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日本のDX台所事情❹

(第4回)破壊的創造ワークショップのすすめ(前編)

本連載ブログにおいて、これまで「DXが意味するもの」「日本企業におけるDX推進の課題」などについて触れてきました。

今回からは、DX推進の課題の1つとして、多くの企業に共通するDX人材の育成を取り上げていきたいと思います。

DX人材の定義

まずは、DX人材とは何かについて整理していきましょう。

経済産業省が、2018年に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、DX人材の確保に関する記述があります。

それは、

■DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材を育成・確保
■各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取り組みをリードする人材、その実行を担っていく人材の育成・確保

となっています。

もちろん、社外からの人材の獲得や社外との連携も含むと注釈が記されています。

本ブログでは、デジタルで何ができるかを理解することができる人材について焦点を当てていきます。

デジタル技術やデータ活用に関するコンテンツは多く存在しますし、DXの取り組みをリードする人材、その実行を担っていく人材に関しては、プロジェクトマネジメント能力やリーダーシップ能力に関する各種のアプローチを流用することができるからです。

習うより慣れよ」という諺があります。

デジタルで何ができるかを理解することができる人材の育成に関するポイントについては、次回のブログに譲るとして、今回は私が推奨している効果的なワークショップにおけるプログラムの要約をご紹介していきましょう。

私は、このワークショップを「破壊的創造ワークショップ」と呼んでいます。

破壊的創造ワークショップ開催の要領

まず1回のワークショップ(2日間程度)につき、社内から20人前後のメンバーを選抜し、グループに分けます。

アマゾンの前CEOのジェフ・ベソス氏は、会議の生産性と創造性を高めるための参加人数はピザ2枚分程度で足りる程度に絞ることが重要だと言っていました(ピザ2枚ルール)。

私のファシリテーター経験を加えると、1つのグループは4~5名が適切だと思います(ランチ時は、本当にピザを食べてもよいかもしれません)。

メンバーは、プロダクト開発、マーケティング/営業、オペレーション、IT部門など、様々な職種から集めることが望ましいでしょう。

また、ワークショップには積極的に若手を参加させることが重要です。

これらの若手層の多くは、幼少の頃から、インターネットをはじめとしたテクノロジー(例.パソコン、モバイル、ソーシャルメディア)などを利用することができる環境に育ったデジタルネイティブと呼ばれます。

若手を参加させる潜在的なメリットは、大きく3つあります。

■ 自社または自社の属する業界における様々な慣習や常識に疑問を唱えやすい
■ 毎日のように使っているデジタルテクノロジーを活用したアイデアが生まれやすい
■ DXワークショップに参加することで、自社のビジネスへの関心度と愛着度を育むことができる

また、これらの若手は、デジタル経済が本格的に浸透するであろう20年後における組織の中枢メンバーとなることでしょう。

現行ビジネスモデルのアセスメント(1日目)

破壊的創造ワークショップの1日目の中心テーマは、現行ビジネスモデルのアセスメント(自社または自社が属する業界)です。

第1回目のブログで、個別企業レベル(ミクロ経済レベル)におけるDXとは、「デジタルテクノロジーを活用したビジネスモデルを通じて組織を変革し、業績を改善すること」と定義しました。

一方、第3回目のブログで、ビジネスモデルとは「組織が価値を生成、提供、獲得する方法の論理的根拠を説明するもの」と定義しました。

ワークショップを効率的に進めるとともに、グループ内の議論を活性化し、各グループの成果物を可視化するために、私はビジネスモデルキャンバスという事業創造に役立つツールの活用をお薦めしています。

図1

現行ビジネスモデルのアセスメントは、DXの方向性(将来のあるべきビジネスモデル)を定めるための最初の重要な(そして、多くの企業が軽視している)ステージであり、2つの主要なステップに分解されます。

■ 現行ビジネスモデルの描写(価値、価値の生成、価値の提供、価値の獲得という4つの側面)
■ 現行ビジネスモデルを取り巻く外部環境の描写(市場の趨勢、業界の趨勢、主要なトレンド、マクロ経済動向という4つの側面)

図2

現行ビジネスモデルを徹底的に議論することによって、以下の共通認識がメンバー間の中で生まれてきます。

■ 現行ビジネスモデルが機能している包括的な仕組み
■ 現行ビジネスモデルに影響を与える外部環境の変化
■ 外部環境の変化による潜在的な機会や脅威
■ 複眼的な視点によるDX戦略の焦点

ワークショップ1日目の最後に、グループごとに成果物をプレゼンテーションしていきます。

もちろん、グループごとに様々な見解があってもかまいません。

重要なことは、現行ビジネスモデルのアセスメントに関して、様々な角度からの論点を幅広く洗い出すことにあります。


今回はここまで..

次回は、1日目の成果物をインプットとした2日目の中心テーマ「現行ビジネスモデルの破壊的創造」に駒を進めていきましょう。


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