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こんにちは、アルモ形成クリニック 植毛医の内田直宏です。

患者様からカウンセリングの時に「FUTのほうがドナーを効率よく利用できると聞いたのですが本当ですか?」とよく聞かれることがあります。

本日はこのテーマについて掘り下げていこうと思います。

もちろんFUT法の欠点である後頭部の傷跡やFUE法の点状の傷跡などそれぞれの方法のメリット、デメリットはありますが、今回は割愛します。
最も重要な観点である毛包の採取生存率(graft harvest)についてお互い比較して考えることにします。

ひと昔前のFUE法の器具は原始的なもので、植毛機器本体のクオリティも低く、どんなにうまく採取できたとしても機器の特性などで、一定の高い毛包切断率が生じていました。

しかし、ここ最近のFUE機器の開発や発展は凄まじく、FUEでもFUTでも同等の採取生存量であるとの見解があります。
(19 Josephitis D, Shapiro R. FUE vs FUT graft survival: a side-by-side study of 3 patients undergoing a routine 2,000+ graft hair transplantation study. Hair Transpl Forum Int. 2018;28:179-182.)

ここでは、私の持論も交えながら、述べていこうと思います。

FUT法では医師が後頭部を切開して、採取した毛髪を多く含んだ皮膚のかたまり(islandと言います)を株分けするスタッフに渡し、スタッフが処理に慣れている場合はほとんど切断率は無く、グラフトの挫滅はほぼなしです。

一方で、FUE法ではどうしても採取時のグラフトの切断率を考慮する必要が出てきます。
執刀医の採取時の毛球切断率が10%であったと仮定してみましょう。(もちろん、経験豊富なオペレーターでは平均より切断率はこれよりもはるかに少なく、1%以下に抑えることができます)

ここだけ考えると、切断率が少ないという理由で、確かにFUTの方が優れて見えます。

果たして、本当にそうなのでしょうか。

ある男性に植毛手術1000グラフトを行うとします。
FUE法、FUT法(strip harvestとも呼ぶ)それぞれ別の方法で後頭部・側頭部から採取するとします。

FUT法から得られるグラフトあたりの毛髪数は2.1本であることが実証されており、この場合、2100本の毛髪を得ることができます。

FUE法の場合、グラフトあたりの毛髪数は2.3本となるため、2300本の毛髪が採取との対象となり、10%の切断率を考えると2300×0.9=2070本が確実に生存する毛髪数となります。

つまり、FUE法では230本分に相当する毛包が無駄に切断されたことになります。

しかし、興味深いのは、これら全てが生えない訳でなく、バルジが残存していれば、230本の毛包の半分の115本程度は再生する可能性が高いことが分かっています。(Devroye Jら論文①では60%以上が再生する)

この115本に相当する毛包達のうち、半分がドナー領域で、残りの半分が移植領域で成長すると仮定すると、半分は58本に相当する毛包となります。

FUE法による毛包の生存する毛髪数は、切断されていない毛髪2,070本(に相当する毛包)に加えて、切断されたが生存し、伸長する毛髪58本を合計した2128本となり、これはFUTの2,100本(分の毛包)と比較しても多いのです。

この例では、FUE法の方がFUT法よりも移植部において生存し、伸長する毛髪数が多いことになります。

FUE法では、毛髪数の多いFU(follicular unit)や太い直径のいわゆる質の良いFUを執刀医が選択的に選んで採取を行えるため、FUT法よりもより患者様に合わせた手術を行うことができるのです。

患者様が希望する手術範囲に影響を受けますが、これはFUE法の明らかなメリットです。

FUT法では、切開範囲を一度設定したらどうしてもその範囲の中で採取できるグラフトが自動的に決まってしまうということが挙げられます。これがデメリットとなる可能性もあるのです。

以上から、生存率においてFUT法が必ずしも秀でているわけではないことが言えるでしょう。

特に、FUE法は採取の切断率が低ければ低いほど有利と言えます。
様々な工夫と経験を重ね、現在の私の毛包切断率は、1%を切ると自負しております。

切断率の低い無駄のない採取はもちろん重要ですが、患者様に合わせて太い毛や細い毛、毛髪数の多いFU、少ないFUを選択的に採取できることがFUE法のメリットなのです。

植毛術の成否は採取生存率の優位性で決まるわけではありませんが、採取生存率は重要な観点の一つなのです。

FUT法とFUE法のメリット、デメリットについては今後また詳しく詳細をお伝えできればと思っております。

参考:
①Carman T, Devroye J.. How I do it: first place prize poster presentation FUE, regrowth rate of transected hair in the donor area. Hair Transpl Forum Int. 2015;25(6):238-239.
②Maximizing Graft Survival in Follicular Unit Excision: Incision and Extraction Phase. In: Unger W, Shapiro R, ed. Hair Transplantation. Sixth Edition. New York: Thieme; 2022.

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