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【環境】減容・減量・再資源化ー廃棄物を処理する技術

はじめに

地球温暖化が進み、全世界で環境負荷低減に対する取り組みが急務となっています。政府は2021年10月22日、地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画「地球温暖化対策計画」を閣議決定しました。2016年5月13日に閣議決定した前回の計画を5年ぶりに改訂したものです。これにより、日本は2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明しました。

この目標の達成、そして環境に配慮した社会づくりをしていくためには天然資源の消費を抑制するだけでなく、廃棄物の排出を抑制する「Reduce(リデュース)」、再利用する「Reuse(リユース)」、そして再資源化する「Recycle(リサイクル)」ていくこと、3Rの取り組みが重要となります。循環型、そして低炭素社会実現に向けた廃棄物処理技術の開発が進んでいます。

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都市鉱山とは?都市油田とは?

都市鉱山という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。廃棄物の処理量削減に向けた3Rの取り組みの中でよく知られているのが、廃棄処分となった家電やOA機器などから、金属を取り出し、再資源化する「都市鉱山」、生ゴミなどの廃棄物を処理してバイオエタノールやバイオメタンを取り出す「都市油田」です。

昨年開催された「東京オリンピック・パラリンピック」の参画公認プログラム「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」による取り組みが注目されました。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)は東京2020大会で使用するメダルを使用済みの携帯電話などの小型家電から製作するプロジェクトを実施しました。

「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会でメダリストに授与する約5000個の金・銀・銅メダルを、全国各地から集めたリサイクル金属で作る国民参画型のプロジェクトであり、東京2020大会をきっかけに、持続可能社会の仕組みを作る取り組みでした。リサイクル金属をメダル製作に活用し、日本のリサイクル技術などを駆使することによって、金の精錬におけるリサイクル率100%を目指しました。

2019年3月31日、メダルプロジェクト用の小型家電リサイクル回収受付を終了し、2019年7月10日、東京2020大会のメダル製造に必要な原材料を、小型家電リサイクルで確保できたことが発表されました。

メダル

一方、ゴミから化石資源の代替えとなるものを取り出す「都市油田」に関する取り組みも進んでいます。日本の化学メーカーが米国のメーカーと提携し、可燃性の未分別廃棄物からエタノールを大量製造する技術を開発しました。不燃物とは分別する必要はありますが、可燃性であれば、紙や生ゴミなどと、プラスチックを分別する必要もないという技術です。日本の化学メーカーは埼玉県寄居町で、稼働中のゴミ処理施設内にパイロットプラントを建設。2014年から実証実験を行い、2017年にこの技術「バイオリファイナリー・エタノール技術」を確立しています。

エタノールは最終製品として利用できるだけでなく、既存化学プロセスを活用してエチレンモノマーやブタジエンモノマーに変換することもできます。これまでにない資源循環ループ実現の可能性もあることから期待が高まっている。

効率的なリサイクルのためには破砕から選別が必要

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可燃性の未分別廃棄物からエタノールを大量製造する技術もありますが、多くの場合、廃棄物の処理・再資源化には破砕による廃棄物のサイズ最適化や、分離や選別によって再資源化に不要となる異物の除去、有機性廃棄物のみの取り出しといった前工程を行うことが必要となります。

破砕対象となる廃棄物はペットボトルやプラスチック、自動車用タイヤなどのゴム製品、廃家電製品、さらにはコンクリートがら、木材にいたるまで、幅広く、こうしたものを効率的に破砕するためには対象物の種類、破砕後の目標とするサイズなどによって、破砕機を使い分けなければなりません。

廃棄物の破砕に利用される破砕機の種類には1枚の回転刃で対象物を破砕する「1軸破砕機」、2枚の回転刃で対象物を破砕する「2軸破砕機」、ハンマーでたたいて対象物を破砕する「ハンマー式破砕機」、破砕室内のチェーンが回転して対象物を破砕する「チェーン式破砕機」などが挙げられます。

破砕機には安全が求められる

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破砕機には刃物やハンマーなどが搭載されているため、使用する作業者には危険が伴います。そのため、破砕機には作業者の安全や健康に配慮した機能や装置が搭載されています。

例えば、過負荷防止装置は破砕する対象物のかみ込み量が大きいときや、破砕が困難な過負荷の廃棄物投入時における事故発生の防止だけでなく、作業環境の向上にも効果があるといえるでしょう。また、粉じんの飛散を防止するための集塵装置やミスト発生装置などの周辺機器は作業者の健康面に配慮した装置だといえます。

金属やプラスチックなど、さまざまな材料が混在した混合廃棄物を効率的に再資源化するためには、破砕後、選別や分離工程を行われています。主な選別機として、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂といったプラスチックの材料ごとの比重差を利用して、水槽の中で選別を行う「湿式」や、風力を活用し、材料の比重差で選別を行う「乾式」、回転するドラム内部の破砕物を穴が開いたふるいにかけて選別していく「回転式(トロンメル)」、さらには磁力を利用するものがあります。さらに精度が高い選別を行うためには近赤外線センサーや色彩センサー、X線照射などによるシステムも利用されています。3Rの実現、効率化に向けて、メーカーの技術開発が進んでいます。

廃棄物処理関連の製品や技術を知るための展示会は?

日報ビジネス株式会社が主催する「NEW環境展」、一般社団法人日本能率協会が主催する「再資源化・産業廃棄物処理・解体技術展」や、RX Japan株式会社が主催する「資源循環 EXPO」などが知られています。

NEW環境展 次回開催は2022年5月25日から

再資源化・産業廃棄物処理・解体技術展 次回開催は2022年12月7日から

資源循環 EXPO  次回開催は2022年3月16日から


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