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会議に遅刻してくる人を叱れるか?【人材育成、業務改善】

「OJT研修」などでは、フィードバックのやり方を教える。「褒める」や「叱る」など。テキストを見ると、「叱る」の項目では次のようなワークがある場合がある。「いつも会議に遅刻してくるAさんを叱る場合、あなたならどう叱りますか?」このワーク、自分でやることになったら、かなり戸惑ってしまいそうだ。

第一に、仕事の場で人を「叱る」ということに違和感があるからだ。「叱る」の定義は、「相手をよりよい方向に導くために注意する、アドバイスをする」ということらしいが、まさに私は「注意する」「アドバイスする」という単語を使う。「叱る」という言葉には、多少、叱る側の感情が含まれる気がするのと、「注意する」より若干、語気が強い気がするから。

研修で、「私は仕事では叱るという言葉を使いませんが、皆さんが、叱る場合はどういうときですか?」と質問したら、次のような回答があった。「建設などの現場で、安全が脅かされ、怪我・命の危険があるとき」「ペットショップで、動物をないがしろに扱った場合」などに叱ると言う。これには納得。

第二に、「いつも会議に遅刻してくるAさんに注意をする場合」と言い換えても、まだ違和感がある。これは私の留学経験にもよる。日本人は世界で一番、時間に正確な民族。その日本人である私が、自分の価値観をその地域に住む人たちに当てはめてよいものか、と考えたことがある。(私の2度の留学、どちらも世界的に有名なビーチエリア。どちらのエリアも、授業は時間通りだったけれど、その地域独特の時間感覚がありそう、と感じた。)

なので、このワークに対する私の答えは、「叱る」でも、「注意する」でもなく、まず「理由を聞く」ということになる。「なんで、時間通りに来ないの?」と。これがけっこう難しい。なぜなら、詰問ととられかねないからだ。相手の心のどこかに罪悪感があると、より責められていると感じてしまうらしい。こっちにしてみれば、ただの単純な質問なのだけれど。

理由を聞くとだいたい次の3つのパターンになる。
① 理由はあいまいなまま「今後、気をつけます。」ということ。しばらく様子を見るという対応。
② 「いつも、なぜか会議のことを忘れてしまうんです。」という回答。この場合は、タイムマネジメントに問題があるのかもしれない。応急処置としては、スケジューラーや携帯でタイマーをセットしておき、アラームを鳴らす方法をアドバイス。
③ 会議に遅れてもいいと思う理由を回答。例えば、「この会議に自分が出る意味がわからない。」「皆、遅れてくるので、時間通り行ってもしょうがない。」「会議の最初は、もう知っている連絡事項の再確認だけなので、それが終わるころに参加する。」などなど。
これについては、遅刻してくる個人の問題よりも、会議のあり方そのものの問題なので、会議運用についての改善が必要になる。

「叱る」「注意する」前に、自分の思い込み(価値観)に気づくことも大切。さらに「叱る」「注意する」前に理由を聞いてみると、思いもかけない回答が返ってくることもあるし、それが、改善につながることもある。その機会を自ら逃してしまうのは、もったいないと思うのだ。


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