないのではないかと考えます。 昨今、経理部門の負担の重さ、忙しさをよく聞きますが、経過勘定のような細 かいことからこつこつと効率化することにより、意外と業務は減るのではないでしょうか。(作成日:2019年5月10日)

■執筆者:株式会社ビズサプリ パートナー 泉 光一郎

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