副業業務委託の報酬・単価はどう決めるか
業務委託を受ける時に悩ましいのが報酬の決め方だ。
エンジニア界隈であれば、業務委託での働き方は一般化していて、市場や相場が形成されている。
一方で、企画系の業務になると、まだまだ情報も少なく、発注先・元のどちらも報酬で迷うケースが多い。
自分の経験や理論を踏まえ、報酬をどう考え決めるのか、選択肢を整理した。
基本的なプライシングの方法は3種類
報酬を決めるプライシングの基本は大きく分けると3種類だ。
生み出すリターンベースの価格設定
市場ベースの価格設定
コストベースの価格設定
基本的にはコスト<市場ベース<リターンの関係となり、この間で決めるのが妥当な価格設定となる。
状況によっては関係性が異なる場合や、この範囲外の価格設定をする場合もあるだろうが、継続性は疑わしい。
後に詳述するが、力量が高く希少性が高いほどリターンベースでの高い値付けが可能になる。
逆に代替可能性が高い場合は、市場水準が妥当な金額となりやすく、コストを踏まえながら価格設定していくのが基本だ。
時間コミットか、ミッションコミットかで異なる考え方
業務委託として仕事を受ける場合に、どういう役割・契約で入るかによっても考慮要素だ。
月20時間、というように時間数契約の場合は、時間当たりの単価を計算して、それを時間数で掛け合わせる計算になる。
この場合、コストベースや市場ベースの価格設定になりやすい。
結果、ミッションにコミットする場合は、市場ベースやリターンベースの価格設定になりやすい。
アドバイザーやコンサルとして入る場合はこちらのケースが多いのではないか。
ただしミッションベースでも、報酬見積もりには、必要な工数を踏まえて値付けするケースも多い。
稼働時間と紐付かない価格設定ができるのはかなりの上級者に限られる。
「いくら欲しいのか」を意識することも大事
企画職の業務委託の際に報酬価格の決定に迷うのは、市場水準がつかみづらいからだろう。
企画系の業務委託として働いている人が少ない
業務内容が多岐にわたる
という2点から、状況にあった市場価格を把握しづらいためだ。
この状況は発注者、受注者双方に存在する。比較的交渉の余地が発生しやすい状況だ。
交渉や意思決定のために、事前に「いくら欲しい」という基準を明確化しておくこと。
前段として「何のために副業業務委託を行うのか」を整理しておくことは必須
報酬目的→ほしい金額
経験目的→欲しい経験+最低限欲しい金額
というように、整理し、水準をもっておくことで、納得感のある交渉や意思決定がしやすくなる。
それぞれのケースにおける報酬設定を具体的に考える
コストは機会損失額で考える
副業で業務委託をする=本業以外の自分の時間を使って稼ぐということだ。
もしA社で副業をすれば、他の仕事の機会が無くなる、逆にA社の仕事を断れば同じ時間B社で仕事をすることもできる。
この枠組みで考えるなら、コストは機会損失額=その時間他の仕事をしていれば得られた金額、となる。
具体的には自分が「この金額なら仕事を作れる」と考える金額が基準となる。
時給5,000円位で複数の案件の引き合いがあるなら、5,000円。それほどの自信がないが、クラウドワーカーとして働けば、時給2,000円は稼げるなら2,000円を基準にすればよい。
サラリーマンも時給を計算しろとはよく言われるが、副業で業務委託をするようになると、実際に時間をお金に変換できる。
最低でもいくらは貰える、という部分をコストの底として把握し、金銭以外のメリットが大きい場合以外は、それ以上の価格提示・交渉をするべきだろう。
市場を知るためには顧客社内水準、業界水準を把握する
市場価格には2種類ある。業界における市場価格と、顧客社内における水準価格だ。
業界における市場価格には、まだまだ曖昧な部分は多いが、フリーランス系のサービスを見て、自分と近い状況の人の報酬を調べてみると良い。
例えば、StockSunが運営するフリーランス名鑑では、業務と単価レンジでフリーランスを検索することができる。
実際に行っている業務内容やスキル・経験を見て、自分と近しい人の相場水準を把握しておくとよいだろう。
例えば、SEO対策で調べると、3,000円-5,000円と、5,000円-10,000円のレンジの人が多い。
業務内容や力量にもよるが5,000円前後が多いのかな、という推測がつく。
逆に1万円を超える単価は限られてくる印象だ。
気になったので、個人的にフリーランス名鑑の情報を調べてみた。より具体的に報酬相場を把握したいばあいは以下の記事を参照。
顧客企業が業務委託メンバーを多く抱えて仕事をしている場合、一定の水準感がある場合が多い。
このケースではここから大きく逸脱する価格設定も難しいと思うので、水準感を聞いて把握して置けると良いだろう。
リターンの計算は難しいが常に意識することが必要
自分の業務でどれくらいのリターンが生まれているのかはプロとして常に意識すべき部分だ。
自分の成果への寄与、貢献でどれほど価値が生まれたかは、常に回答できるようにしておきたい。
付加価値を把握し、大きくしていけば、報酬を増やせる。
逆に報酬を超える価値を出せていなければ、業務を継続することは難しい。
企画職は事業にレバレッジを効かせる仕事なので、同じ時間でも状況によって生み出せるリターンが大きく異なる。ここは醍醐味だろう。
リターンは顧客事業規模が大きいほど大きくなりやすい。
例えば、グロースハックでCVRを10%向上させたとして、月商100万円のサービスであれば、リターンは10万円だが、月商1億円のサービスならリターンは1000万円となる。
大きい事業に携わる方がリターンを大きくしやすくなる、という点は高報酬を狙う場合は特に意識すべきだ。
最初はコストや市場水準で、力がつけばリターン基準で価格決定する
冒頭にも記載したが、希少性が高いほどよい値付けをすることができる。
超一流のプロが非常に高い報酬を得ているのは代替が効かないからだ。
100億円の事業があり、これを10%伸ばせる手法があるとする。
これを実行できるのがこの世にAさんただ1人だけであれば、リターンの10億円に近い金額を払ってでもAさんに依頼をしたほうが良い。
Aさんはリターンベースで超高報酬を得ることが可能だ。
逆に同じ仕事ができる人が市場に多くいる場合は、別にその人に頼まなくても良くなり、価格競争が生まれやすい。
特に供給が多い状況で、価格競争が低報酬で案件を受ける人が現れる、すると、そこが市場水準になり、更に低めの金額・・・ということで値崩れが進んでしまう。
クラウドワークスやランサーズでは単純業務が驚くような低水準になっているのはそのせいだ。
(時給計算すると最低賃金を遥かに下回るような案件も多数発生している)
幸いにして企画系の業務委託市場は、まださほど供給量も多くない。競争がそこまで激しくないので、一定の水準は確保しやすいだろう。
まずは、自分のコストや市場水準を意識した単価で案件を取りながら、徐々に力を高めて、報酬水準を上げていくことを目指すと良い。
自分が取っている価格決定方法のご紹介
最後に自分の価格決定方法をご紹介する。
上にはリターンベースを目指そう、と書いてきたが、自分はコストベースでの基準を使うことが多い。
ただし、基準となるコストはリターンを意識しながら高めている。
基本的な流れとしては
メインの業務委託案件で成果を出して報酬水準を高める
それを基準額として設定する
報酬以外の要素を加味して、案件毎の希望水準を決める
発注先には「他社さんではこの位の金額なので・・・」と交渉する
というステップだ。
もちろん出せるリターンに見合う価値であることは大前提。
逆に言えば、平均的なコストを上回るリターンが作れ無さそうな業務は引き合いが合ってもお断りすることになる。
(その他に面白い要素があり、報酬が低くてもやりたいなら話は別だが)
基準額を引き上げていくことで、全体的に報酬を上げていく事ができる。
報酬に対して大きなリターンを生み出せていると思えば、価格交渉を行う方が良い。
もちろん工数掛け合わせの世界観では稼げる金額に限界があるので、今後はその領域を目指していきたい。