日本のDX台所事業❶
(第1回)DXが意味するもの
現在、多くの日本企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいるとよく耳にするようになりました。
一方で、DX推進に関して様々な課題が浮き彫りになってきているという記事も目にすることがあります。
今年(2021年)のはじめより、デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド、米国企業のDXへの取り組み動向という一連のブログをアップしてきました。
今回からは、DXに関する日本企業の取り組みに関して、正しいか正しくないかは別として、日本のDX台所事情というタイトルで、自分の思うところをミニコラム的な形式で数回にわたり書き綴っていきたいと思います。
DXの定義
最初に、DXとは何かという最も基本的なことを再確認することからスタートしていきましょう。
DXは、マクロ経済レベル(経済全体レベル)およびミクロ経済レベル(個別企業レベル)で定義されることがあります。
DXは元来、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念であり、「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というものです。これは、どちらかと言えばマクロ経済レベルの定義でしょう。
一方、ミクロ経済レベルで言えば、経済産業省が2019年に「DX推進指標とそのガイダンス」というレポートの中で、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
経済産業省の定義は少し長いので、私は「デジタルテクノロジーを活用したビジネスモデルを通じて組織を変革し、業績を改善すること」と定義しています。
業績の改善は各企業がDXに対して正しく取り組んできた成績であり、米国企業のDXへの取り組み動向のブログにおいて、いくつかの企業におけるDXの取り組みが株価の向上に反映されていることを示してきました。
いずれにしても、個別企業レベルにおけるDXの取り組みが、最終的には人の々の生活を豊かにしていくという経済全体レベルの発展に結び付くことになるのでしょう。
デジタルは手段、変革は目的
ところで、DXのD(デジタル)は手段であり、X(変革)は目的です。
なぜあらためてこのようなことを申し上げるのかと言えば、日本において多くのメディアで取り上げられているDXに関して言及されている内容のほとんどはD(デジタル)の部分に多くの焦点を当てているように感じられるからです。
また、日本においては、従前より進められてきた業務(業務プロセス)のIT化の延長戦上にDXが置かれる傾向があります。実際に、これら2つはどう違うのかと尋ねられることがあります。
さらには、「今日から始めるDX」のような軽いノリのものまであります(今日から始めるダイエット、今日から始める禁煙みたいに)。
欧米におけるビジネスの概念が日本に輸入される際、その概念の本来の目的がなおざりにされ、手段にばかりスポットライトが当てられることがよくあります。
例えば、イノベーションの本来の意味は「新しい経済価値の創造」であり、「技術革新」はその有望な手段です。また、リストラクチャリングの本来の意味は「事業構造の再構成」であり、「人員整理」はその手段の候補です。
ニューヨーク・ヤンキースの名捕手であったヨギ・ベラは、かつて「目的地がはっきりしなければ、そこに行けるはずがない」という名言(迷言?)を残しました。
変革とはすなわち、Aという現状からBという将来のあるべき姿に変わらなければならないという経営トップの強い意志を含んでいなければなりません。
したがって、企業はDXに取り組む大きな目的、言い換えれば大義名分を明確にし、企業内外の利害関係者と共有していかなければ上手く進めていくことは困難になります。
皆さんの企業がDXに取り組まなければならない理由や目的は何でしょうか?
ここで言うところの理由とは、外部環境の変化を踏まえた現行ビジネスの分析(アセスメント)です。また目的とは、将来のあるべき姿(ビジョン)です。
どうも日本企業の多くは、これらの重要な要素を明確にすることなく、あるいは十分な時間を割くことなく、DXを捉えているような気がするのです。
今回はここまで..
次回は、日本企業がDXを推進していく上で抱えている共通する課題を取り上げてみようと思います。
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