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日本のDX台所事情❼

(最終回)DX人材に必要とされる能力(後半)

前回のブログでは、多くの企業にとってDXを推進していくために必要とされる4つのデジタル能力のうちの最初の2つ、デジタルテクノロジーがビジネスモデルに与える影響を理解する能力複数のデジタルテクノロジーを組合せる能力について取り上げてきました。

最終回となる今回は、残りの2つ、デジタルテクノロジーを活用してビジネスモデルが上手く機能する仕組みをデザインする能力、お金と時間を多くかけずにテスト/検証する能力について考えていきましょう。

デジタルテクノロジーを活用してビジネスモデルが上手く機能する仕組みをデザインする能力

ビジネスモデルとは、組織が価値を生成、提供、獲得する方法の論理的根拠を説明するものであることは以前のブログでお話ししました。

端的にいえば、ビジネスが上手く機能する仕組み、ストーリーです。

このストーリーを描写するために、多くの起業家が用いる簡単なツールの1つとして、ナプキンスケッチがあります。

アマゾン創業時のジェフ・ベソス氏は、ナプキンスケッチを活用して同社が成長する仕組みを描きました。ウーバーの創業者もしかりです。

ナプキンスケッチには、システム思考で用いられる因果ループ図と同様のアプローチが取り込まれています。

システム思考は、複雑な状況下で変化にもっとも影響を与える構造を見極め、さまざまな要因のつながりと相互作用を理解することで、真の変化を創り出すためのアプローチです。

現代ではビジネスモデルキャンバスを活用して、デジタルテクノロジーを活用してビジネスモデルが上手く機能する仕組みをデザインすることができます。

意外と知られていないのですが、ビジネスモデルキャンバスを構成する要素の間には相互作用が働いています。

例えば、「Aという顧客との関係はBという価値提案を促進し、Cという顧客セグメントとの関係を確立すると同時に、Dというチャネルの上に構築される」というような相互作用です。

アマゾンの場合、アナリティクス/人工知能テクノロジーは、ビジネスモデルの各々の側面に大きな役割を果たしています。

典型的には、デジタルテクノロジーを活用して、ビジネスモデルの各々の要素の相互作用によって自己強化ループを生み出す仕組みをデザインすることが重要です(デジタルテクノロジーの電流がビジネスモデルに刺激を与えるイメージを持つとよいでしょう)。

図1

ちなみに、セグメントオブワンとは、精密なデータ分析をベースとして、市場のセグメンテーションを進めていくと、最終的に行き着くのは顧客ひとりで構成される個人のセグメントであるとする概念です。

また、ダイナミックプライシングとは、精密なデータ分析をベースとして、従来とは比べられないほど頻繁に、もっと細かく、自動的にプライシングを変更させていく手法を指します。

お金と時間を多くかけずにテスト/検証する能力

SMACIT(ソーシャル、モバイル、アナリティクス/人工知能、クラウド、モノのインターネット)のような汎用的なデジタルテクノロジーを組み合わせて、将来のビジネスモデルが上手く機能する仕組みを数パターンに分けてデッサンしたら、すぐさまそのデザインされたアイデアをテスト/検証していきます。

それも、できるだけお金と時間を費やすことなく

第2回目のブログでも触れましたが、約半世紀前の汎用コンピューター時代と決定的に異なることは、現代においてはSMACITのようなテクノロジーは、少なくともテスト/検証フェーズにおいては無料または安価で活用することができます。

また、これらのテクノロジーの多くはサブスクリプション形態で提供されていますので、テスト/検証結果が芳しくなければ利用を止めることができます。

現代は、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代であり、VUCAを受け入れると同時に、迅速なテスト/検証を通じて小さな成功を積み重ねていくマインドセットが必要となります。

SMACITに関して、もう少し具体的にお話ししましょう。

ソーシャルに関していえば、Facebook、Twitter、LinkedIn、YouTubeのようなSNSをフル活用することです。

モバイルは、消費者の多くが常時形態し、必要であればいつでもどこでも皆さんの企業にアクセスすることができるチャネルです。これを利用しない手はありません。

モバイルアプリ(もちろんデスクトップアプリも)を構築する必要があったとしても、現在ではプログラミングが不要なノーコードツールを安価で活用することができます。

アナリティクス/人工知能に関しては、ソニーが提供しているPredict Oneのような比較的安価なツールを活用すれば、ビジネスモデルの特定領域における有効性をオフラインでテスト/検証することができます。

同様に、モノのインターネットに関しても、東芝が提供しているifLinkのようなツールを活用すれば、安価でプロトタイプが制作できるかもしれません。

数十億単位での投資が必要であった汎用コンピューター時代と比較すれば、クラウドへの投資も微々たるものです。最小限のスペックから始め、徐々にスケールアップすることもできますし、逆にスケールダウンすることも可能です。

複数のテクノロジーを上手く組み合わせることをマッシュアップとも呼びます。

幸いなことに、現在無料または安価で活用することが可能なテクノロジーツールが豊富に存在します。これらを活用しない理由は見当たりません。

言い換えれば、汎用コンピューター時代とは異なり、DXは大企業だけでなく中小企業にとっても実現可能なのです。

最終的には、堅牢なデータプロセシング基盤を構築することが最も多くの投資が必要となるでしょうが、テスト/検証のフェーズにおいては、多くのお金を使う前に頭を使うこと、すなわちこれがDX人材に必要とされるデジタル能力だといえるでしょう。


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