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12/4-18 ストーカーとの700日戦争、再会_s

『ストーカーとの700日戦争』

以前から気になっていた、内澤旬子さんの実録ドキュメント。一気読み。内澤さん、世間一般からみたらかなりの変わり者だと思うが、なんというかへんにひねくれてなくて、いい。

それに独身中年女性としては共感するポイントが多い。件のストーカーとはマッチングサイトで知り合ったようだけど、マッチングサイトと聞いてすぐさま返ってくる人々の微妙な反応については「なぜ人々は『出会い系』つまりセックスだけが目的の交際と、結婚目的の交際の二択しかこの世にないかのように語るのだろうか。私のようなバツイチ中年女がセックス目的でも不倫でもなく、結婚を前提ともしない、それでも誠意ある交際相手を探しちゃいくないんだろうか。仕事があって、ひとりでやっていけるだけの収入がともなって、家計の負担にならないくらい安くて居心地の良い住処を確保していて、出産適齢期も軽くオーバーしていて、わざわざ結婚する理由ってなんだってんだ。教えてくれよ。」って、私の言いたいこと丸ごと書いてくれてるじゃありませんか。

それに唐突に希死念慮があることをサラッと書いていたり、ヨガやったあとに対極にあるハードな護身術を習いに行ったり、離島でヤギを自分以上に大事にしつつも狩猟免許とってるあたりとか、なんか振れ幅と振り切れ方がサイコーすぎる。こういう実行力がある面白い人がいるから普段は世間の壁に萎縮して縮こまって生きてる私たちも多少は、読んでる間は肩身が狭い思いから解放されるのだ。

それとストーカー被害の話。私もじつは似たような恐怖体験があって、いまだに夢に見て憂鬱な気持ちになることがあるが、本当にゆるしがたい体験で話すだけでフラッシュバックするくらい。よく書いてくださったなと思う。あのような状態になっている人のしつこさは筆舌しがたく、異様な執念深さと神がかったやり方で傷口をえぐってくるもので、経験者は思い出すのもいやだろうし、分析されているように被害者は自己評価が低い人が多いから自分のせいでもある、、と思いがちで体験記として残されてるものは少ないはず。だからこんな貴重な記録はなかなかない。警察や弁護士とのやりとり、示談の注意点など、知っておくべきこと満載。パートナー選びにセンスがないと度々言われる、などリスク高めの人はみんな読むべきだと思う。

ラストのほう、最終的にに加害者を治療することしか自分が安心できる道はない、と考えたのも私もそう思ってたんですよー!!と本に向かって叫びたくなった。そうなんだよ。なんか「え、この状態でまだ相手を擁護するの?優しいね」みたいに言われるんだけど、そうじゃなくて、そうする以外に根本的な解決方法ないだろ!!と。なぜわからないんだ!!ってモヤモヤもめっちゃ理解できる。私の場合はそういう歪んだパーソナリティが生まれてしまうのも結局は社会の構造の問題で、それに向き合う必要があるなってとこに行き着いた(ディテールをものすごく省略したらなんかかっこいい感じの響きだ)けど、実際に治療することができたならそれが一番だっただろうなと思った。

とにかく共感ポイントが多かったから他の本も読んでみよう。しかしここ最近の40、50代女性ライターで有名な人ってほぼハズレなしに面白い気がする。単に自分が同世代だからってだけじゃないような。文章のリズムとか笑えるポイントとかがなんかもうダントツで他の読みものより面白い。同じ年代の男性ライターの本はほとんど読む気がしない、、

幼馴染

帰省したら偶然、幼馴染に会った。小さい頃は毎日のように遊んだ間柄。そっくりなまん丸な瞳の愛くるしい娘さんを連れて、すっかり素敵な女性になっていた。淡いパステルカラーのワンピースが似合ってて、少女漫画みたいにキラキラしてた。そのお兄さんもまた帰省してて、見たことない大きな新車に乗って来ていた。みんな立派になったんだなぁ、と圧倒されてしまった。ご両親にも会ってみんなニコニコして幸せそうだった。くたびれたジーパンとボサボサ頭で小声で挨拶した私。思い出話をしながらも核心的なことには触れないその気遣いが分かるだけに重い。帰省すると、良い子でいなきゃいけないという自我が蘇ってしまってどうも駄目なのだ。ひとりでいる普段はぜんぜん、これっぽちも顔を出さない良い子の私が、にょきっと出てくる。ずっと子どもの頃のように優等生の良い子のままでいたらもしかしたら同じように皆から祝福される幸せな存在になれたかもしれないのに、こんなふうにしかなれなかった。なんで真面目に生きることに向き合ってるのにこんなに情け無い気持ちになるんだろう、と。良い子でいるべき、という自我が久々にいまの自分を攻撃にしにかかってきて、つかれ、なんだかしょんぼりしてしまった。でもまあ仕方ない。来てしまった道は戻れないのだ。このまま変人道をゆくしかないなら、行き着くとこまで行くしかないな。

さ、本の続き読もっと。本の世界はいいなあ。変人ばっかりで安心する。人にはそれぞれ居場所がある。居場所があれば、ありさえすれば、それでいいのだ。

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