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夏の手仕事鮒寿司

もうすぐ暑い夏がやってくる。
そんな土用の丑の日の前頃、夏の盛りに滋賀県湖北の各家庭や料理屋、漁師さんなどが「鮒寿司」を漬け始めます。
湖北の夏の手仕事として、昔から受け継がれてきました。


鮒寿司の歴史

古くは奈良時代までにさかのぼり、長屋王木簡などに「鮒鮨(ふなすし)」が記され、平安時代には延喜式に鮒鮨を貢納され、その鮒鮨では現在と同じように米と塩を用いて作られていたことがわかっています。
平安時代の『延喜式』にも、近江国筑摩厨(滋賀県米原市)から
「鮨鮒」が貢納され、「米」と「塩」を用いて作られていることがしるされています。
発酵食品大国といわれている日本。
滋賀県では、古くから「乳酸菌の塊」ともいわれている鮒寿司と生活をしてきました。
滋賀県が長寿の県なのも、乳酸菌が関係をしているといわれているほど!


鮒寿司のフナ

鮒寿司に使用する鮒は琵琶湖固有種「ニゴロブナ」。
3月~5月頃、水の綺麗な琵琶湖沖合でとったものを使用しています。
子をしっかりと持ち、身がしまっていて、泥臭くない。
魚友商店では、じいちゃんが漁に出て鮒をとってくる。
その鮒を塩漬けにし、鮒寿司を漬けていくのです。


鮒寿司の楽しみは「クセ」

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昔から湖北で琵琶湖の恵を取り扱われている魚友商店さん。そんな魚友商店さんの鮒寿司に欠かせないものに一つが「ポテトピーラー」
琵琶湖からとってきた鮒を、芋洗い機にかけて鱗を取り除いていく。
機械特有の回転と、水圧がちょうど「いい!」のだそうだ。
鱗が取れたら、そのあとは手洗いし、エラ、三角骨を取り除き、目打ちを利用して浮袋をとり、エラと三角骨を取った口元から、卵を残した状態で内臓を取り除いていく。
「腸とかが残っていると綺麗にできひん、なかなか難しいんやで」
そのあとは、塩を鮒いっぱいに詰め、桶に並べ重石をのせ3ヶ月ほど漬けていく。

3ヶ月程たったころ、塩揚げした鮒を青光りするぐらいまできれいに洗う
「えらの中をきれいに洗わんとな、油が回ってくさくなってまうんや」
この洗いが、鮒寿司独特のクセと味を決めるポイントになってくる。
好みだが、お酒が好きな人はクセのある鮒寿司が好きな人が多い。
魚友商店では、特に洗いに力を入れ、臭みは少なく、鮒寿司の良さである適度なクセを目指して作っているそうだ。

「養殖のフナはいい意味でも悪い意味でもクセがない。ちょっと面白くない鮒寿司、クセがない鮒寿司が食べたい人は養殖でもいいかもしれんけど…」


湖北のスローフード

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塩切りが済んだ鮒は、塩と米で本漬けしていく。
おにぎりと同じぐらいの塩加減のお米と、塩きりした鮒と、焼酎。
「このお米は地元のもんなんや、村の人が育ててくれてる」
魚友商店さんの周辺には、田んぼが広がっている。
琵琶湖でとった鮒と、地元で育ったお米から作られる味は、
正真正銘「湖北の味」だ。

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リズミカルに鮒にお米を詰め、樽に、魚と魚がくっつかないように並べ、ご飯も敷いていく。
「発酵は空気を嫌うからぎゅっと詰めるんや、樽や鮒の大きさによって並べる数も違う。数式のない計算をせなあかんのや」
「通常は、土用の丑の日までにつけるかな、暑い夏の間に発酵させんとあかんでな」と、おっしゃる。
魚友商店ではいまは一年中漬けているそうだが、通常は夏の暑い気温で発酵させる。6月頃につけた鮒寿司は、通常の夏ならばお正月頃。
約半年で、頭も骨も柔らかくなり、ハレの日のごちそうとして食べることができるそうだ。

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今では、温蔵庫なども利用して一年中つけている鮒寿司。
しかし、自然の寒暖差も必要と考え、途中で出したり入れたりと、工夫を重ねながら漬けているという。
「出来上がるまで、工程も手間も時間もかかる。ほんのちょっとのことで味も違ってくるんや」
お店や家庭、同じ味は一つとないという。
それでも地域の文化を継承していく鮒寿司は、まさしくスローフードとして滋賀県の伝統を牽引している。


鮒寿司は生きている

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重石の下にはこれから夏を超えようとしている鮒寿司が漬かっている。
耳を澄ますと「コポ・・・コポ」と、発酵している鮒寿司の声。
ブルーチーズに例えられることもある鮒寿司。
魚友商店さんの鮒寿司には臭みは全くなく、鮒寿司独特のクセが楽しく残っている。食べれば酸味の中に、旨味と芳醇なコクが。

鮒寿司はお米を利用した発酵食品。
お米を主食とする日本人にとって鮒寿司の乳酸菌は体に適した乳酸菌だといわれています。
滋賀県の人は、風邪をひいたときや、おなかの調子が悪いとき、夏バテ・体がだるいときなどにも鮒寿司を口にします。


いまや貴重な鮒寿司

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鮒の漁獲量は年々減っているそうです。
鮒が減っているせいもあるのですが、漁師さんが少なくなっているのも原因の一つだそうです。
「それでも、毎年理想をもとめて鮒を漬ける。いい味に漬かったときはうれしいなあ」

そんなこともあり、なかなか大きな鮒寿司は珍しい。
写真の上が特大サイズ、下がSサイズの鮒寿司です。


鮒寿司はお店によって本当に風味が違うので、地元の人でも好みの味に出会うのはなかなか難しいです。

わたしも、子供の頃は匂いだけでも強烈で苦手でしたが、大人になってから鮒寿司の滋味深さと奥行きのある味が分かるようになってきました。

是非好みの鮒寿司を探し当ててみてください。

琵琶近江商店では魚友商店さんの鮒寿司をはじめ様々な琵琶湖の味をご用意しています。

琵琶近江商店
滋賀県、琵琶湖の北部(湖北地方)から湖北地方で、農家さんや漁師さんがつくった湖北の「ええもん」を紹介・販売しております。
本店:https://biwa-oumi.com/
楽天市場:https://bit.ly/376gkaM
Yahooショッピング:https://bit.ly/2AEfDci


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