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経営と業務の効率化に直結する品番・SKUルール

株式会社Bizgemでは「すべてのクリエイターに良質な経営を提供する」をミッションに各種コンサルティングサービス、小売企業向けの経営管理効率化サービスの開発をしております。

最近ではECの売上アップだけではなく、経営分析や経営状況の把握のためのデータ整備のサポートまでさせていただくことが増えてきました。結局、EC売上アップ施策の実施→更に成果をあげるためにはMD含めた経営構造の把握と転換が必要→これまでの仕入・売上の生データを分析して、今後の方針を策定するといったことをさせてもらっています。

売上・仕入などの生データは基本的にはSKU(Stock Keeping Unit)単位で分析します。そのため、SKUにルールが設定されていないと思わぬところで分析業務に時間がかかってしまいます。経営分析に時間がかかる→経営分析の頻度と精度が下がる→経営の意思決定の精度が下がるという連鎖に繋がります。また経営分析に時間がかかるということは、販売における実務においても一括処理が行えず業務負荷がかかっているということが考えられます。

今回はSKUルールが策定されていないがために苦労したケースを紹介し、その上で、どのようなSKUルールを設定すれば経営分析・日々の業務オペレーションを効率的に設計できるのか説明できればと思います。

SKUルールが策定されていないために苦労したケース①:区切り文字なし&桁数指定なし

品番・カラー・サイズを区切る区切り文字(一般的には「-」(ハイフン)か「_」(アンダースコア))がない上に、品番・カラー・サイズの桁数がバラバラだったために、カラーやサイズをキーにした分析ができないことがありました。

例えば、「AN1034556BLACKS(品番:AN1034556、カラー:BLACK、サイズ:S)」や「ZB103455ASBLTBEIGEXL(品番:ZB103455ASB、カラー:LTBEIGE、サイズ:XL)」といったSKUが混在しているケースです。区切り文字があれば、SPLIT関数で区切り文字を指定して、品番・カラー・サイズに分けて集計をすることができるのですが、区切り文字がないためにSPLIT関数や正規表現を使うことができませんでした。

更に品番の桁数も8桁〜12桁とバラバラでカラーは更にバラバラでした。SKUごとにカラーとサイズが定義された一覧表があればそれでも集計はできたのですがそういった一覧表もなかったために、カラーごと・サイズごとの分析は諦めてしまいました。

実務上も、特定の品番+カラーに対して一括で予約処理を行うであったら、特定の品番+カラーのみタイムセール価格を設定するなど、品番+カラー単位で処理を実行したいケースがあるかと思います。今回のようなSKUルールの場合、それらの処理をエクセルやスプレッドシートで簡単に指定することができず、一つずつ手作業で処理するとなると大きな工数がかかってしまいます。

SKUルールが策定されていないために苦労したケース②:区切り文字が品番・カラーでも使用されているケース

先ほどとは異なり、区切り文字はあるものの、区切り文字と同じ文字が品番やカラーでも使用されているため、処理が複雑になってしまうケースです。

A:6789-7786-BLACK-S(品番:6789-7786、カラー:BLACK、サイズ:S)
B:34567890-BEIGE-2-M(品番:34567890、カラー:BEIGE-2、サイズ:M)
C:9900-7700-LTBLACK-2-XL(品番:9900-7700、カラー:LTBLACK-2、サイズ:XL)

上記のようなSKUが混在しているケースになります。このようなケースでSPLIT関数で区切り文字である「-」を指定して抽出しても、どれが品番で、どれがカラーなのか指定するのが難しくなります。品番の桁数も一定でないとなるとさらに混乱することになり、エクセルやスプレッドシートで気軽にデータ分析を行うのが難しくなります。

MDや販売分析においては手軽に正しく分析を行い、細かく意思決定を行うのが重要ですがこのようなSKUルールだと分析そのものが困難になり、正しい意思決定がしづらくなってしまいます。

アンチパターンを踏まえた設定すべきSKUルール

これまで出会ってきた上記のようなアンチパターンを踏まえて、SKUルールの案を出させていただくと下記のようになります。

①SKUの文字数は30文字以内
②使える文字は半角英数字、「-」(ハイフン)、「_」(アンダーバー)のみ
③「-」(ハイフン)か「_」(アンダーバー)で統一された区切り文字を使用
④区切り文字は品番・カラー・サイズなどの文字列に使用しない
⑤品番・カラー・サイズの文字数を固定する
⑥0飛びを考慮して0から始まる数字コードは利用しない

それぞれ簡単に理由を解説したいと思います。

①SKUの文字数は30文字以内&②使える文字は半角英数字、「-」(ハイフン)、「_」(アンダーバー)のみ

ECに限らず、店舗運営をしていても、ロジレスやネクストエンジンといったOMSを使って受注や出荷に関する業務をシステム化しているケースは多いと感じています。ロジレスやネクストエンジンのSKUルールが、文字数30文字以内で使える文字数は半角英数字と「-」(ハイフン)、「_」(アンダーバー)のみとなっていることから、OMSと合わせたSKUルールを設定することが望ましいと思っています。

SKUルールがOMSと異なってしまうと、そのためにOMS用のSKUと店舗運営用のSKUが二重に存在し、分析や業務を行う際にはSKU対応表を参照して、いちいち転換してから分析を行う必要があります。対応表を常に最新のものに更新する + 分析の際に対応表を最新のものに更新するなど、分析や業務の際に一手間も二手間もかかることになるため、OMSと極力SKUルールを一致させるために1つ目のルールとしています。

③「-」(ハイフン)か「_」(アンダーバー)で統一された区切り文字を使用&④区切り文字は品番・カラー・サイズなどの文字列に使用しない

区切り文字がないと、品番・カラー単位やサイズのみでの集計などを行うのが難しくなります。区切り文字を用いて品番・カラーの境目を明確にすることで、品番・カラー・サイズといったそれぞれでの単位での分析や処理をSPLIT関数などの手軽な関数で行えるようになります。
また区切り文字と同じ文字列を使用してしまうと、それが区切り文字なのか、文字列の一部なのかを判断する処理が必要になり、分析・業務の複雑性が増します。単純にSPLIT関数のみで分析を行える状態を保つためにも区切り文字と同一の文字列は品番・カラー・サイズなどのSKU内に使用しないようにしましょう。

⑤品番・カラー・サイズの文字数を固定する

品番・カラー・サイズの文字数を固定してしまえば、LEFT関数・MID関数などの手軽な関数で品番のみ、カラーのみ、サイズのみを抽出することが可能です。品番は10桁、カラーは3桁、サイズは3桁、区切り文字2文字の合計18文字をSKUとするなど決められると分析および日々の業務が楽になります。

一方でカラーやサイズなどは、目視での確認のために、「BLACK」や「S」、「XS」などわかりやすい文字列を使用したいので、文字数を固定したくないというケースも業務上ありえるかと思っています。その場合には上記の①〜④を守っていればルールベースでの抽出も可能になるので、ここは絶対まもらなければいけないルールというわけでもありません。あくまで経営と日々の業務のどちらも効率的に行うためのルール設計なのである程度柔軟に設計して、運用することを想定しています。

⑥0飛びを考慮して0から始まる数字コードは利用しない

小売業の現場では、エクセルやスプレッドシートを用いて、分析及び日々の業務を行うケースが多いでしょう。その上で、先頭に0がついているコードは先頭の0が落ちてしまう0落ちを考慮する必要がでてきてしまうため、極力避けたほうが業務効率はよくなります。カラーコード001やサイズコード005など設定したくなりますが、そこはカラーコード100やサイズコード105と設定して、0落ちを考慮しなくてもいいルールにあらかじめしておくと、現場の負荷も軽くなるかと思います。

ルール設定は経営分析と現場業務が効率的に回るためのもの

ルール設定というと、ルールに縛られて効率よく柔軟に作業が行うことができないとイメージする人もいるのですが、小売業の経営および業務執行においては適切なSKUルールの設計が、経営と業務執行の効率化に大きく影響すると実際に複数の企業の現場を見て感じることです。

SKUルールがぐちゃぐちゃなために、日々の分析の負荷が大きく、頻度が落ち、それゆえに細やかな意思決定や方針の変更が行えず、ずるずる経営状況が悪化しているケースもあります。そういったケースにおいては、カラー単位での価格の変更をしたいといった現場のニーズに応えるにも、カラー単位での商品の区分けがSKUルール上難しいので、エクセルでぱっと対応するのが難しく、一つ一つSKUを指定するなど業務負荷が大きいといったこともあります。

適切なSKUのルールを設定することが経営上も業務執行上も大きくプラスになるという認識を持った経営者が経営する会社とそうではない会社では、業務効率は大きく異なるであろうことを実感しています。

経営分析の前に日々の売上アップのための施策が重要と考えている方にとっても適切なSKUルールの設計は業務執行の効率化の元になる重要なものです。今回のSKUルールの案を元に、ぜひ自社のSKUルールと経営分析、日々の業務執行の見直しをしていただければ幸いです。

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