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DXプロジェクトマネージャーの憂鬱

プロジェクトマネジメント研修での質問。「DXプロジェクトを進めていくと、自分の仕事がなくなるのではないか、ということで、抵抗勢力となる人たちがいる。質問その1:抵抗勢力をどのように対処すればよいか?質問その2:自分の仕事がなくなるかもしれない、と思っている人達の心のケアをどうすればよいか?」

質問その1の「抵抗勢力にどのように対処すればよいか?」は、ケースバイケースだと思うが、その心構えについては共通するところがあると思って回答した。
① 説明をつくすこと
相手の納得感を高めるためには、言葉を尽くすことが大切。ちゃんと理由を話し、相手の質問には的確に誠実に答えること。感情的なもつれを避けるためには、なるべく事実に基づいた話をするのがベター。コミュニケーションは質が大切。でも、その質が疑わしいときには、コミュニケーションの量で補おう。
② 相手に対してのリスペクトを忘れないこと
抵抗勢力は、今までその組織、その業務を作り上げてきた人達かもしれない。今、やろうとしているプロジェクトは、その人たちやってきた結果の延長線上にあるのだという意識でとりくもう。
③ 相手が抵抗している理由を理解しようと努めること
なぜ、その人はこのプロジェクトに対して抵抗するのか、というと、先が見えないことへの恐怖だったり、不安だったりすることが多い。立場が違うので完全に理解することはできないが、その恐怖や不安を排除しようと努めること。
④ 全員が納得する方法は存在しないと割り切ること。
抵抗勢力の声は聞こえてくるけれど、逆に、支持者の声は聞こえづらい。声の大きな抵抗勢力のその先に、声を上げない無言の支持者が多数いるかもしれない。100%の人に納得してもらうのは不可能。20%80%の法則(パレートの法則)にのっとり、8割の人たちの理解を目指そう。

質問その2の「仕事がなくなるかもしれないと不安に思っている人の心のケア」については、質問その1と重なるところがある。でも、その人たちの不安や恐れを全て引き受けるのは、プロジェクトマネージャーの仕事ではない、とも言えるので、一人で抱え込まないことだ。会社には、階層型の組織があるが、プロジェクトはその階層型の組織の外で動いていることが多い。プロジェクトマネージャーは、抵抗勢力の人たちに対して彼らの業務の評価をしたり、他の役割を与えたりする人事権はない。逆にいうと、その人たちの業務上の役割を決定するのは、プロジェクトマネージャーではなく、階層型の組織にいるその人たちの上司と呼ばれる人たちだ。もしそうなら、プロジェクトマネージャーにできることは限られているのだ。できることがあるとすれば、質問その1であげた、「抵抗勢力への対処方法①~④」と重なる部分が多くなる。

余談だが、「抵抗勢力をどう対処するか?」という質問に対して、もっとも効果があると思うのは、「抵抗勢力を作らないためにはどうするかを考えること。」だと思う。一度、抵抗勢力になってしまうと、気持ちのわだかまりもできてしまい、お互いに素直になるのが難しくなってしまう。一度、こんがらがった糸をほどくのは、非常に難しいので、糸がこんがらがらないようにするにはどうすればいいかを考えるほうが効果的。

私が考えているプロジェクトマネージャーのイメージトレーニングその①は、相手と向き合わないで、相手と同じ方向を見ること。イメージとしては、横に立って、遠くの富士山を一緒に眺めているイメージ。又は、遠くの一つ星の金星を一緒に眺めているイメージ。「横に並んで」というのと、「目線が水平線よりちょっと上の遠く」というのがポイント。向き合わなければ、糸がこんがらがる可能性も低くなる。

とは言っても、プロジェクトに抵抗勢力はつきもの。最後の処方箋は、自分のやっていることを信じるということだろうか。このプロジェクトが、組織のビジョンやミッションに合っている、組織の存在意義に沿っている、お客様へのさらなる価値提供に役立っている、従業員の皆さんの働き方の向上につながっている、と信じることだと思う。もし、これが信じられないならば、自分自身の心が引き裂かれることになってしまう。私自身も「信じるものは救われる」ということを信じたいと思っている。


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