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栂井理恵さん(文芸エージェント)×東紗友美さん(映画ソムリエ)が語る『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』ファンレターが作家の運命を変える?!トークイベントレポート第2弾!📚

この度、ハリウッドの新星マーガレット・クアリー(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)と名優シガニー・ウィーバー(『アバター』『エイリアン』)がタッグを組んだ『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』が5月6日(金)より、新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開いたします

90年代ニューヨークを舞台に、老舗出版エージェンシーで厳しい上司に振り回されながらも、自分らしく輝くために奮闘する主人公の成長物語。一足早く本作を観た方からは「大都会への憧れ、自分の夢の理想と現実、迷いや葛藤にもう共感の嵐…!」「すべての自分らしく生きたいと願う女性のための映画」と絶賛の声が続々!誰もが共感せずにはいられない、“大人の”自分探しムービーです。

公開に先立ち、4月19日(火)都内にて一般試写会を行いました。本編上映後には、アップルシード・エージェンシーで実際に作家と出版社を繋ぐお仕事をされている栂井理恵さん、そして映画ソムリエの東紗友美さんが登壇し、本作の魅力や文芸エージェントというお仕事について、ファンレターにまつわる驚きのエピソードも交えながらたっぷりと語っていただきました!


夢を叶えるため、常に前向きな主人公に共感の嵐!

東:サリンジャー関連の映画がここ数年定期的に出てきていたと思うのですが、この作品は本当に"ソフトサリンジャー"という感じで、サリンジャーの柔らかな一面に出会える作品でした。なによりマーガレット・クアリー演じる主人公ジョアンナが、サリンジャーを読んだことがないという設定がとても秀逸で、だからこそ、私たちが『ライ麦畑でつかまえて』や『フラニーとズーイ』を読んでいなくても、同じ視線で物語に入っていけるのが特徴的だと思いました。主人公が夢をかなえる映画はいくつもありますが、本作は今自分が置かれた状況で花を咲かせるための具体的な方法がいくつも散りばめられていて、参考になるところも沢山ありましたね。
 
栂井:東さんは自分に重なる部分があると仰っていましたよね。
 
東:そうなんです!私は元々広告代理店で働きながらずっと映画のお仕事をしたいと思っていて、まずは実績や人脈を築いてから独立しようと考えていたので、ジョアンナには本当に共感しました。また、彼女は意見を言う時にはっきりと自分の意思を示し、常に一歩前のめりなんですよね。サリンジャーが約30年ぶりの出版に向けて出版社のブラッドベリと会合する際も「我が社の代表として自分が行きたい!」とちっちゃく挙手しながら上司にアプローチしたり、思い立ったら吉日的な思考に元気をもらいました。
ファッションについても、ジョアンナが初出社した時、マーガレットから「デニムやスウェット、スニーカーは不可よ」と職場での服装について少し厳しい指示を受けるんですが、そのルールは守りつつ、仕事をする上で自分の気持ちが盛り上がる服を着ているのが伺えてすごく好印象でした。

東紗友美さん

出版エージェンシーという仕事はこれから日本でも浸透する?!

東:栂井さんは実際に出版エージェンシーで働かれていますが、本作はいかがでしたか?
 
栂井:本を作る現場のリアリティと夢が沢山詰まった映画だなと思いました。原作の「サリンジャーと過ごした日々」も発売当初に読んでいたのですが、原作で描かれていたエージェントの苦労や成長は映画でもかなり正確に再現されていましたね。児童文学作家のジュディ・ブルームがオフィスに訪れた時、彼女の著作が棚の下の方に置いてあって、あたふたするというようなシーンがありましたが、私たちも契約している作家さんが来社された時に慌てて著作を目立つところに並べるということがあり(笑) 。日常的に共感するシーンの連続でした。
 
東:出版エージェンシーという職業はこれまで映画の中で描かれることが少なかったと思うのですが、どういったお仕事なんでしょうか?

栂井:「芸能事務所の作家版」というイメージが分かりやすいと思うのですが、契約している作家の企画・原稿を、エージェントたちが出版社や他のメディアに売り込んでいくというお仕事です。文芸に関して言うと日本では約5~6社しか存在しないと思います。作家はまずエージェンシーと契約し、エージェントを経由して出版が決まるというのが、欧米では当たり前のシステムなんです。
 
東:欧米では当たり前なんですね!日本ではなぜそのシステムが浸透していないとお考えですか?
 
栂井:日本は創作や人間関係の機微を大事にする文化がありますので、契約や売り込みをビジネスライクに進めるのがあまり定着していない気がします。アップルシード・エージェンシーは創業約20年になるのですが、文芸の分野では、ここ10年くらいでやっと定着してきたのかなという印象です。今は作品の発表の仕方、読者が繋がる方法というのが非常に多様化しているので、編集者に限らずこれから色んな方がエージェントをやっていくのではと予想しています。
 
東:日本でこれからどんどん浸透していくであろうお仕事の映画だと思うと、わくわくしますね!

栂井理恵さん

あなたのファンレターが作家の運命を変える?!
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』は正しい"推し活のススメ映画"だった!

東:この作品はファンレターがキーワードだと思いますが、実際にファンレターの代筆されたことはありますか?
 
栂井:勝手に返事をしたりはしないのですが、頂いたお手紙を作家さんにお届けして、どういった返事を出されますか?と相談したりすることはありますね。
実際に本の現場に携わっていて、読者からのお手紙が作品や作家の運命を変える、ということはよくあるんです。そんなに売れ行きが良くない作品でも、情熱的な手紙が沢山来ると増刷を後押ししたり、シリーズ化が決まったりということが起きるので、皆さんもお気に入りの作家さんがいらしたら、SNSで感想を呟くのも良いのですが、出版社に直接メールや手紙を送って頂けると、ひょっとしたら作品の運命が変わることがあるかもしれません。
 
東:そうなんですね!?本作は正しい"推し活のススメ映画"でもあったんですね!

“好き”を仕事にする上で大切なこと
マーガレットは「最高に理想の上司だ!」

栂井:作品資料の中で監督が「"文学とビジネス"について描いた映画でもある」ということを言っていました。私が1番印象に残ったのが、冒頭、面接を受けに来たジョアンナがマーガレットに「この仕事をするなら生きている作家の本を読まなきゃ」ということを言われるシーンなのですが、本当にそうなんですよね。本作りに関わりたいのであれば、過去の名作だけ読んだり、自分の趣味嗜好に甘んじていてはいけない。作家ってビジネスやお金の話が得意な人ばかりではないので、エージェントはそれを代わりにやるようなお仕事なんです。自分の信念を貫きながら文学とビジネスを繋いで、その間でなんとか成功していくというスリリングな感じが映画にもよく描かれているなと思いました。

東:確かに、映画もそうかもしれないです。往年の名作を観ることも大切だけど、今世界で流行っている作品に触れることも重要で、たとえそれが自分が好きでないジャンルだったとしても、きちんと向き合うことは私も常日頃意識しています。仕事にするという意味では映画も文学も一緒かもしれないですね。
 
栂井:その葛藤の中でジョアンナがもがいて成長していく姿が描かれているので、すごくリアリティがあり、素敵だなと思いました。
 
東:本作は『プラダを着た悪魔』と設定が似ていますが、マーガレットは少し怖いけど、部下の成長を見守ってくれたり、やりたいことは素直に応援してくれる姿勢がすごく良くて「最高に理想の上司だ!」と思いながら観ていました。歳の差女子の友情ものとしてもとても響く映画だと思います。


<STORY>
就職先は“J.D.サリンジャー”の出版エージェンシー!
夢追いかけ飛び込んだニューヨークで開く、人生の1ページ。

90年代、ニューヨーク。作家を夢⾒るジョアンナは、⽼舗出版エージェンシーでJ.D.サリンジャー担当の⼥上司マーガレットの編集アシスタントとして働き始める。⽇々の仕事は、世界中から毎⽇⼤量に届くサリンジャーへの熱烈なファンレターを処理すること。しかし、⼼揺さぶられる⼿紙を読むにつれ、飾り気のない定型⽂を送り返すことに気が進まなくなり、ふとした思いつきで個⼈的に⼿紙を返し始める。そんなある日、ジョアンナが電話を受けた相手はあのサリンジャーで…。

ジョアンナは偉⼤な作家の声を借りていくうちに、自分自身を見つめ直すことになる。友人や恋人との関係、夢にかける情熱、そして自分の将来について――。「何者か」になりたいと願うジョアンナが、自分のストーリーを生きるための、ニューヨークで開く人生の1ページ。都会の片隅で理想と現実の間で揺れ動く女性の姿を、瑞々しくユーモアたっぷりに描いた『レディ・バード』『フランシス・ハ』に続く、《共感度100%》“大人の”自分探しムービーの新たなる傑作が誕生!

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監督・脚本:フィリップ・ファラルドー(『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』) 原作:「サリンジャーと過ごした⽇々」(ジョアンナ・ラコフ 著/井上里 訳/柏書房) 出演:マーガレット・クアリー、シガニー・ウィーバー、ダグラス・ブース、サーナ・カーズレイク、ブライアン・F・オバーン、コルム・フィオールほか 提供:カルチュア・パブリッシャーズ、ビターズ・エンド  配給:ビターズ・エンド
2020年/アイルランド・カナダ合作/101分/ビスタ/原題:My Salinger Year

5月6日(金)新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー


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公式SNS: Twitter / Instagram

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