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パリ協定の図解

「パリ協定」を図解してみました。
この図解は「政策図解」という形式で書かれています。政策図解は、1枚で政策の基本的な情報をモデル化するものです。

追記:
ついに「政策図解」が本になりました。これまでnoteで書いた記事を大幅加筆して生まれました。社会のしくみがみえてくる、50の政策を図解した本です。よければぜひご覧ください!

近年環境問題はますます注目が集まっており、解決に向けて国際的に取り組みが進んでいます。その内の1つの事例が「パリ協定」です。

パリ協定そのものについての概要はもちろん、パリ協定以前の同様の国際的な取り組みである「京都議定書」と比べてどう違うのかも合わせて読み進めていただくと、理解が深まるかなと思います。

それではどうぞ。

パリ協定

気候変動に対処するための国際的な枠組み

パリ協定とは、2020年以降の温室効果ガスの排出を削減し、すでに生じている気候変動に対処するための国際的な枠組みである。この枠組みを合意するための「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(通称COP21)」が、2015年に開催されたパリで開かれたため、この名称になった。

具体的には、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という長期目標について、全ての協定加盟国で合意した。

この取り決めが必要となった背景には、気候変動問題がある。地球全体で経済活動が拡大し、石油や石炭といった化石燃料を消費することで排出される二酸化炭素などの温室効果ガスが増加していった結果、地球温暖化が進行し、様々な問題が引き起こされることが世界中で強く懸念されている。

具体的には、このまま何も対策をしないと、21世紀末には平均気温が4度上昇し、水不足や農作物の減少、海面の上昇など深刻な影響が出ると科学的側面からも指摘されている。

こうした気候変動による問題は特定の国で解決出来る問題ではなく、またどの国も影響を受ける問題である。そのため、これまでも国際社会で気候変動解決のための取り組みがなされてきた。その1つとして代表的なものが1997年の「京都議定書」だ。

京都議定書は、京都で開かれたCOP3での国際的な取り決めである。21世紀初めの気候変動対策の要であった一方、問題点も指摘されてきた。「パリ協定」はこの「京都議定書」の問題点をできるだけ解消しながら作られたため、ここからは両者を照らし合わせながら、「パリ協定」の特徴を明らかにしていきたい。

まず最大の特徴は「パリ協定」が途上国も含めたすべての条約締約国に対して排出量目標の設定を義務付けていることだ。一方「京都議定書」は先進国のみに対して目標設定を義務付けていた。なぜなら、これまでの温暖化を引き起こしてきたのは先進国であり、まずは先進国が率先して対策をとるべき、という原則があったためである。

しかしながら、そもそも2001年に当時世界最大の温室効果ガス排出国であったアメリカがこの協定から脱退していたことや、中国やインドを代表とした新興国の経済成長により途上国全体の世界全体排出量における割合が増加してきたことで、先進国だけでは対策が不十分だと見なされるようになった。

それらの状況を踏まえて、「パリ協定」では改めて世界全体で共通の目標を掲げる仕組みを採用したのである。気候変動対策としては歴史上初であり、それ故に実効性を担保できる画期的な取り決めと言われている。

そして「パリ協定」では参加国によるボトムアップ的なアプローチで各国の目標が策定されていく点も大きな特徴だ。

「京都議定書」では、まずトップダウン的に「温室効果ガスを2008年から2012年の間に、1990年比で約5%削減すること」を先進国全体での目標として設定する。さらに、その目標を各先進国に割り当て、その目標を達成すべき義務として課す。そして、この目標が達成できないと罰則が与えられる、という規定を設けることで、ある種の強制力による削減を目指していた。

しかし、その目標自体に対して、各国の状況を踏まえておらず公平性や実効性に欠けているという指摘があった。そのため「パリ協定」では、各国が自主的に目標を設定してそれを守るように約束させ、達成状況を定期的に報告させる、という参加国主体な方法に変更した。

これによって、まずは協定に参加するためのハードルを低くし、途上国を含めて世界全体で問題認識を共有することを目指したのである。

ただし、この方法も問題がないわけではない。ボトムアップ方式で、かつ達成を約束させるという方式では、各国が取り決めた目標が低くなりがちだということだ。そのため、その目標を各国で達成したとしても、本来世界全体で達成すべき目標が達成されない、という状況になりかねない。

そこで、世界全体の目標達成を目指すために、各国の目標を5年ごとに引き上げることで、最終的には長期目標を達成するように促す仕組みを導入している。この仕組みを、「グローバル・ストックテイク」という。

つまり、広く参加国を巻き込むためにアプローチを変えて協定への参加ハードルを下げただけでなく、長期目標を達成するための実効性を高める工夫も合わせて導入したのが、パリ協定の新しいところだ。

日本が現在掲げている目標は、「2030年度に2013年度比46%削減」であり、「さらに50%削減の高みに向けて挑戦を続ける」としている。この目標を達成するには困難が伴うかもしれないが、気候変動の問題は日本を含め、世界のすべての国が協力して解決する必要がある問題だ。さまざまな制約はあるにせよ、日本も国際社会と共に、この目標の達成に少しでも貢献できるよう、行動することが求められている。


▼参照した記事

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説明は以上です。

今回の記事以外にも、様々な事例を図解で紹介しています。「政策図解シリーズ」というマガジンでこれまでの政策図解の記事がまとめられているので、よければ見てみてください。フォローもしていただけると嬉しいです。

以下、今回の記事のクレジットです。

図解&原稿:笠場愛翔
レビュー:沖山誠、近藤哲朗、中野亜海

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