日本のDX台所事情❺
(第5回)破壊的創造ワークショップのすすめ(後編)
前回のブログでは、DX人材の育成を促進する破壊的創造ワークショップの前編として、若手社員を含めたワーキンググループによる現行ビジネスモデルのアセスメントについてお話ししました。
今回は、そのワークショップの後半についてです。
デジタル破壊が意味するもの
近年、破壊的イノベーション、デジタル破壊など、メディア上で破壊という言葉が定着してきました。
破壊という言葉は、英語のディスラプション(Disruption)を訳したものですが、破壊という語感から私たちがイメージするものとは異なり、「混乱を引き起こすもの、混乱を引き起こす何か」という方が、正しい解釈です。
昔、デストロイヤーという人気プロレスラーがいましたが、破壊に最も近い英語はデストラクション(destruction)でしょう。
話を元に戻すと、デジタル破壊とはデジタルテクノロジーを活用したビジネスモデルをもつ新興企業が、従来の業界に大きな影響を与える際に起こる変化を意味します。
音楽、写真、ビデオなど、今世紀初頭から顕著になってきたデジタル破壊の波は、出版、メディア、広告、小売り、教育事業にまで押し寄せ、今後はあらゆる既存ビジネスに大きな影響を与える潜在性を秘めています。
破壊的アイデアの生成(2日目)
アマゾンの前CEOのジェフ・ベソス氏はかつて、「アマゾンのビジネスを破壊する者がいるとしたら、それはアマゾン自身でなければならない」というような発言をしていました。
ワークショップの2日目は、かなり荒療治ですが、自社のビジネスを破壊するアイデアを第三者の立場から創造し、グループ内でそのアイデアを様々な視点から議論していくことを目的とするものです。
ここで重要なことは、どんなに馬鹿げたアイデアであっても、すぐに却下しないことです。
例えば、皆さんの企業が通販やオンライン店舗を運営しているとしましょう。
ある若手社員が、「顧客が購買しようとしている商品を、注文を待たずに発送してしまったらどうでしょうか?」というアイデアを発案したとしましょう。
十分馬鹿げたアイデアですよね?
でも、アマゾンは「Shipping Then Shopping(発送してから購買する)」というような内容で、このアイデアに関する特許を取得しています。
破壊的アイデア生成に関する5つの視点
このワークショップにおいては、現行ビジネスモデルのアセスメントのアウトプットであるビジネスモデルキャンバスを眺めながら、以下の5つの視点でアイデアを出していきます。
■デジタルを活用したプロダクト革新(例.電子書籍リーダーと電子書籍)
■デジタルを活用した顧客経験の生成(例.レジのない物理的店舗であるアマゾンゴー)
■デジタルを活用したオペレーションの変革(例.ロボットが縦横無尽に活躍する配送センター)
■デジタルを活用したプラットフォームの構築(例.著者と読者を直接結び付けるセルフ出版サービス)
■デジタルを活用した収益モデルの確立(例.有料会員サービスであるアマゾンプライム)
アイデア評価に関するディスカッション
十分な数のアイデアを出したら、グループ内またはワークショップ参加者全員で、様々な視点および論点からそのアイデアに関してディスカッションしていきます。
例えば、
■そのアイデアを実現するために、どのようなデジタルテクノロジーを活用または組み合わせることができるか?
■そのアイデアが功を奏するとすれば、その重要成功要因は何か?
重要成功要因は、技術的な要因であったり、技術以外の要因であったりします。
前述したShipping Then Shoppingにおいては、顧客の購買履歴やWebサイト上の行動履歴などから、人工知能を活用して直近で購買するであろう商品を予測するわけですが、その重要成功要因は予測の精度という技術的な要因でしょう。
一方、電子書籍リーダーの場合における重要成功要因は、電子書籍リーダーに関する技術的な要因よりも十分な数量の電子書籍コンテンツでした(読みたいコンテンツが少なければ、電子書籍リーダーを購買する動機が薄れます)。
その他の論点として、
■そのアイデアを実行する第三者が出現したら、自社のビジネスにどのような影響を与えるだろうか?
■そのアイデアを実行する第三者が出現したら、自社の現在のDXに対する取り組みで十分だろうか?
■そのアイデアを自社で実行するとしたら、現行ビジネスとの間でどのような摩擦が起こるだろうか?
■その摩擦を克服するためには、どのような対策が考えられるだろうか?
いかがでしたでしょうか?
現行ビジネスモデルのアセスメントと破壊的アイデアの生成という2日間のワークショップを通じて、多くの洞察が得られるはずです。
皆様にも、破壊的創造ワークショップの実施をお薦めいたします。
今回はここまで..
次回は、DX人材に必要とされる能力について私見を述べてみたいと思います。
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