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ダメダメな会議の再生案

体調を崩していて、一ヶ月の間、定例のオンライン会議に耳とチャットだけで参加することになりました。もともと私は、前のITベンチャー企業のトラウマで、会議というものが苦手で、とっても意味がないものだと思っているので会議が好きではないのだけれども、この会議、実は、ここ半年くらい、とっても憂鬱なものだったのだけれども、それをどうすれば改善できるのか、よくわからなかった。ただ、今回、結果として一ヶ月間オブザーブすることになり、あ、こういうところがダメで、こういう風にすれば良いのかな、という方策が見えてきたので、実際に導入するかどうかは別として、アイデアとして記録しておきます。

前提条件として、この間に、ICF(国際コーチング連盟)の定めるチームコーチングのコアコンピテンシー(能力基準)について研究する機会があり、その中で重要視されていることを反映しているので、もし、そうじゃない会議をお望みの方は、参考にならないかもしれません。(ちなみにこの研究についてはこれから文章化していくので、いずれ、ここではなく公式な場でお披露目できると思っています。

と、いうことで、ここで意図している会議というのは、とってもクリエイティブな会議をイメージしています。参加者が様々な知見や意見を持ち寄って、そのシナジー効果で、今出来ていること以上の行動を選択できるような会議。結果として予想以上、能力以上の成果が出せることを目標としています。

ですので、トップの意見を下におろしたいとか、無理な目標数字を部下に押し付けてダメ出ししたいとか、とりあえず自分の責任を回避して他人のせいにできればいいや、という会議をご希望の方は、まったく参考にならないかと思います。

で、そうではない会議がなんとなくうまくいっていない場合には、結論から言えば、会議の現状把握と意識共有。これをやることが大事、という話になります。以下、つらつらと、ダメダメな会議を再生するために、会議中にやったら良さそうな、具体的なアクションについて書いていきます。

1.会議の注意事項(グランドルール)を読み上げる

まず、注意事項(グランドルール)です。まず、前提条件として置いて欲しいのは、人はそれぞれ違う世界に生きていて、違うものを見て、違うことを感じている、ということです。その上で、人と意見を交換することはよくても、自分の考えを変えて人の意見に従うことは、どんな人にとっても普通は嫌なことです。ひとつだけ違う場合があるとすれば、それは、その違う意見を受け入れることが、自分にとってメリットがある、と感じられる場合だけです。

ただ、件の会議でもそうなのですが、正しいことを言えば、それは従うべきだ、と思っている方も多く、この方の態度は大抵の場合、他人に対しては暴力的に感じられます。たいていの場合、その「正しいこと」も、その方の歪んだ認知で捉えた、「部分的に見れば正しいこと」だったりするので、それが厄介。そういう人が誰かの話を集めてきて、自分の意見を強化したりするので、それも厄介。

ということで、人の意見を変えさせようとすることは暴力以外の何ものでもない、自分が正しいと思っていることは限定的な自分の認知だけの世界で、そこから抜け出すことは原理的に不可能。言葉すらも自分と人ではその指し示すものが違う。そんな感覚を持つことにより、誰も傷つけない会議ができるんじゃないかな、と思ったのです。

ということで、それをルール化してみました。これじゃなくてもいいのですが、こういうルールを、最初に読み上げると良いかと思います。

・他人が話すことについて、自分はそれがわかっている、と思わない。共感表明は自分が話したいことを代弁させてマウンティングしている可能性を常に疑う。
・誰かが話していることについて、何を言っているのかわからないと思ったら素直にわからない、という。話していることの理解が及ばない場合には、別に自分が劣っているわけではないので、わかっていると思っている人に補足情報の提供を求める。
・意見を表明するときには、私(自分)はこう思う、というIメッセージで話す。自分が正しいと思っていることは限定的な自分の認知だけの世界。
・言葉は基本的に他人への暴力装置。悪意がなくても人にダメージを与える可能性がある。会議の会話の中で”痛み”や”圧”を感じたら、その感じたことを素直に表明する。その言葉が刃物だったのか鈍器だったのか、それも発し手にフィードバックする。
・ある話が終わったと感じた際には、すぐに先に進もうとしないで、何が決まったのか、それは全員の納得を得られているのか、誰も違和感や不安を感じないか、ということを確認し、参加者全員の理解と納得度を共有して終わる。

2.議題を精査する

最後のところ、実はとっても大事ですが、そのためには準備が必要です。

定例会議の場合、「何を話すか」というテーマが出てくることが多いかと思うのですが、これを疑問形にして、最終的にこの会議で何を決めたいのか、ということをはっきりさせてから話をしないと、話があっちこっちに行って、結局、何の話だったのかがわからなくなる、ということが往々にしてあります。それは、テーマという括り方が広すぎるからです。対談やトークセッションなら話が広がっていいのですが、会議でやるのは非常に無駄。

ですので、実は、会議で話し始める前に、こういう仕掛けも必要だと思っています。

・最初に会議の議題項目を出した際に、その議題を精査する。その議題は組織全体のどこの部分の話をしているのかを全体マップの中で確認し、最終的に何が目的で、そのためにこの会議で何をどこまで決めなければならないのか、ということを、まず、確認し、会議の参加者メンバー全員で共有し、合意を取る。
・議題については、事前に資料を準備する。ただし、この資料は提案ではなく、この議題の話を進めるにあたっての前提として必要な知識を共有するための資料であること。
・その場で出てきた議題についても、会議中に前提条件を文字化・資料化し、内容を合意してから議論を始める

3.会議そのものについてのアンケート(アセスメント)

そして、これは定例会議であれば毎回でなくてもいいのですが、例えば、月に一回とか、会議そのものについてのアンケート(アセスメント)を実施します。

・会議の場での自分の貢献度の感覚をチェックします。事実かどうかよりも、感覚でお答えください。
・話したくないこと、話す必要がないことを除き、自分が話したいと思うことを、実際の会議の場でどのくらい話せたと感じていますか? 100%のうち何パーセントかでお答えください。
・会議時間のうち、喋っていた時間が多い順にお答えください。

このアセスメントをすると、会議を自分の思い通りに進められた、という方のパーセントが高くなるはずですし、また、多くしゃべっていた人の方が高くなるはずです。

もし、そういう結果にならないのなら、仕切る人、喋る人がおとなしくしていた方が、この会議の成果は上がるかもしれません。

さて、ここでまとめてみましょう。


実際の会議では、3のアセスメントをやり、1のグランドルールをやり、2の議題の精査をしてから会議を始める、というのが理想だと思っています。

さて、ここまで書いてきて、自分が会議が苦手とか嫌いとか思っている理由がわかってきたような気がします。

会議って大変ですねー。

最後に、ドラッカーの言葉を引用しておきましょう。

エグゼクティブが直面する問題は、満場一致で決められるようなものではない。相反する意見の衝突、異なる視点との対立、異なる判断の間の選択があって初めて、よく行いうる。したがって、決定において最も重要なことは、意見の不一致が存在しないときには決定を行うべきではないということである。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』P.198

最後に、決定の基礎となった仮定を現実に照らして継続的に検証していくために、決定そのものの中にフィードバックを講じておかなければならない。決定を行うのは人である。人は間違いを犯す。最善を尽くしたとしても必ずしも最高の決定を行えるわけではない。最善の決定といえども間違っている可能性はある。そのうえ大きな成果をあげた決定もやがては陳腐化する。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』P.185-186

会議の前に、意思決定の本質について理解し、ひとりや少数ではなく、メンバー集まって意思決定しなければならない理由は何か、ということをまずは考えて、その必要がないなら、そもそも、会議体そのものを解体してしまった方が良いかもしれませんね。

昔は有効だった会議体も、今では皆の時間を食うだけの意味のない習慣になっているかもしれません。会議体が無くなれば無くなるほど生産性が上がる組織になるのは、「生産性=アウトプットの成果/インプットのコスト」という原理に沿っても、間違いないのですから。

現場からは以上です。

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