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他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング) 単行本 – 2019/10/4

「技術的問題」と「適応課題」というのは、ハーバードケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ氏がリーダーシップ論を展開する中で用いた術語だったと記憶しています。物事を進めていこうとして困難に直面したとき、大きく分けて二つのアプローチを使い分ける必要があるという話でした。本書の中心テーマは“対話”ですが、人が集まって協力し合う場面で話が頓挫してしまうのは、上記2つが混ぜこぜになっているからだという話から始まります。そして、特に「適応課題」という考え方は一般に馴染みがないので、このあたりを具体的に状況を思い浮かべながら解説してみようというのが内容になっています。

言葉で説明することがなかかな難しいテーマに果敢に挑戦されたということもあり、HRアワード2020の書籍部門で最優秀賞を獲得しました。多くの賞賛を得る一方で、「ありきたりな内容では?」「あまり響かなかった」というレビューコメントも散見され、ますます言語化の困難さを浮かび上がらせることになったようにも思いました。

実際、書いてあることは「まぁ、そういうことだろうね」という、一見新鮮味のない話に読めます。しかし問題は、じゃあこの考え方に沿って具体的な行動を起こせているんですか?というと、言うは易く行うは難しの世界なのです。

数年前、組織改革に取り組みたいというご相談があり、とある会社を訪れたときのことです。企業文化の中にどう対話文化を育てていったらよいかという意見交換の中で、社長さんが、わが意を得たかのように話し始めました。「なにより傾聴が大事だという考えには大賛成で、私もずっとそう思って部下たちに言い聞かせてきたんですよ」と。そして、すぐさま横にいる人事部長に「言った通りだろ? グズグズしていないでどんどん進めなさい!」と一喝。そして、私と目が合い苦笑いするしかない人事部長さん…という図。これが非常に標準的な日本企業の風景です。

こんなことを書いている私だって、どこまでちゃんと体現できているかは必ずしも自信満々ではありません。ということで、私にとってカギとなった本書の学びは、(少し飛躍しますが)職場のあらゆる場面において“謙虚さ”を失わずにいることの重要性でした。


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