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大学ファンドの図解

大学ファンドを図解してみました。
この図解は「政策図解」という形式で書かれています。政策図解は、1枚で政策の基本的な情報をモデル化するものです。

追記:
ついに「政策図解」が本になりました。これまでnoteで書いた記事を大幅加筆して生まれました。社会のしくみがみえてくる、50の政策を図解した本です。よければぜひご覧ください!

政策図解第3回記事.001

このようなモデルで、上から対象者の段、真ん中が政策の段、下が実施者の段になっています。

つまり、だれに対して、どのように、なぜ、だれが行う政策なのか、大枠を理解するためのモデルです。今回は大学ファンドのモデルを図解しています。

政策図解第3回記事.002

大学ファンドの背景や現状について文章でも説明しています。まずは図解を先にみて大枠をつかみ、文章を読んでさらに理解を深めるか、文章の方が読み慣れている方は文章から読んだあとに後で図解をみるのもいいと思います。それではどうぞ。

大学ファンド

10兆円規模のファンドの運用益で大学を支援し
世界トップレベル研究大学を創出

政策図解事例マスタS-2

2020年、大学を巡り大きな動きがあった。「10兆円規模の大学ファンド構想」の表明である。これは、政府がファンド(基金)を運用し、その運用益を大学の支援に当てるというものだ。10兆円という大きな額からも、その政策に込められる期待値の高さがうかがえる。

2021年度の日本政府全体の当初予算額は約106兆円だ。これを考慮すると、政府の1年間の予算の約10分の1の額が本ファンドに積み立てられることになる。

実は、大学がファンドを運用することは世界的に見ると珍しいことではない。世界の名だたる大学では大規模な基金を保持しており、その運用益を活用して、研究設備を増強したり、外部から優秀な人材を採用したりといった改革を進めている。例えば、ハーバード大学の基金は約4.5兆円、イェール大学は約3.3兆円だ。

日本の大学も基金を有している大学もあるが、その規模は東京大学で約149億円、京都大学で約197億円とまだまだ小規模なのが現状である。

大学ファンドはそういった日本の大学を変革するための政策である。日本の研究力を世界トップレベルに引き上げ、博士人材をはじめとした優秀な若手研究者の育成を行うことが大学ファンドの主な目的だ。ファンドの支援対象となる大学は、ファンドの運用益を活用し、自大学の研究環境や設備などに投資を行っていくことになる。

具体的な大学ファンドの仕組みとしては、文部科学省が所管する「科学技術振興機構(JST)」のもとに基金(=大学ファンド)を設置し、その基金に政府予算を活用しながら10兆円規模の運用資金を積み立てることとなっている。

実際の運用にあたっては、長期的な視点から安全かつ効率的に運用ができるよう、政府から運用にあたっての基本指針をJST側に示し、それを元にJSTとJSTから運用委託を受ける運用機関がファンドの運用を行うことになる。ファンドの運用益が出次第、大学側への支援を行っていくこととなる。

そして、この「ファンドの運用益を活用して大学向けに支援を実施する」という施策の仕組み自体も、これまでの単年度予算を原則とする国の予算執行システムからして異例な取組であると言える。

安定的な運用が実現されている限り、元本部分は維持され、プラスで生じる運用益が大学に配分されることにもなるので持続的な予算の仕組みの一例でもある。施策の枠を超えた政府予算の仕組みとしても注目したいところだ。

なお、本ファンドに大学が参画するにあたっては、ミッションの見直しや事業成長、ガバナンス改革などのコミットメントを求められるのもポイントだ。

上述した大規模な基金を有するような世界のトップ大学においては、自由な裁量を大学が持つのと引き換えに、組織としてしっかりとしたガバナンス体制を有し、大学としての成長を追求している。

大学ファンドは50年という時限的な措置であり、将来的には海外と同様に、日本の大学が自らの資金を元手に基金を運用する仕組みを導入することが求められる。

これは、優秀な人材や研究基盤を強化するためにも、大学が経営体として事業成長をしていくことが必要になってくるからだ。日本の大学が世界トップレベルの研究力を兼ね備え、日々刻々と変化するグローバル社会の変革を先導することが大学ファンドという異次元のツールの先に描かれている姿だ。

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説明は以上です。

大学ファンドを通してどんな成長が生まれるのか、注目していきたいですね!

今回の記事以外にも、様々な事例を図解で紹介しています。「政策図解シリーズ」というマガジンでこれまでの政策図解の記事がまとめられているので、よければ見てみてください。フォローもしていただけると嬉しいです。

以下、今回の記事のクレジットです。

図解&原稿:沖山誠、近藤哲朗
レビュー:沖山誠、近藤哲朗、中野亜海

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