ドラッカー『非営利組織の経営』第II部「マーケティング、イノベーション、資金源開拓」を読み説く
お読みいただきありがとうございます。第I部に引き続き、第II部を読んでいきます。
第I部はこちら
第II部の日本語訳でのタイトルは「マーケティング、イノベーション、資金源開拓」となっていますが、これも第I部と同じように原文は違います。原文では、”From Mission to Performance : effective strategies for marketing, innovation, and fund development” となっていまして、直訳すると「ミッションからパフォーマンスへ:マーケティング、イノベーション、資金開発のための効果的な戦略」となります。つまりは「戦略」の話です。実際、第5章のタイトルは「非営利組織の戦略」となっています。
第2章の冒頭に、非営利組織にとって戦略がいかに重要か、ということが書かれています。引用してみます。
第I部でも行動の重要性を主張していたドラッカーですが、ここでも行動を強調しています。リーダーシップは行動であり、戦略も行動である、というわけです。
さて、戻って第1章から見ていきましょう。
第1章 マーケティングと資金源開拓
この第1章のタイトルの日本語訳も英語版と違います。原文では、”Converting Good Intentions into Results” となっていまして、直訳すると「善意を成果に変える」となります。ちょっとドキっとするような表現ですね。
ドラッカーはこの章の冒頭、非営利組織には、プランニング、マーケティング、人、資金が必要と語っています。その上で、プランについては既に述べた、と言っています。これは第I部のミッションに基づいた長期目標と短期の行動計画が必要、と言った話かと思われます。そして人については第III部以降で語るよ、と。そこで、ここでは、マーケティングと資金源開拓について述べるよ、と言っていて、この部分が日本語訳の章タイトルに使われています。
わかりやすくするために、順番を入れ替えてドラッカーの主張を展開してみます。
まず、資金源について。
最後の「募金」のところ、英語では、”donners” になっています。現代風に訳すと、これは「寄付」ということになります。
そしてこれに関して、ドラッカーは理事会の重要性を訴えています。
そして、理事会の役割については、もうひとつある、とドラッカーは言います。
実は理事会については、第IV部で人事について書いていて、そこでも出てきます。ここでは、こういう理事で理事会を構成する必要がある、という話に止めますが、要するに、お金の調達と運用について責任を持つ人を理事にしなさい、ということを言っているように思えます。
第2章 成功する戦略
ということで、第2章は、なんということでしょう。成功する戦略について書いているようです。これは頼もしい!
改善のための戦略
1.人 2.資金 3.時間
定性的な目標設定が必要
戦略のステップ
1.目標 2.コミュニケーション 3.ロジスティクス 4.スケジュール
イノベーションのための戦略
・うまくいっているときに変える
・外の世界の変化こそ機会
・予期せぬ成功は行動への呼びかけ
イノベーションの成功要因
・変化を機会として見る
・責任者を探す
・戦略をもつ
犯しやすい間違い
・試行段階を飛ばす
・自分で調べない
・独善
・根本的な見直しをしない
戦略がうまくいかないときの鉄則
もう一度行う → それでもダメなら撤退する
この章に書かれていたことを簡単にまとめました。どちらかというと、成功の秘訣というよりは、これらはチェックリストとして使えそうです。
第3章 非営利組織のマーケティング戦略 │ フィリップ・コトラーとの対話
ここではコトラーによる解説部分のエッセンスを抜き出しておきます。
マーケティングで重要なこと
・マーケットリサーチ
・セグメンテーション
・ターゲティング
・ポジショニング
・仕事の設計
マーケティングの目的=販売を不要にすること
差別化で重要なこと
・セグメンテーション
・ターゲティング
・ポジショニング
マーケティングの順番
・マーケットリサーチ
・マーケットを分類し、ターゲットを定める
・ターゲットに合わせた方針、方法、プログラムをつくる
・プログラムをターゲットに知らせる
第4章 資金源の開拓 │ ダトレイ・ハフナーとの対話
ドラッカーによるまとめの部分を引用しておきます。
・資金源開拓とは、人間の育成
非営利組織は資金源開拓によって支持層を得ている
理解と支援を築いている
人に満足をもたらしている
・資金源開拓は、ミッション、マーケット、寄付者、ボランティア、成果からのフィードバックに基づいた活動でなければならない
第5章 非営利組織の戦略 │ まとめとしてのアクション・ポイント
ここまで途中、キーワードで整理してきましたが、結論部分だけは再び文章でまとめてみたいと思います。
・非営利組織にとって、サービス受益者のみならず、寄付者もボランティアも顧客である。彼らをミッションに結び付け、満足を与え、成果を出す。これが非営利組織にとっての戦略であり、マーケット戦略である。
・非営利組織が成果をあげるには、改善戦略とイノベーション戦略の両方が必要である、と。そして、イノベーションのための戦略を成功させるには、機能しなくなったもの、貢献しなくなったもの、役に立たなくなったものを廃棄するシステムが必要である。
・これらの戦略はマーケットリサーチから始まる。
・非営利組織の戦略で次に重要なことは、人のトレーニングである。それはスタッフのみならず、むしろ、ボランティアのトレーニングの方が重要である。
以上になります。ちなみに、この人に関しての話は、第IV部と第V部でも詳しく語られます。
第II部はこの辺で。第III部に続きます。
現場からは以上です。この記事が面白かったという方のスキ、何か言いたいという方のコメントもお待ちしております。
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